辿り着けない世界

和之

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美紗和3

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 そもそもこの町は越前大野藩の藩主土井家から当家は江戸時代から任されてきた由緒ある家系の末裔だ。それをおじいちゃんは意識して振る舞ってきた。そのおじいちゃんが手塩に掛けて育てられて逆らえなかったのが裕介なんだ。しかしそんな古い話を今此処で持ち出されてもピンと来ない。この町の長老から聞かされればウ~んと唸りたくなるが、それを思想の先端を行っている人から聞かされても、眉唾物だと頭の中では取り次がない。
「それは両親も納得しているのか、第一そんなもんを立証する系図なんかはあるのか」
 それは祖父の権力は絶大で、家系に関して当時は鵜呑みをするしかなかった。それに先ずこの家の規模と町から慕われている事実が実証している。祖父にそう言われればみんなはそれ以上はぐうの音も出なかった。
 でもそれは戦後の高度成長期を巧みに乗り切れたからで、けして先祖の恩恵を余り受けてない。それは曾祖父の実力の賜であって、それを祖父がどう解釈しょうと裕介には関係のない話だ。とまで話した処で美紗和さんから、いったい裕介からどんなことを吹き込まれたのと呆れてしまった。終いには今日はともかく明日にでも、家の蔵を探してみれば何か出てくるかも知れない。どうやらあの蔵は祖父が亡くなるまでは、誰も出入りが許されなかった。それが裕介の今回の帰郷で、祖父の主張の根幹が揺れ出すと、祖父が一度は封印した蔵を開けて中を検分する必要が生じた。
「だからこれからどうすべきかコンコンと話を詰めて居るところなのよ」
「どうして裕介だけを祖父は可愛がる、目に掛けるのだろう」
「さあそれは両親に聞いても解らない、末っ子だから可愛がったんじゃないの」
 と言われたが、直接高村に会わないと、それだけではどうも腑に落ちなかった。
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