上高地で出会った金髪美少女は北アイルランド人だった

逸真芙蘭

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人生が小説のように上手く行くと思ったら大間違いだ

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 北アイルランドから日本に帰国してから、一週間ほど、何もせずに過ごした。
 すぐにでも、鈴木の家に行って、キティの家の住所を尋ねることもできたのだが、なぜが気が進まなかったのだ。
 いや、俺は恐れていたんだ。俺のお粗末な推理は当たっていて、俺の訪れた屋敷は、確かにキティの家で、屋敷の庭にあった墓石はキティのものであると示されることが。
 そう考えると、吐き気を感じて、トイレに駆け込んだ。朝食べたものを戻してしまった。四月から新生活をする人間としては、最悪の精神状況であった。
 そんな宙ぶらりんな状態でいつまでもいるわけにもいかないので、重い腰を持ち上げて、早く楽になりたいという気持ちと、当たっていたらどうしようという不安とに押し潰されそうになりながら、足取り重く、鈴木が住んでいるマンションへと向かった。

 ドアホンを押す。
 春休みの午前中、もしかしたら、まだ寝起きかもしれないと思ったが、鈴木は一応の服装に着替えていた。
「来たのね」
 俺はてっきり、来訪を心底驚かれるか、迷惑がられるものだと思っていたので、鈴木のその反応に少々たまげた。
 家の中に入ると、なんとそこにはジェームズの姿があった。
「ジェームズ!日本に戻ってきていたのか。久しぶり。キティも一緒か?」
 俺はキティがいないものかときょろきょろとあたりを見渡すが、姿は見えなかった。
 それにしても、水臭い奴だ。鈴木は。キティたちが日本に戻って来ているのならば、俺にも教えてくれればよかったのに。あっ、驚かせようとしたのか。
「キティはどこだ?」
「美山」
「キティは?」
「美山!」
 鈴木は強く、俺の名を呼んだ。
「……なんだよ」
 俺はびくりとして小さく言った。
「座りなさい」
 俺は渋々、鈴木の言うことに従う。
「これを読んで」
 鈴木は奥の部屋に行って何かを取ってきてそういった。
 鈴木が差し出したのは一通の手紙であった。流麗な日本語で書かれてある。消印は去年の十一月である。
 俺は言われたとおりに、その手紙を読み始めた。

『拝啓 鈴木瑠奈様

前略
 
 あなたからちょうだいしたお手紙に対し、今まで、返事をしなかったことを最初にお詫びします。
 私はキティの父親です。日本語で手紙を書くのは随分と久しぶりなので、失礼な間違いがございましても、何卒ご了承ください。
 あなたの手紙に長い間、返事を出せないでいたのは、わたくし共の方でも、心の整理がつくのに随分と時間がかかったためです。あれから、一年が経過し、ようやく現実にも向き合えるような頃になったので、たまっていたあなたとあなたのご学友である綿貫さやかさんの手紙に返事を書くことにしました。
 結論から申し上げます。
 私の最愛の娘、Katherine Murphyは一九九六年十一月一日に亡くなりました。日本から帰国したちょうどその日です。
 キティはIRAの爆破テロに巻き込まれたのです。キティの体は腰から下をにふきとばされました。
 この一年は私たちにとってつらい一年でした。 
 残された私たちにできることは、このような、愚かな争いを、北アイルランドで起こっているこの醜い争いを終わらせることです。私はすべての闘争を終わらせる為にこの身命を賭すつもりでいます。
 キティは日本で最高の友人たちに出会い、素晴らしい日々を送れたと、ジェームズから聞いております。キティに素敵な時間を過ごさせてくれてどうもありがとう。

 草々

 Jonathan Murphy』

 キティが、死んだ?死んだ?腰から下を木っ端みじんに吹き飛ばされて?
「なあ、悪い冗談だよな」鈴木もジェームズも何も言わない。
「おいなんか言えよ。冗談だって言ってくれよ」
「こんな胸糞悪い冗談が出来るわけないでしょ。全部真実よ」 
 鈴木は大きな声で悲痛そうに言った。
 真実? キティは一年以上前に死んでいた?
「なんでだよ。なんで。ジェームズ!」
 ジェームズはこちらを見た。
「お前の仕事は、キティの護衛じゃないのか。ボディガードが聞いてあきれる」
 ジェームのその目の奥に、鋭い眼光を見た気がしたが、彼は何も言わなかった。俺は無性に腹が立って、ジェームズにつかみかかった。冷静に考えれば、ジェームズが俺を払いのけることは造作もないことであったのだが、彼はただ静かに座っているだけだった。
「美山、ジェームズの左腕を見てみなさい」
 鈴木が言った。
 俺はちらりとジェームズの左手を見た。いや、見ようとした。
 ジェームズの左の上肢は、ひじから先が欠けていた。
「これでも彼が、何もせずにぼうっと見ていただけだと思う?安全な場所で、キティが殺されるのを指をくわえてみていただけだと思う?」
 俺はへなへなと座り込んだ。
 なんでキティが、死んだんだ? なんでキティが殺されなきゃならなかったんだ? なんでIRAに?
 キティはカトリック系のアイルランド人の血を引く人間だ。どうしてそのキティがカトリック系の私兵団であるIRAに殺されなければならないのか?
 俺は事の不合理さに、悲しみとそして強い怒りを感じた。
 暴力を憎んだキティがどうしてこんな目に?

 怒りの矛先は、この事実を長い間、俺に隠していた、鈴木に向かった。
「お前はどうして、俺に何も言わなかったんだ?この手紙を受け取ってどうしてすぐに俺に伝えなかったんだ。北アイルランドに、会えるわけのない人間に会いに行った俺を見て、どう思っていた?笑っていたのか?」
「そんなわけないでしょ!あんたに言えたと思う?キティのことを思ってもだえていたあんたに。あんたの思い人はとっくのとうに死んでいるのよって言えたと思う?
 私がっ、私がどれだけ苦しんだと思っているの?あんたは何も知らない、雄君も何も知らない。雄君に話せばあんたにも伝わるだろうから、言わなかった。
 さやかがどんな気持ちでいたと思う? 自分の好きな男が、自分ではない別な子を好きになって、でもその子はとっくに死んでいて、それでもさやかはあんたのことを思って、今日の今日までその事実を隠してきた。あんたに言えば、受験どころじゃなくなるだろうって。さやかはすごく辛そうだった。キティが死んだからじゃない。あんたも死んだような顔をしていたから。さやかはねあんたが苦しんでいることに苦しんでいたのよ。あんたがずっと、キティのことばかり考えていることに苦しんでいたの。
 それなのに、あんたのことを思って、時期が来るまで隠しておくことを提案したの。
 そんなさやかだったから。私はあの子と、キティの話なんてできなかった。そうすれば美山が残酷なことをさやかにしてるって思い出させるから。
 私が、たった一人で、キティの死をいたんでいたのをあんたは何も知らない。誰にも相談することのできなかった私の苦しみがあんたに分かるの?」
 そういうと、鈴木は目に大粒の涙を浮かべ、キッと俺のことを見てから、バタンと戸を閉め、奥の部屋に入ってしまった。
「俺は、……」
「美山智」ジェームズが俺に呼びかける。
「お嬢様の形見だ。受け取ってくれ」
 ジェームズが差し出した、ハンカチの中には、俺がキティに送ったかんざしが、かんざしが入っていた。
 
 その後、どういう道を通って、家にたどり着いたか覚えていない。

 キティの死を知らされてから、四か月が経過した。
 一応、大学には通ってはいるが、なにをするにも身が入らず、極めて、無為に毎日を過ごしていた。
 気持ちをどんなに引きずっても時間は残酷に流れてゆき、世界の流れも刻々と変わってゆく。九八年の四月十日にはベルファスト合意がなされ、北アイルランド紛争は終結への第一歩を踏み出そうとしている。依然として、テロ組織はその活動を完全に停止してはいないが、これから、状況が悪化していくということはないのだろう。俺が年を取り、くたばるころには、北アイルランド紛争も過去の話になっているのかもしれない。
 それでも、紛争が終わったのだとしても、キティを殺した、この残酷な世界を俺は好きになれなかった。キティを助けなかった、キリスト教の神を俺は憎んでさえいた。

 神という存在ほど人間を殺しているものがあろうか。
 神の名のもとといって、魔女裁判にかけられた多くの犠牲者たち、預言者が違うというだけで、争い続けてきた、狂信的な信者たち、十字軍という名を冠して、堂々と人殺しを行ってきた兵士たち、宗派が違うというだけで、殺し合いを続ける、キリスト教徒たち、全ての元凶は「神」にある。
 神なんていないほうが、世界は平和なんだ。
 俺はそう考えるようになった。

 大学の前期の授業が終わり、長い夏休みがやってきた。だが今の俺にとって、何もない日々と授業のあって精神の死んだような状態で過ごす日々とで違いはほとんどなかった。
 ただ、時が流れていくのを観察しているだけだった。
 そんな俺を見かねてか、雄大が俺を山へと連れ出した。

 あれほど好きだった登山でさえも、もはや俺に何の感情も起こさせなかった。ただ足を上に持ち上げるだけの単調な作業。俺は何を面白がって、こんなことをやっていたのだろうか。
 すべてが無駄に思えた。
 多くの人間が生まれ死んでいく。この世界で起こっているのはそれの繰り返しだ。地球にこれを観察する目があったのならば、この世界というものはなんとつまらないものなのだろうか、という感想を抱いたに違いない。どうせ俺も数十年と時が移ろえば死ぬ。百年たつ頃には、俺のことを覚えている人間さえいなくなってゆく。
 俺達人間はなんのために生まれてきたんだ?結局最後は死んでしまうのに、なんで苦しい思いをしてまで生きていかなければならないんだ?
 キティのいないこの世界なんて、無意味だ。

 俺は山のみねに立っていた。
 目の前に広がっているのは、夕日を背後に隠している、穂高連峰ほたかれんぽうとその右方に見えるやりたけ
 そこは、キティを連れて行こうと思っていた、常念岳じょうねんだけの山頂であった。
 やがて、あたりは闇に包まれ、空に星が見えるようになった。
 池田山で見た星の数とは比べ物にならないくらいの数の星が見えた。夏の大三角を横切り、天の川が流れている。
 雄大が静かに俺のそばに立っている。
 俺はもう四か月ほど、人と口をきいていないことに気が付いた。声を出そうとすると、何かが引っかかる感じがして、うまく発声できなかった。それでも必死になって、弱っていた喉の筋肉に力を込めた。
「……雄大よ。俺は何かを間違えたろうか?」
 しゃがれた声が出る。雄大は久しぶりに俺の声を聴いて目を見開いた。それからぽつりと返す。
「何も間違えちゃないさ」

「だが、俺は思うんだ。キティと会わなければよかったんじゃないかって。思えば、不条理な死を迎える人間は世界にごまんといる。キティより残酷な運命を背負わされた人間もたくさんいるだろう。俺はそんな人間がたくさんいることは分かっているつもりだ。だが彼らが死のうと、たとえ同じ国の人間が何十人と死のうと、不憫ふびんには思うかもしれないが、悲しみのどん底にたたきつけられるようなことにはならない。それなのに、俺は異国のたった一人の少女が死んだだけで、この世のすべてが無意味に思えてしまうんだ。この世に生きてゆく意味が分からなくなってしまうんだ。
 そう考えると、俺たちが巡り合ったのは不幸でしかなかったと思える。 
 俺たちは出会うべきじゃなかったんだろうか?」

「そんなことはない。キティのお父さんだって感謝しているはずだ。さとしがキティと出会ったことを。それにキティは絶対にそんなことは思わない」

「……俺はたまらなく悲しい。どうしようもないほど。
 だけどそれなのに、たまらなく悲しいはずなのに、涙が出ないんだ。キティが死んだと知った時から一滴も」
 そうなのだ。俺は涙を流していなかった。キティの墓を見た時は、それを現実と受け止めずに。鈴木から手紙を渡されたときは悲しみよりも先に怒りを感じて。
 そうなのだ。俺の心は壊れかけていた。ずっしりと重たい悲しみを受け入れることを拒否して、心の扉を固く閉じていた。
 だが俺は、それが逃げでしかないことにも気が付いていた。綿貫から逃げた時のように。
 俺は三年前から全く成長していなかった。
 自分という人間が嫌になる。もういない人間にいつまでもこだわり、綿貫を傷つけ続けている自分に反吐へどが出る。
「智……」
 雄大は言葉に詰まった。だが、すぐにこういった。
「埋めてあげようキティちゃんをここに。彼女、槍の穂先をみたがってたんだろう。ここは絶好のポイントだ」
「お前は何を」
 雄大を見ると俺の手を指差していた。そこには、キティのかんざしが握りしめてあった。俺は今の今まで、キティのかんざしを強く握りしめていたことに全く気が付かなかった。
 穴を掘った。必死で穴を掘った。こんなに深く埋めたら、星空も槍ヶ岳も見えなくなるんじゃないかとちらりと心配したが、構わずに掘った。
 膝が隠れるほど掘ったところで、かんざしを入れ、土を戻した。
 土を戻し終え、最後に叩き固めたところで俺は再び空を見上げた。
 雨が降っているのだと思った。視界が水でにじんでいる。
 しかし、それは雨などではなかった。
 キティの死を、この不条理な世界で非業の死を遂げた、キャサリン・マーフィーをいたんで流した、俺の初めての涙だった。

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