悠々自適な高校生活を送ろうと思ったのに美少女がそれを許してくれないんだが

逸真芙蘭

文字の大きさ
32 / 88
四方山日記

本題に戻るけれども

しおりを挟む
 昨日《さくじつ》のちょっとしたハプニングから一夜明け、いつもの放課後。

 昨日の帰り際《ぎわ》、綿貫は今週末予定がないか俺に尋ねてきた。
 無論答えはノーだ。
 綿貫はそれを聞き、
「家で会食があるんですけれど、深山さんも是非来てください」
 会食とはまたお洒落な用語が飛び出すじゃないか。
「なんで俺が」
「兄の復帰祝いですよ。叔父からも是非深山さんも、と」
 ああ、あの家の門を潜《くぐ》るのか。それに加えて、綿貫家の住人と顔を会わせるとは。
 気乗りしない。でも……
「分かったよ。行く」
「はい。ありがとうございます。普段着でいいですからね」
 とは言っても、さすがにTシャツ短パンで行く気にはならないな。

 というわけで、日曜に予定ができた。うむ、なんだか世俗にいる高校生らしいな。
 
 閑話休題。

 一人部室へと向かう。
 途中道を塞《ふさ》ぐ連中に遭遇した。男女り交《ま》ぜ楽しそうにバカ騒ぎしている。いつから通り道はお前らのものになったんだ? 俺の行く手を遮るものは誰であろうと許さない。
 その中の一人が後ろを観ずにさがって俺にぶつかった。
「あっ、すみません」
 それを言うのはむしろ向こうだ。 
「気にすんなよ」 
 それを言うのはむしろ俺だ。
 直ぐにそいつらは、ぎゃははは、とバカ騒ぎを続ける。
 俺は毒づく。爆《は》ぜろリア充。……シナプスは弾《はじ》けなくて良い。それは割《わり》と困る。どうでもいいけど、Vanishment this World! をちゃんとセンテンスにすると、I vanish from this world. になる。可哀想な子になる。神隠《かみかく》し、あるいはアブダクションである。もしかしたら、UFOでミューティレーションされているかもしれない。ほんとどうでもいい。

 部室には珍しく雄清が来ていた。
「執行部の仕事はいいのか?」
「やあ、太郎。まあ今日はいいのさ。ところで昨日は綿貫さんに会えた?」
「まあ」
「仲直りできた?」
「一応」
 デート? 的なものをしてきたのだ。それで十分だろう。

「ならいいや。それはそれとして、昨日の記事見たかい?」
 昨日の記事? さして面白くない政治の記事が一面だったが。
「あ?面白いニュースあったか?」
「違うよ。新聞部のやつだよ」
 ああ、そっちか。
「お前に渡しただけで読んでいない」
「そうか、じゃあ見てごらんよ」
 雄清が差し出したバックナンバーに目を通す。二十年前の十月号だ。学校祭の直後に発行されたものだろう。
 「体育祭の悲劇、原因はどこに?」それが記事の見出しだった。手書きでこういうことをかかれると、あまり悲壮感が出ないんだな。
 それはそれとして、雄清の言っていたように、確かに二十年前の学校祭でなにか事件があったらしい。
 記事の本文を読む。

 九月二六日、校庭で生徒会製作の巨大マスコットが倒壊する事故が起きた。一人の女子生徒が下半身に傷を負った。指導部は学校祭を即日中止させ、プログラムは未消化のままである。生徒会に非はあったのかどうか、風紀委員含め学校側は前期生徒会役員に聞き取り調査をしている。
 なお、本件に関して、出所の怪しい噂が流布しているが、真偽のほどは定かではない。風紀委員は噂の大元となった、「秋風」の規制は行わないという。

 随分な大事があったらしい。生徒会のマスコットで怪我人が出た、か。それが役員の未熟さによるものならば、執行部を作ろうと考えたのも頷ける。

「本当に学校祭で事件起こしていたんだな。生徒会は」
「ふふん、どうだい」
 雄清は誇らしげに胸を張った。
「どうだと言われても。事件が起こったのは確からしいとして、それでは記事にならなくないか? 資料が足りんぞ」
「太郎、よく読んでよ」
 何か俺は見落としているのだろうか。もう一度、じっくりと読み返すが、何かをこぼしているとは思われない。 
 俺が眉をひそめていると、雄清はやれやれと言いたげな顔で、記事を指差した。  
 雄清が指差すところを見ると、『噂の大元となった「秋風」』とある。
「この秋風って言うのを読んでみればもっと詳しいこともわかるんじゃない?」
 秋風というのはどこかの部が発行しているものなのだろうか。俺は知らない。それは置いといて、
「真偽が定かではない、と書いてあるじゃないか」
「そうとしても、確かめないわけにはいかないだろう。見てから判断すればいい」
 いくら部誌とはいえ、信憑性《しんぴょうせい》の乏しい文献を頼るわけにはいかないだろうに。……
 ま、いっか。誰が困るというわけでもない。
「じゃあ、頑張って探すんだな」
「冗談、太郎も探すんだよ」
「馬鹿こくな。誰がやるか」
「綿貫さんに言いつけちゃうぞ」
 ぬおっ。また、綿貫に叱られる。それはいや……ではないな。あの、むくれた顔で、しかも蔑んだ目で俺のことを見てくるんだ。
 やべっ、涎《よだれ》出てきた。
「……卑怯者が」
 俺は平静を装い、そういった。
「なんとでもいいたまえ」
「俺は動かんぞ!」
 にやり。

 待つこと、小一時間。綿貫は来ない。雄清はいい加減しびれを切らしている。
「おい太郎。頼むから動いてくれよ。僕だって暇じゃないんだ」
 大概《たいがい》、雄清の追求に耐えるのも、しんどくなってきた。
 仕方ない。綿貫に叱って貰うのはまた今度にしよう。
「分かったよ。行けばいいんだろ」
 で、どこに?
「……雄清よ。秋風ってそもそも何なんだよ」
「……」
 ……。
 よし、帰るか。時間を無駄にした。
「じゃあな。俺は帰る」
 いうが早く、荷物を肩にかけ、部室から出てゆこうとする。
「ちょちょちょちょちょ待って」
 雄清は俺の方を掴み、引き留めた。
「あんだよ。俺は帰ってすることがあるんだ」
 そうだな、……ぼーっとする、とか。
「何するんだい?」
 雄清はどうせすることなんてないんだろうと言いたげな風に尋ねた。……いや、そうなんだけれども。
 俺は言い繕う。
「……妹の勉強を見る?」
「なぜ疑問形なのさ」
 雄清は眉をひそめてそういった。
「それに、妹さん、全寮制の学校行っているんだろ。僕はしばらく見ていないよ」
 ……
 ちっ。
 雄清の言うように俺の妹、深山夏帆かほは、大阪にある私立の中高一貫校に通っている。あの放蕩《ほうとう》娘はこの夏も、彼女の学校の近くにある、祖父母の家に行っただけで、愛知には帰ってきていなかった。俺の親は彼女に会いに大阪まで行ったのだが、俺は補習やらなんやらで忙しかったので、春から妹の顔を見ていない。
 少し前に冗談交じりに、佐藤に、俺のせいで愛知に帰って来ないんだろうか、と言ったところ、割と真剣な顔で、そうでしょう、と言われた。
 本気で不安になった。
 いや、佐藤は間違っているのだ。
 俺ほどお兄ちゃんらしい立派なお兄ちゃんがいるだろうか? いやいない。

 それはそれとして。

「よく知らないものを探したところで、見つかるわけがないだろう。言うなれば、写真も人相書《にんそうがき》もなしに人探しをするようなものだ」
「だったら、それがどういうものなのか調べるところから始めればいいじゃないか」
「よくわかっているじゃないか。さあ、どうぞ」
「だから、手伝ってくれよ。それを」
「お前さあ、執行委員なんだろう。それくらい把握しておけよ」
「無茶言わないでくれよ。文化祭に出品されているものならまだしも、各部活の活動内容なんて全部把握できるわけないよ」 
 そんなとき、部室の扉がガラリと開いた。佐藤か綿貫でも来たのだろうかと思ったら、違った。
 いや、綿貫ではあった。だが、
「萌菜先輩……」
 そこに立っていたのは綿貫萌菜執行委員長だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...