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第4章 …ありがとう
第31話 入部(過去)
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これは今でも鮮明に覚えている事だ。
「はい、じゃあ自己紹介して行こうか。まずはそこのお前」
「は、はい! 神原世理と言います!! これからよろしくお願いします!!」
これは俺が美術部に入った時…つまり高校1年生の時の話だ。
美術室には10数名の先輩達、それに俺と横並びに並んでいる同級生が3人ほど居た。
その時の美術部は地元でも所謂強豪で、幾つもの賞を取っている先輩が何人も在籍していた為、緊張して噛みながら自己紹介したのは良い思い出だ。
そして自己紹介が終わると、椿先生が大きく手を叩き、椿先生がいきなり言ったテーマを元に絵を描き始める。
流石強豪。こんな急に始まるものなのかと、最初はびっくりした。
しかしーー
「君、絵上手いね?」
「いつから本格的に絵描いてたの?」
「どこ中出身?」
何処か雰囲気は緩く、親しみやすい先輩ばかりで、新入生の俺らにとっては凄く居心地が良かった。しかし、そんな中にも1人黙々と絵を描き続けている人が居た。
最初は凄い髪がボサボサな人、話しかけないでオーラが強い人としか思わなかった。
あの人から話しかけて来なければ一生離さないだろうな。俺はそう思った。
そして数週間が経ち、俺も入学して高校生活に少し慣れて来た頃。
「んー…那由。もっと肩の力を抜いて絵を描く事は出来ないのか?」
「…出来ないです」
俺が忘れ物をして美術室へと戻ってくると、隣の物置で椿先生と那由さんとの会話が聞こえて来た。
「お前の絵を見ると全体的にまだ固いんだよなぁ…自由じゃないって言うか」
これってアドバイスだよな? てか初めて高橋さんの声聞いたぞ。
その時の俺はそんな事をのうのうと考えて、忘れ物を手に取っていたと思う。
「もっと部員と触れ合ってみたらどうだ? 新しい発見があるかもしれないぞ?」
「…はい。ありがとうございます。失礼します」
ガラガラガラ
え? あ…
「……何してるの?」
「ご、ごめんなさい。忘れ物して…決して盗み聞きしてた訳じゃないんです」
美術室と隣の物置とが繋がる扉が開かれ、俺はその時、那由さんと初めての会話を交わした。
いつも1人。皆んなの輪に入らず、1人で黙々と絵を描いている人。少し暗くて、髪をボサボサにしている人。
それが高橋那由さん。いずれは「空白の渇望」という大ヒット漫画を描く人、そしていずれ俺の恋人となり、別れる事になる人との出会いだった。
「はい、じゃあ自己紹介して行こうか。まずはそこのお前」
「は、はい! 神原世理と言います!! これからよろしくお願いします!!」
これは俺が美術部に入った時…つまり高校1年生の時の話だ。
美術室には10数名の先輩達、それに俺と横並びに並んでいる同級生が3人ほど居た。
その時の美術部は地元でも所謂強豪で、幾つもの賞を取っている先輩が何人も在籍していた為、緊張して噛みながら自己紹介したのは良い思い出だ。
そして自己紹介が終わると、椿先生が大きく手を叩き、椿先生がいきなり言ったテーマを元に絵を描き始める。
流石強豪。こんな急に始まるものなのかと、最初はびっくりした。
しかしーー
「君、絵上手いね?」
「いつから本格的に絵描いてたの?」
「どこ中出身?」
何処か雰囲気は緩く、親しみやすい先輩ばかりで、新入生の俺らにとっては凄く居心地が良かった。しかし、そんな中にも1人黙々と絵を描き続けている人が居た。
最初は凄い髪がボサボサな人、話しかけないでオーラが強い人としか思わなかった。
あの人から話しかけて来なければ一生離さないだろうな。俺はそう思った。
そして数週間が経ち、俺も入学して高校生活に少し慣れて来た頃。
「んー…那由。もっと肩の力を抜いて絵を描く事は出来ないのか?」
「…出来ないです」
俺が忘れ物をして美術室へと戻ってくると、隣の物置で椿先生と那由さんとの会話が聞こえて来た。
「お前の絵を見ると全体的にまだ固いんだよなぁ…自由じゃないって言うか」
これってアドバイスだよな? てか初めて高橋さんの声聞いたぞ。
その時の俺はそんな事をのうのうと考えて、忘れ物を手に取っていたと思う。
「もっと部員と触れ合ってみたらどうだ? 新しい発見があるかもしれないぞ?」
「…はい。ありがとうございます。失礼します」
ガラガラガラ
え? あ…
「……何してるの?」
「ご、ごめんなさい。忘れ物して…決して盗み聞きしてた訳じゃないんです」
美術室と隣の物置とが繋がる扉が開かれ、俺はその時、那由さんと初めての会話を交わした。
いつも1人。皆んなの輪に入らず、1人で黙々と絵を描いている人。少し暗くて、髪をボサボサにしている人。
それが高橋那由さん。いずれは「空白の渇望」という大ヒット漫画を描く人、そしていずれ俺の恋人となり、別れる事になる人との出会いだった。
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