公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン

文字の大きさ
8 / 65

〈8〉王都の王子たち 3

しおりを挟む
平野の国イルシュカンの王子と山の国ギルフンの王子とメアリが、3人で会談をしていただと!?」

 奇しくもそれは、魔の森を境に国を分け合う2つの国。

 王子として最低限の面識があるリアムは、そこに押された印を見詰めて、それぞれの王子を思い浮かべる。

「ありえん! メガネのクズレイノルド熱血馬鹿ラザロスも、メアリとの面識などないだろう!」

 最低限の国交はあるものの、交流は限定的だ。

 停戦中とは言え、隣国との仲は決して良くない。

 特にイルシュカンとギルフンは、互いに戦争中であり、そこの王子たちとメアリが肩を並べるなど有り得ないはすだ。

 もしメアリの手引きで2人の会談を実現させたのであれば、大々的に喧伝して誇るべき事案だろう。

 少なくとも、パーティーへの出席を隠れ蓑に使うような、陳腐な物ではない。

 そしてなによりも有り得ないのが、書類に記載された開催地。

「王都を離れ、工芸の町ヨルランで話をしただと!? ありえん! こんなものはーー」

「それがあり得るんだよ、兄さん。メアリ嬢は、学園どころか、王都にすらいなかった」

 印はたしかに、隣国の王子たちの物。

 それぞれの母国語で書かれた文章も、同じような内容を示している。

「…………」

 それは相手国の正式書類であり、どうやって取り繕おうにも、被害者であるマリリンの証言よりも信用が置ける。

 マリリンの素晴らしさを学ぼうともしない法務のクズどもは、口を揃えてそう言うのだろう。

 少なくとも、メアリの王都不在は、認めるほかない。

「メアリ嬢は、パーティーへ行く途中で賊に襲われた。逃げる先で隣国の王子たちに助けられ、追っ手をまいたのがヨルランだった」

「…………」

「互いに立場がある3人だからね。メアリ嬢にあらぬ噂が立たないように、会談、と言う形で収めた。そう言う話だよ」

 有り得な、くはない。

 一応の筋は通っている。

 だが、

「ふざけるな!! もしそれが事実だとすれば、マリリンが見たメアリは、なんだったと言うんだ!」

 マリリンが見ているのだから、メアリがヨルランにいるはずがない。

 このような書類が何だと言うんだ!

「まだわからないのかい、兄さん。男爵令嬢が見上げた階段の先。そこには始めから、誰もいなかったんだよ」

「なんだと! 貴様!!」

 マリリンを侮辱する気か!

 そう怒鳴るリアムの前に、ラテス王子の手から新たな紙が落とされる。

「……これは?」

 医師が書き記したカルテのように見えるが?

「宮廷医師に調べさせたよ。マリリン嬢には、怪我も傷もない。教会医師の診断書に、疑問を覚える。そう言っていたよ」

「なんだと!?」

 公欠届け、隣国の正式書類、医師の診断書。

「そんな馬鹿な話が……」

 すべてが、メアリの無罪を主張する物であり、マリリンの立場を悪くさせるもの。

 それぞれの紙を前にして、


「…………く、くくく、くはは!」


 リアムは、楽しげに笑って見せた。

「権力にすがるクズどもが! よほど光の天使であるマリリンが怖いと見える!!」

 このようなクズどもの証言など、信じるに値せん!

 そんな言葉と共に紙を宙に放り投げて、腰の剣を走らせる。

「マリリンが、嘘などつくものか!」

 落ちた紙を両手で引きちぎり、嘆願書の束も破り捨てた。

「なっ!? あなたはどこまで!!」

「1つ教えてやるよ。余と天使の仲を引き裂こうとするヤツには、天罰が下る運命にある」

 ククク、と笑ったリアムが、槍を向ける兵士たちに背を向けて、席へと戻る。

 引き出しの中を探った手が、1枚の紙を掴み、ラテス王子の前へと滑らせた。
しおりを挟む
感想 176

あなたにおすすめの小説

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

処理中です...