久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

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第2章 別に…

第10話 箱の様子が…

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「…はっ!?」

 や、やばい! 寝込んでしまっていた! 

 夜の8時半。正座の体勢で目を覚ます。

 うっ!! あー…この痛み久々だわー…。

 痛みで悲鳴を上げている身体の筋肉を伸ばしながら、立ち上がる。

 世理はその人当たりの良さ、どんな時に頼んでも来てくれると言う理由でモデルとしてよく駆り出されていた。

 報酬はちゃんと出るし、人脈は作れるしで悪くないけど…こんなに疲れるのはな~…大学にいる時はもっと上手くデッサンのモデルを出来てたと思うけど…にぶったか?

 首を伸ばす様に顔を晒し、目を開ける。

 すると、そこには…

「な、なんでしょうか…」
「別に…」

 階段で膝を抱えて、此方を見ている葵がいた。

 何故そこにいる…? そして何故此方をジッと見ている?

 葵の今の姿はまるで像。置かれた像が、俺が動くたびに一緒に視線だけを動かす。

「あ、そうだ。忘れてた。これを受け取ってくれ!」

 俺は葵にもう一度箱を差し出す。

 何故かその箱は先程持った箱よりも軽い気がした。だが、折角那由さんにアドバイスを貰ったのだ。上手くいく筈だ。

『女の子が好きな物と言えばぬいぐるみでしょ。見てても可愛いし、抱いても癒される』
『え? ぬいぐるみでいいんですか?』
『この那由様を信じなさい!』

 と言われて買ったが…少し子供っぽ過ぎはしないか?

 世理は少し首を傾げる。

 世理は実は大事な事を忘れていた。那由に対し、『妹のパンツを掴んでいるところを見られて怒られた』と言った。しかしこれだけでは、やった事は分かっても義妹の年齢が分からないのだ。

 那由は勘違いをした。妹は小学生の様な子供だと。

 その事を世理は幸か不幸か、まだ知らない。

「そのだな…これで許してくれとは言わない。俺がお前に好きそうかもしれない物を買ってきている訳だし、気に入らなければ貰わなくて構わない。…その、なんだ、箱の中身を見るぐらいはしてくれないか?」

 俺は一抹の希望を胸に頭を下げる。

「……」

 何も返事は返ってこない。しかし、足音が近づいている事が分かった。そして足音が近くで止まる。

「……調子に乗らないでください」
「は?」

 いきなり罵倒され、葵はリビングの方へと行ってしまった。

 何もそこまで言わなくても良くないか? 俺だって店で店員に照れながらも「可愛いぬいぐるみとかないですか?」って聞いたんだぞ。少しでも見てくれても…あれ?

 そこで世理はある事に気づく。

 店員には店で箱の飾り付けもお願いした。綺麗にラッピングしてもらって此処まで持ってきた筈だ。

 しかし、所々に付いてた飾り付けがズレている。物作りをしてきたお陰だろうか、世理の観察眼は他の人よりも倍は鋭く、その事に気づいた。

「何で…」

 箱を床に置き、ゆっくりと箱を開ける。

「え! 何で箱の中身が!?」

 ガタガタガタッ!!

 箱の中身は空っぽだった。

 リビングの方から何か物音がしたが、今はそれどころじゃない。

 まさかラッピングの時に入れるのを忘れてしまったのか? いや、そんな事あるか? 此処まで持ってくる時は確かに中に物が入ってる感じがあった。葵が帰ってきた時も同様だ。

 何故ないのか…まさか俺が寝てた時に誰かが盗った? いや、それこそまさかだろ。

 玄関の扉は鍵が閉まっていた。家の中に居たのは、葵と、その友達の2人だけ。

 …とりあえずは店に電話しとくか。

 俺は箱を持って立ち上がり、リビングへと向かう。

 入ると、葵はキッチンで料理の準備をしていた。俺が作って少しでも距離を縮めようと思ったが、今回は仕方ないな。

 俺は箱をリビングの隅に置くと、スマホを取り出す。

 タン タン タン…

「…あ、もしもし? あの先程そちらで買い物をした者なんですけど、どうやら箱の中身に商品が入ってなかったみた

 ガッ!!

「え?」

 突然スマホが俺の手から消える。

「う! うるさいので電話は切ってください!!」

 何故か俺の横には葵がエプロン姿で立っており、眉尻を吊り上げ、此方を息切れしながら見ていた。

 タン

 電話が葵の手によって切られる。

「えー…っと」

 さっきまでキッチンに居たのに何で此処に? とか、そんなうるさかったかな? とか色々思う所はあったが、この言葉が自然と出た。

「どうしたの?」

 そう言うと、葵の顔がドンドンとトマトの様に赤く染まる。

 そして口を開けては閉じ、此方を見ては晒しを繰り返す。

 な、何だ? 本当にどうしたんだ?

 俺が心配して手を伸ばすと、それを葵に叩かれる。

「…触らないで貰っていいですか。それよりも、ご飯を食べるなら貴方も手伝って下さい」

 プイッと顔を背け、キッチンへと歩いていく葵。

 ……何を考えているのか分からない。世界中の兄もこんなに困っているのか?

 困惑しながら世理は葵の後を追った。



「今日は何を作るんだ?」
「テキトーにパスタで。早く出来ますし」

 葵の前には乱雑に色々な材料が置かれている。

「…何を作るんだ?」
「だからパスタですよ。何回も言わせないで下さい」

 そう言って俺は口をつぐむ。そして葵は鍋に水を入れていく。

 そのパスタの中でも何を作りたかったのか聞きたかったのだが…まぁ良いか。

 俺はとりあえず、材料の中にあったベーコンを細かく切って行った。その途中にチラチラと葵の方を盗み見る。

 あぁ…なるほど。

 世理は葵の手元にある材料を見て、メニューを理解し、手際良く下準備を整えていく。

「…手際良いですね」
「ん? …あぁ、一応1人暮らししてたしな」
「ロンドンでしたっけ?」
「あぁ、そうそう」

 2人の会話が繋がる。

 何だ、結構話してくれるじゃん。

 俺と葵は少し、自己紹介の様な話を交えながら料理を続けた。



「出来たな」
「いただきます」

 テーブルの上には普通のカルボナーラが出来ていた。最初は材料が乱雑に置かれていたが、葵が本当にテキトーに冷蔵庫から出した物らしかった。詳しくは聞いてないが…。

「そう言えば今日来てた女の子、名前なんて言うんだ?」
「環です。…なんですか。もしかして狙ってるんですか?」

 ギロリという効果音が付くかのように此方を睨む。

「いや! 違うって! でも、その…俺が葵にって買って来た箱の中身が無くなってたんだ。だから、もし、何か知っている様なら話を聞いといてくれないか?」
「もしかして…私の友達が盗ったって言いたいんですか…?」
「いや、その、一応だよ。だって他に家に居た人は
「しょうがないですね! 一応! 一応聞いておきます!!」

 葵はそう言うと、急いで料理を口に頬張った。

 その頬をパンパンにさせながら此方を見ている姿に俺は笑ってしまった。
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