公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン

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〈29〉2人の王子さま 4

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 紅茶を一口飲んだメアリが、黒い葉に覆われた天井に、ホッと吐息を吹きかける。

 対面に座って様子を伺っていた2人の王子も、互いに顔を見合わせて、真っ白いカップに口を付けていた。

「おぉ! うまいな!」

「ええ、本当に。魔の森で紅茶が飲めるなんて、思っても見ませんでした」

 紅茶が持つ魔力とでも言うべきか、王子たちの雰囲気が、自然と緩んでいく。

 自分が淹れた紅茶を誉められたリリも、鼻高々だ。

 相手が技術先進国のドワーフだからと、少しだけ心配もしていたが、どうやら杞憂だったらしい。

 出だしはまずまず、と言ったところね。

 そんな思いを胸に、口元を小さくほころばせたメアリが、2人の王子に視線を向ける。

「まずは状況の整理からで良いかしら? シラネ殿下とロマーニ殿下は、どうしてここに?」

「それは……」

「……ちっ」

 初手は、他愛もない会話から。

 そう思っての質問だったのだが、なぜか王子たちが顔を見合わせて押し黙る。

「イヤだ。絶対に言わねぇ!」

 ふん! と鼻息を荒くして、シラネ王子が顔を背けていた。

 メイドらしい澄まし顔で座るリリを流し見て、ロマーニ王子に視線を向ける。

 今後はわからないけど、おそらくは彼の方が、組みやすい。

 そんな思いが伝わったのか、カップから立ち上る湯気と、リリ、それからシラネ王子を見比べたロマーニ王子が、小さく肩をすくめて見せた。

「実はボクたち、道に迷っちゃいまして」

 聞こえて来たのは、そんな言葉。

「おい、馬鹿! 言うんじゃねぇよ!」

 ガバッと振り向いて顔を赤くするシラネ王子の様子を伺う限り、嘘ではないようだ。

 ドワーフは、その一生を壁の中で暮らすと聞くが、迷った、とはいったい?

「でもさ、兄さん。このままだとボクたち、飢え死にだよ?」

「うっ……。そっ、そうだけど……! ちっ! 勝手にしろ!」

「うん、そうする。ありがとう、兄さん」

 どうやら話もまとまったみたい。

 大きく息を吐き出したロマーニ王子の顔に、影が落ちていく。

「火の神は双子を嫌う。故に双子は災いをもたらす。そんなおとぎ話をご存知ですか?」

 諦めと悲しみが混じった微笑みを浮かべたロマーニ王子が、視線をうつむかせながら、そんな言葉を口にした。

 城の書物はすべて頭に入っているけど、さすがにドワーフの言い伝えまでは知らなかった。

 チラリとリリを見ても、首が横に振られるだけ。

「鍛冶師にとって火は命です。火の神に嫌われたくない彼らは、10歳の誕生日を待って、落ちこぼれた方を神に捧げる。僕は10日前に死ぬはずでした」

 火の神に捧げる儀式の最中に、シラネ王子が乱入し、隙をついて連れ出した。

 光の神を信仰する人間の里なら、きっと……。

 そんな思いを持って山を越え、ここで迷ったらしい。

「本当は兄さんだけでも、国に返したかったんですが……」

「ふん! ロマーニを犠牲にして生き残る未来など必要ない! 死ぬときは一緒だと決めている!」

「そういう訳でして」

 ロマーニ王子は困り顔で肩をすくめるものの、どことなく嬉しそうにも見えた。
 
 たぶんだけど、嘘はついてない。

「リリ、良いかしら?」

「メアリ様のお心のままに」

 そんな言葉を口にするけど、リリの目が少しだけ潤んでいる。

 やっぱり、彼女は良い子ね。

 それに、この2人も。

「シラネ殿下、ロマーニ殿下。私たち、ゼロから村を作っているの。あなた達の力を貸して貰えないかしら?」

「ゼロから!?」
「村、ですか……」
 
 互いに顔を見合わせた2人の王子様が、晴れ晴れとした笑みを見せる。

「熱いな!」

「えぇ、面白そうですね」

「え? 村!? あれって村づくりだったんですか!???」

 ずっと澄まし顔だったリリが、その目を大きく見開いていた。

「あら? 言ってなかったかしら?」

「聞いてませんよ!!」

 言ってなかったみたい。
 


 そうして、4人になった帰り道。

「メアリ様。棚を作れる人が欲しい、って言って、ここまで来ましたよね? もしかして、最初からわかっていたんですか??」

「あら? なんのことかしら? そんなこと言ってないわよ?」

「え? あれ??」

 不思議そうに見上げるリリに向けて、ふふふと笑って見せた。
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