自殺したがりの青年は異世界に転生させられた

白猫

文字の大きさ
3 / 5
第一章 死にたがりの青年

災難

しおりを挟む
転生させられてから4年。俺はもう4歳になった。
「時間が経つのって早いなぁ」
あれ以来、神様とは会っていない。今頃、何してるのだろうか。
「父さん、もし、『安く売ってくれ 』って強く言われたら、父さんはどうするの?」
ちなみに俺は商人になるための勉強中……をさせられている。
「そうだな、俺は服装を見て決めるな」
「服装?」
父さんは俺を商人にさせたいらしい。理由は世界を知って欲しいからだって。別に俺は世界を知りたいとは思ってない。でも、将来、為になるかもしれないから今は仕方なく勉強しているのだ。
「服を着ると、その人の個性が出るからな。もし、そう言ってくる人が小綺麗で汚れが無いとしたら安く売らないでそのままの額で。
派手な服装で見て直ぐに貴族だと分かる人は高く売るな。
でも、逆にどちらでもなくボロボロでやせ細ってお金がない人はタダで売る。俺はそうするな」
「なるほど。……父さんは優しいですね」
「商人は客に信用されないと駄目だからね。信用されると商売は良いし」
一応父さんの仕事を勉強するのは結構楽しい。実践してるからね。それにすぐ側で見ていると本当に父さんは凄い人だと分かる。父さんの観察力は凄すぎる。まるで前世で俺が好きだったシャーロック・ホームズみたいだ。
「あ、お客さん、今日は北原で災難でしたねぇ」
「え!?どういうこと?」
「いやー。綺麗な服だったけど、仕事の帰り道で運悪くモンスターと遭遇しちゃったでしょ。そんで必死に逃げてたらたまたま聖騎士の人に会って助けられた。服装が汚れてるのは、逃げる時、転んだ挙句、木の枝に服が引っかかってちょっと切れてしまった。」
「あ!?」
「まぁ、逃げるのに夢中だったから気づかなかったんでしょうけど」
(くぅ~!!カッコイー!やっぱりシャーロック・ホームズみたいだよ父さん!!)
仕事中によくこういうふうに推理する。俺はそれを見るのが大好きだ。それにこういうふう父さんに推理された人は必ず…
「兄ちゃん凄いなぁ!当たりだよ!はい!銅貨6枚だ。あとさっきの凄いから銀貨1枚あげたる!!」
と、お客さんはお父さんの推理に感心しておまけで銀貨か金貨をくれる。あ、お金があまりない人は銅貨1枚プラスでくれる。父さんはこういうやり方で商売をしているんだ。すげえよなぁ。
「凄い!やっぱり父さんってカッケー!」
「なんか照れるなぁ」
顔もカッコイーのに性格もカッコイーとかどんだけだよ!
色々と勉強をするのはまだまだ沢山あるなぁ。






おかしい……何かがおかしい……。父さんは周りを見ている。それに空はさっきまで晴れていたのに急に暗くなって一雨降りそうだ。
「今日はあまりお客さん来なかったね。どうしたんだろう」
そうだ。ここ最近ではあまり客が来ない。いつもだったら客の人は父さんの商品を奪い合ってるのに…何か変だ。俺には分かる。嫌な予感がする。
「………………っ!…………トト、急いで帰るぞ」
「え?父さん?」
(あれ?なんか、父さんの様子が、いつもと違う?)
父さんは急いで片付けて馬を走らせた。俺は横で父さんの顔を見てみると父さんは険しい顔をしていて怖かった。一体どうしたんだろうか。
「……いいかトト。絶対に後ろを向くな。いいな」
「う、うん」
俺は父さんの言う通り前だけを見た。俺はなにがなんだかわからない。でも、俺は後ろを向いたらいけない気がした。そこには、見てはいけない物がいるような気がするから。
「……大丈夫だ。怖くない。父さんがついてる」
「……うん……」
俺は久々に怖いと思った。この怖さは死ぬという怖さだと思う。俺が前世で死にたくても死ねない……あの時のようだ。
ゾワッ!!

ピリピリッ
「「っ!!」」
「と、父さんっ」
これはやばい。逃げないと……。死ぬ。俺は別に死んだって平気だ。でも……父さんが……。なんだろう。父さんと母さんに愛されて育ってしまったせいだろうか。俺は何故か死ねないんだ。前世と同じく死のうとしても…今の父さんと母さんのことを思い出してしまう。前世ではそんなこと無かったのに……。
「……大丈夫だ。父さんが守るから」
なんで、そんなに俺の事を思うのだろう。別に生き残るために捨てればいいのに……。

前世の俺の家族は皆冷たかった。
愛情なんて貰えなかった。
俺が必要なくなったら、直ぐに俺を捨てて逃げていた。
誰一人助けてくれず見向きもしてくれなかった。
俺はなんの意味もない。生きている意味が無い。
俺はいつからか、なんも感じられなくなった。感情が無くなっていたんだから当然だ。悲しみも苦しみも喜びも楽しみも……何も……何も感じなかった。

なのに……なんでこの人は……こんなにも俺を見捨てずに助けようとしてるんだろう。「大丈夫だ」と言ってくれるその言葉は優しくて…。
(俺には…………その愛情が熱すぎて……溶けそうだよ)
今、俺はどんな顔をしてるだろうか……きっと……泣いてるのだろう。


「トト!?あ、安心しろ!あと少しで父さんの友達の聖騎士さんの所に着くから!」
「……うん!」
今は泣いてる場合ではない!そうだ、俺は今、すごく強いと思うモンスターに追われてるだ!まずは逃げ切ることを考えないと!
「あ!父さん!人が!」
「ほぉ。やっと追いついたよ!……シント~!!助けてぇ!!」
「え?……あれ?アッシュさん!?ってモンスターに追われてる~!?……しかもデカッ!」
俺と父さんと馬車は聖騎士のシント?という人を通りすぎたところで止まった。
俺と父さんは後ろを向く。
「……?モンスター居ないじゃんよ父さん」
「いや、倒されたんだよ。シントに」
「え?」
父さんは俺と手を繋いで馬車を降りてシントさんがいた所まで歩いていく。
そこに着くと……
「もう、だから一緒にいますって言ったのに」
モンスターはバラバラになっていた。
え、凄っ。この人強っ。ていうか、父さんと親しい人?
「いやー、ごめんごめん。今回は息子にいいところを見せたくてさ」
「全く、本当にアッシュさんは危機感が無いんですから。あ、それと…」
シントさんは俺に向き直って近づいてくる。そして同じ目線まで腰を下ろした。
「……初めまして、俺はシント・バーコニー。宜しくな」
優しい笑顔で俺に自己紹介をした。なんと礼儀正しいのだろう。俺はその後慌てて自分のことを話した。
「ぼ、僕は、父さんの息子のトトと言います。こ、こちらこそよろしくお願いします」
「…………アッシュさん、いい息子さんですね。アッシュさんとは全然違います。」
「おい、それはどういう意味で言ってんのかな?シント君?」
「……黙秘します」
なんか知らないけど、褒められたらしい。でも、この人はカッコイーと思った。だって、デカいモンスターを一瞬で殺したんだから。強くてカッコイイ。憧れてくるよ。まぁ、記憶なしでこの人と会ったら絶対に憧れるだろうな。今じゃ、ただかっこよくて、自分もああなりたいなんて思えないからな。
「まぁ、とりあえず、帰るか。この肉を綺麗に片付けてからだけど。」
「そうですね。手伝います。」
「あ、僕も」
実を言うと、僕という言い方に慣れていない。本当は俺って言いたいけど、まだ4歳児の俺がそんなことを言ったら、絶対に生意気だと思われると思うから。



まだ、人生は長い。俺は商人の村人として、のんびりゆっくりまったりと平和的に過ごそう。
そう言えば、空を見ると、さっきのくらい空ではなく、いつも通りの青くて綺麗な空に戻っている。
(はぁ。空を見ると落ち着くなぁ)
「こらトト。サボらない」
「うっ。は~い。」
決めた。
俺はなにがあっても、モブとして目立たない人生を送ろう。でも、家族を守れるぐらい、強くもなろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...