公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン

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〈26〉2人の王子さま

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「同じ顔の、男の子……?」

 リリの口から、そんな言葉が漏れていた。

 正面に見えるのは、土の上に顔を出した2人の男の子たち。

 年の頃は、10歳前後だろうか?

 1人は、むすー、っと頬を膨らませていて、
 もう1人は、その膨らんだ頬をつついて、楽しそうに微笑んでいた。

 なんとも対照的な2人だが、その髪型も対照的で。

 むすー、とした子は、重力を感じさせないベリーショート。

 突っついて微笑む子は、耳にかかるくらいのナチュラルソフトだ。

「わっ! 可愛い! 初等部の子!?」

 なんて思いがリリの中に広がるが、ここは最悪の処刑場である魔の森。

 普通の人間なんて、いるはずがない。

 おそらくは、魔物の類だろう。

 危ない危ない!
 可愛い見た目に騙されるところだった!

 でも、人型の魔物??
 聞いたことあるような、ないような……。

 そんな思いを胸に、ギュッと手を握ったリリが、キノコたちの影隠れて、ゴクリと息をのむ。

 不機嫌そうな方の子が穴の中から飛び出して来て、グワッと鼻息を荒くした。

「どうやら俺を怒らせたいようだな!」

 仁王立ちになりながらフンスと息を吐き出して、ますます頬を膨らませる。

 穴を這い出るようにゆっくりと登ってきたもう1人の子が、その子の頬を突っついた。

「兄さん、ボクの話 聞いてる? 冷静にって言ったよね? ねぇ、聞いてる?」

 ツンツン、ツンツン、ツンツン。

 ニコニコしてるけど、目が全然 笑ってない。

 膨らんだ頬を突っついて、ぐりぐりと押し込んでいく。

「ちょっ、バカ、やめろって。突っつくな。わかった、わかったから!」

 やーめーてーー、と言葉にしながら、突っつく手を片手で抑え込む。

 余っていた方の手がゆっくりと持ち上がり、指先がピシリと突き出した。

「おい! お前!」

 1秒、2秒、3秒。

「ひゃぃ!???」

 私!? なんて思いが駆け抜けるも、指先は確実にリリを捉えている。

 溢れ出る殺気は、獣のそれだ。

 え? なんでこんなに怒ってるの!?
 私、何かした!???

 もしかして、歌ったから?

 調子に乗って、メインボーカルしちゃったから!?

「あの、えっと、ごめんなさーー」

「ちょっと可愛いからって、ちょーしに乗るなよな! オレはもうおとこだ!」


「……えっ??」


「男のじゃねぇし、可愛くもねぇ!! オレは漢だからな!! 可愛いのはお前の方だろ!!」

 両手を腰に当てた男の子が、堂々と胸を張る。

 どうやら、突っつく手を止めるのは、あきらめたらしい。

 ドヤ顔を決めるその子の頬に、小さな指先がむにむにと突き刺さっていた。

 その姿も可愛いが、今はそれよりも、

「えっ? 可愛い……?」

 私が!?

 らわわわわわわわわわわわわわ。

 たぶん、聞き間違いじゃない!

 絶対に可愛いって言われた!!

 最近は、弟にも言われなくなったのに!!

「あぁ! そっちの女の方が可愛い上に、きっ、綺麗、だけど……」

 一瞬だけメアリに目を向けた男の子の視線がすーっと逸れて、次第に頬が赤くなる。

 それはどう見ても、恋の始まり。

「お前もまあまあ可愛いぜ!!」

「まあまあ……」

 ピシッ、と何かがひび割れる音がした。

 どうやら、上げてから落とす作戦だったらしい。

 さすがは、魔の森にいた男の子だ。

 人の心を的確にえぐっていく。

「大丈夫ですよ、可愛いお姉さん。だて食う虫も好き好き、って言いますし。元気を出してください」

 いつの間にか、隣に立っていた男の子が、肩を叩いて励ましてくれる。

 多分だけど、全然 励ましてないと思う。

 口元がにまにま笑ってるし……。

「何なんですか、この子たちわぁああああああああああああああああ!!!!」

 その日、一番大きな叫び声が、魔の森に響いていた。
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