勘違い(仮タイトル)

mare

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「かえりたい……」

 朝から何度この言葉を呟いたことか。

 今日ほど、会社を休みたいと思ったことはない。笹山とは、部署が違うおかげで朝から鉢合わせする事はなかったが。同じ会社なら合わずに済むという保証はない。

 事務職というお陰であまり他部署へ行くことは少ない。
 
 朝から加奈の視線が昨日の事を話せとせっついていた。

 笹山に結局は、協力してもらえる事になったとだけ、加奈には報告しておけば良いだろう。きっかけを作ってくれたとはいえ細かい話はしたくない。

 が、どこまで気付かれずに話ができるかは分からない。勘のいい彼女なら全部話さなくても気づかれてしまいそうだ。


 お昼休憩の時間になると加奈はいつもの天使の笑顔を撒き散らしながら席へと近づいてきた。

 花に群がる虫があちこちに現れては、行き先が私の方だと知ると離れていく。その様子があまりにも滑稽で苦笑いを漏らしてしまう。

 ほんと、私加奈ちゃんの虫除けみたいだわ


「先輩!お昼今日は外で食べましょうね」


 天使の背後に黒いオーラが見えた気がして、冷や汗をかく。

 これは、トコトン殺られる気がする。


「……分かったから。お手柔らかにお願いします」

 
 ロビーに降り、加奈と並び歩く。

 ふと前を見ると笹山が歩きながら誰かと話をしていた。ピシッとスーツを着こなし、ココ最近のイメージのチャラけた笹山とはまた違っていた。不覚にもドキッとしてしまう。

 隣の男は多分、取り引き相手なのだろう顔は見えないがスラッとしていて仕事がデキる男の雰囲気を醸し出している。

 ふと、笹山と視線が合ったような気がして、知らん顔をするのも気が引ける。取引先の人もいる事だし会釈だけして出口へと向かう。

 なんとなく背中に視線を感じながらも、その場を後にする。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 笹山との話を聞く加奈は、気持ち悪い笑みを浮かべていた。しかし、可愛い容姿だと得なようで、昼食をとっている周りの男たちはその笑顔にソワソワしていた。

 
「なんか、加奈ちゃんと笹山くんって似てる気がする」


「えー?やめてくださいよ。あんな裏表激しくないですからね。わたしは!」
 

 えっ、裏表激しいの?
 いや、そうじゃなくて2人とも私の扱いに慣れてるのよね。って言いたかっただけなんだけど。

 まぁ、いっか。

「とりあえず、コレで収まってくれたらしばらくは大丈夫だとは思うんだけど。」

 ……まだ、どーなるかは週末次第。ほんと、胃が痛くなる。

「アイツは、先輩の言い様に使って大丈夫ですからね。今、必死ですから」

 最後の言葉が引っかかっるが、掘り返すと面倒そうなのでやめておこう。

 
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