辿り着けない世界

和之

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裕介を誘い出す3

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 翌朝は朝食時に美紗和さんから車の鍵を預かり、楽しんでらっしゃいと見送られて屋敷を出た。事前に決めず、特に行く当てもなく走った。先ずは夕べの一同揃えての食事について利貞ちゃんが祖母の直ぐ側に居たが、いったい美津枝さんに何を話した。和久井が持ってきた陶磁器の茶碗を売り込み、そこから利貞ちゃんの話になったようだが。
「おじいちゃんが決めた四代目を、此の際は祖母の隣に座らせてハッキリと一同に継承する意志を示しただけだ」
 その同意を取り付けるための腹づもりだ。そう謂う段取りを高村は伯母さんに説明した。もっともな事だとそのまま祖母は承諾した。
「何でここに来て、矢継ぎ早に決めようとするんだ」
「もう祖父が亡くなって八ヶ月以上もほっとくわけには行かないからさ」
「その辺の話を俺は知りたくてドライブに誘った。どうだろう、九頭竜川を見ながらあの鮎釣りの時はいつも帰りに立ち寄る喫茶店で話さないか」
 これには高村も思う処があるのか直ぐに同意した。話が決まれば俄然と運転にも力が入った。
「どうしてお前が、今になってそんなに気にするんだ」
「決まってるだろう。昨日説明してくれた藩主土井利忠の銅像傍の東屋に掲げてある功績と当家の関わりだ」
「あれは典子に説明したが、お前には関係がないだろう」
「そうは行かなくなった。典子さんから相談されるまではなあ」
「典子が何を相談したんだ」
「ちょっと込み入ってるから喫茶店でゆっくり話そう」
 見えて来た九頭竜川に沿って車を走らすと、高村は直ぐに川を眺め出した。やがて川が大きく蛇行する淵に立つ、喫茶店の駐車場で駐めると、川がよく見える一番端のテーブル席に座った。
 坂部にも顔馴染みになったマスターが愛想良く迎えてくれた。
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