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第5章 なんでもない!
第40話 文化祭当日
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俺が学校に弁当を届けて数日。
遂に葵の高校で文化祭が行われる日になった。
「忘れ物はないか?」
「うん、ない」
「気をつけて行って来いよ。そして何より…楽しんで来い」
「…うん」
葵に出会って1ヶ月程。こんな会話を出来る程に俺達は仲を深めていた。
素気ないが、返事が返って来る。それだけでも嬉しい事だ。
俺は葵を見送り、家事を終わらせると、家から出てある所へ向かった。
「おー、盛り上がってるな」
そこは商店街。いつも通り世界の色々な旗、今日に限っては全部の店がセールを知らせる旗を出していた。
今日は此処に高校の神輿が通る。その為か、商店街でもセールの嵐が巻き起こるのである。
「懐かしいな…毎年この時期になればこれだよな」
「今日はウチの唐揚げが半額!!」
「ウチの服も30%オフだよ!!」
「出来たての唐揚げを食べながら神輿を見ないかい!」
「今日は全部の服が30%オフ! 買うなら今だよ!!」
何処か温かい雰囲気だが、内心は殺伐としているであろう店の人達。それを笑顔で見るお客さん達。
明るく、楽しい雰囲気でどうもインスピレーションが掻き立てられる。
「少し…少しだけ描いてみるか…」
そう思った俺は持ち運び用の少しのワックスで髪をかき上げると、視界を確保する。そして近くの壁へと寄りかかると持っていた手帳に絵を描き始める。
温かいながらも何処か棘のある… 人間の内面を表現する様な…そんな絵を…
「え、ちょっと、凄いカッコよくない?」
「私声掛けてこよーかな?」
「いや、やめときなよ。何か凄い集中してるし」
うん…ま、こんなもんか。
大雑把にだが描き終えた俺は、パタンッと手帳を閉じる。
するとーー。
「……何やってるんですか」
「ん? お、葵か。何でこんな所に?」
目の前には、ジト目で此方を見ている葵の姿があった。
「もう、神輿の時間ですから」
え、もうそんな時間か?
急いで周囲を見渡すと、大勢の人だかり。俺達との間には何故か空間が空いていた。
「……俺の居る場所が神輿が出て来る場所なのか?」
「…はぁ、ふんっ!!」
「うわっ! 何すんだ!?」
「…こっちに来て下さい」
葵は俺の髪をぐしゃぐしゃにすると、俺の腕を引き、人混みを掻き分けて行く。
何処に向かうんだ? と言うか俺は何故髪をぐしゃぐしゃにされたんだ?
幾つか疑問が浮かんだが、連れて行かれた場所を見て大方の予想はついた。
「っ!」
「あ…確か高波君、だよね?」
そこには葵のクラスメイトと思われる人達が学校の伝統の法被を着て、そこに集まっていた。
「あの…この前はすみませんでした! 失礼な事を言って…」
「いや、良いんだ。気にしないで」
俺は手を振って高波君に応える。
出会った瞬間、何だか謝りたそうな雰囲気を醸し出していたもんな。
葵にもしかして何か言われていたのかもしれないが、謝ってきたのは良い事である。
「葵を君にやろう!」
「え! 本当ですか!?」
「何を言ってるんですか?」
あ、ごめんなさい。可愛い冗談です。
「お、お兄さんは文化祭には参加しないんですか?」
そこで高波君が良いのか悪いのか、話を変える。
ま、マズイ…一応は俺、高校生設定だったからな…バレたら高校生のコスプレしてた人になる。
「お…俺は良いんだ。椿先生から許可を貰ったから……」
「椿先生って…美術の田中先生の事ですか? 何か頼まれ事でもされてるんですか?」
「まぁ、うん」
椿先生…これぐらいは許して下さい。これも全部貴方の所為なんです。
俺は高波君からの質問を上手く? 受け流しながら、不意に後方を見た。
そこにはーー。
ほだらかな笑みを浮かべて此方を見ている、葵の姿があった。
葵と会って、初めて見た表情だった。
それを見て、俺も自然と笑みを深めた。
良かった。
しかし…まさかあんな事になるなんて、その時の俺は微塵も思ってもいなかったんだ。
遂に葵の高校で文化祭が行われる日になった。
「忘れ物はないか?」
「うん、ない」
「気をつけて行って来いよ。そして何より…楽しんで来い」
「…うん」
葵に出会って1ヶ月程。こんな会話を出来る程に俺達は仲を深めていた。
素気ないが、返事が返って来る。それだけでも嬉しい事だ。
俺は葵を見送り、家事を終わらせると、家から出てある所へ向かった。
「おー、盛り上がってるな」
そこは商店街。いつも通り世界の色々な旗、今日に限っては全部の店がセールを知らせる旗を出していた。
今日は此処に高校の神輿が通る。その為か、商店街でもセールの嵐が巻き起こるのである。
「懐かしいな…毎年この時期になればこれだよな」
「今日はウチの唐揚げが半額!!」
「ウチの服も30%オフだよ!!」
「出来たての唐揚げを食べながら神輿を見ないかい!」
「今日は全部の服が30%オフ! 買うなら今だよ!!」
何処か温かい雰囲気だが、内心は殺伐としているであろう店の人達。それを笑顔で見るお客さん達。
明るく、楽しい雰囲気でどうもインスピレーションが掻き立てられる。
「少し…少しだけ描いてみるか…」
そう思った俺は持ち運び用の少しのワックスで髪をかき上げると、視界を確保する。そして近くの壁へと寄りかかると持っていた手帳に絵を描き始める。
温かいながらも何処か棘のある… 人間の内面を表現する様な…そんな絵を…
「え、ちょっと、凄いカッコよくない?」
「私声掛けてこよーかな?」
「いや、やめときなよ。何か凄い集中してるし」
うん…ま、こんなもんか。
大雑把にだが描き終えた俺は、パタンッと手帳を閉じる。
するとーー。
「……何やってるんですか」
「ん? お、葵か。何でこんな所に?」
目の前には、ジト目で此方を見ている葵の姿があった。
「もう、神輿の時間ですから」
え、もうそんな時間か?
急いで周囲を見渡すと、大勢の人だかり。俺達との間には何故か空間が空いていた。
「……俺の居る場所が神輿が出て来る場所なのか?」
「…はぁ、ふんっ!!」
「うわっ! 何すんだ!?」
「…こっちに来て下さい」
葵は俺の髪をぐしゃぐしゃにすると、俺の腕を引き、人混みを掻き分けて行く。
何処に向かうんだ? と言うか俺は何故髪をぐしゃぐしゃにされたんだ?
幾つか疑問が浮かんだが、連れて行かれた場所を見て大方の予想はついた。
「っ!」
「あ…確か高波君、だよね?」
そこには葵のクラスメイトと思われる人達が学校の伝統の法被を着て、そこに集まっていた。
「あの…この前はすみませんでした! 失礼な事を言って…」
「いや、良いんだ。気にしないで」
俺は手を振って高波君に応える。
出会った瞬間、何だか謝りたそうな雰囲気を醸し出していたもんな。
葵にもしかして何か言われていたのかもしれないが、謝ってきたのは良い事である。
「葵を君にやろう!」
「え! 本当ですか!?」
「何を言ってるんですか?」
あ、ごめんなさい。可愛い冗談です。
「お、お兄さんは文化祭には参加しないんですか?」
そこで高波君が良いのか悪いのか、話を変える。
ま、マズイ…一応は俺、高校生設定だったからな…バレたら高校生のコスプレしてた人になる。
「お…俺は良いんだ。椿先生から許可を貰ったから……」
「椿先生って…美術の田中先生の事ですか? 何か頼まれ事でもされてるんですか?」
「まぁ、うん」
椿先生…これぐらいは許して下さい。これも全部貴方の所為なんです。
俺は高波君からの質問を上手く? 受け流しながら、不意に後方を見た。
そこにはーー。
ほだらかな笑みを浮かべて此方を見ている、葵の姿があった。
葵と会って、初めて見た表情だった。
それを見て、俺も自然と笑みを深めた。
良かった。
しかし…まさかあんな事になるなんて、その時の俺は微塵も思ってもいなかったんだ。
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