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第2章 夜会がある様です。
第15話 第2王妃との邂逅
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「ね、アレ見て…」
「う、羨ましい…何であの子がカーシュ殿下と…」
「それより殿下の持ってるの…」
「ハウスタイガーの亜種、では無さそうだけど…灰色の毛色に赤い目って少し気味悪いね」
城の廊下、カーシュはマアトを抱きながらメイドの後ろをついて行っていた。
(やっぱり少し目立つなー…でもこうやって人だかりがある所を通るって事は怪しい所に連れて行かれる訳では無さそう)
カーシュ達は廊下の真ん中を堂々と歩いていた。メイドは凛とした佇まいで、話しかけても「はい」「いいえ」としか言わず、此方を見向きもせずにただ真っ直ぐと目的地へと進んでいた。
「アウッ!」
「「「ひいっ!?」」」
「アウ…」
皆んなに見られてテンションが上がったのか、マアトが手を上げて鳴くと、周囲にいた者達は悲鳴を上げる。
「マアト…ごめんね。少し大人しくしてて」
「アウ…」
「着きました」
小声で話していると、メイドが立ち止まり、凛とした声で告げる。
トントントン
「入れ」
扉の中から少し威圧感のある声が聞こえ、メイドはゆっくりと扉を開けた。
「遅いわよ」
そこには金髪で鋭い目つきをした女性が待っていた。端正な顔立ち、フアラよりは少し年老いて見えるが、その老いを感じさせないパワーを感じる。
(カーシュの記憶でもこの人とは会った事はない…誰なんだろう?)
そう思いながらも中へと入ると、メイドは女性の前で跪く。
「申し訳ありません。第2王妃"アイリス・アルザ・ファテル"様」
見るからに高級そうな赤いドレス、指には幾つも煌めく指輪が存在している。
(この人が第2王妃!?)
カーシュはすぐ様にメイドと同様、床に膝をつけた。
「お初にお目に掛かります。カーシュ・アルザ・ファテルと申します」
「へぇ…まぁ、座りなさい」
アイリスに促され、カーシュは対面のソファへと移動する。
「それが貴方の魔物? 随分気味が悪い色をしてるわね」
「はは、そうですか? 私は特徴的でカッコいいと思いますけど」
「……絶望的なセンスね」
アイリスは鼻で笑うと「まぁ良いわ、そろそろ本題に入りましょう」と言って1つの紙を差し出した。
「これにサインをしなさい」
「…これは?」
そこには誓約書の様な物が置かれていた。
「大丈夫、貴方が不利益になる物は何も書いてないわ。むしろ得になるかも」
アイリスはどこか怪しげな笑みを浮かべ、持っていた扇子で口元を隠す。
それにカーシュは眉を顰めた。
(いやいやいや、どう考えても不利益になるものでしょ)
不利益にならないものなら教えてくれても良い筈だ。それなのに教えないとなると、後ろめたい事があるという事。
(だけど…第2王妃の提案を断るというのは…)
貴族社会というのは、色々と面倒だというのはCritical Rose(乙女ゲー)で散々と言う程に思い知っている。
(あの時の事を踏まえるとサインするしかないんだよね~…まぁ、同じ王族だし? 流石に奴隷にするとかではないと思うけど…)
カーシュはゆっくりと誓約書を手に取る。
そこには、読み続けていた絵本だけでは読み解けない文字が羅列していた。
「うっ…」
「…もしかして文字も書けないのかしら? 良かったら私が代筆してあげても良くてよ?」
そう言うとアイリスは、素早く誓約書をカーシュの手から奪い去ると、サラサラっとカーシュの名前を誓約書に書いた。
「これで良いわね。さっ、もう帰って良いわよ」
アイリスは虫を払う様に手を払った。
(いや…それだと誓約書の意味ないじゃん!? しかも何でマアトも連れて来たの!?)
色々な疑問が浮かんだカーシュであったが、それを言い出す事も出来ずにカーシュは部屋を後にするのだった。
* * *
「何だ、思ってた通り。以前通りのカーシュのままね」
「はい、その様でございます」
カーシュが部屋から出て行った後、アイリスはふんぞり返ってメイドと話していた。
「あの様子じゃ、ビクター様と私の子供が産まれても落ちこぼれのまま」
アイリスは鼻で笑うと、天井を見上げてメイドにも聞こえないような声で呟く。
「あんな子が『聖王』だなんて…馬鹿馬鹿しい。しかもあんな汚らわしい魔物まで飼って…良かったわ、アレを飲ませて」
「う、羨ましい…何であの子がカーシュ殿下と…」
「それより殿下の持ってるの…」
「ハウスタイガーの亜種、では無さそうだけど…灰色の毛色に赤い目って少し気味悪いね」
城の廊下、カーシュはマアトを抱きながらメイドの後ろをついて行っていた。
(やっぱり少し目立つなー…でもこうやって人だかりがある所を通るって事は怪しい所に連れて行かれる訳では無さそう)
カーシュ達は廊下の真ん中を堂々と歩いていた。メイドは凛とした佇まいで、話しかけても「はい」「いいえ」としか言わず、此方を見向きもせずにただ真っ直ぐと目的地へと進んでいた。
「アウッ!」
「「「ひいっ!?」」」
「アウ…」
皆んなに見られてテンションが上がったのか、マアトが手を上げて鳴くと、周囲にいた者達は悲鳴を上げる。
「マアト…ごめんね。少し大人しくしてて」
「アウ…」
「着きました」
小声で話していると、メイドが立ち止まり、凛とした声で告げる。
トントントン
「入れ」
扉の中から少し威圧感のある声が聞こえ、メイドはゆっくりと扉を開けた。
「遅いわよ」
そこには金髪で鋭い目つきをした女性が待っていた。端正な顔立ち、フアラよりは少し年老いて見えるが、その老いを感じさせないパワーを感じる。
(カーシュの記憶でもこの人とは会った事はない…誰なんだろう?)
そう思いながらも中へと入ると、メイドは女性の前で跪く。
「申し訳ありません。第2王妃"アイリス・アルザ・ファテル"様」
見るからに高級そうな赤いドレス、指には幾つも煌めく指輪が存在している。
(この人が第2王妃!?)
カーシュはすぐ様にメイドと同様、床に膝をつけた。
「お初にお目に掛かります。カーシュ・アルザ・ファテルと申します」
「へぇ…まぁ、座りなさい」
アイリスに促され、カーシュは対面のソファへと移動する。
「それが貴方の魔物? 随分気味が悪い色をしてるわね」
「はは、そうですか? 私は特徴的でカッコいいと思いますけど」
「……絶望的なセンスね」
アイリスは鼻で笑うと「まぁ良いわ、そろそろ本題に入りましょう」と言って1つの紙を差し出した。
「これにサインをしなさい」
「…これは?」
そこには誓約書の様な物が置かれていた。
「大丈夫、貴方が不利益になる物は何も書いてないわ。むしろ得になるかも」
アイリスはどこか怪しげな笑みを浮かべ、持っていた扇子で口元を隠す。
それにカーシュは眉を顰めた。
(いやいやいや、どう考えても不利益になるものでしょ)
不利益にならないものなら教えてくれても良い筈だ。それなのに教えないとなると、後ろめたい事があるという事。
(だけど…第2王妃の提案を断るというのは…)
貴族社会というのは、色々と面倒だというのはCritical Rose(乙女ゲー)で散々と言う程に思い知っている。
(あの時の事を踏まえるとサインするしかないんだよね~…まぁ、同じ王族だし? 流石に奴隷にするとかではないと思うけど…)
カーシュはゆっくりと誓約書を手に取る。
そこには、読み続けていた絵本だけでは読み解けない文字が羅列していた。
「うっ…」
「…もしかして文字も書けないのかしら? 良かったら私が代筆してあげても良くてよ?」
そう言うとアイリスは、素早く誓約書をカーシュの手から奪い去ると、サラサラっとカーシュの名前を誓約書に書いた。
「これで良いわね。さっ、もう帰って良いわよ」
アイリスは虫を払う様に手を払った。
(いや…それだと誓約書の意味ないじゃん!? しかも何でマアトも連れて来たの!?)
色々な疑問が浮かんだカーシュであったが、それを言い出す事も出来ずにカーシュは部屋を後にするのだった。
* * *
「何だ、思ってた通り。以前通りのカーシュのままね」
「はい、その様でございます」
カーシュが部屋から出て行った後、アイリスはふんぞり返ってメイドと話していた。
「あの様子じゃ、ビクター様と私の子供が産まれても落ちこぼれのまま」
アイリスは鼻で笑うと、天井を見上げてメイドにも聞こえないような声で呟く。
「あんな子が『聖王』だなんて…馬鹿馬鹿しい。しかもあんな汚らわしい魔物まで飼って…良かったわ、アレを飲ませて」
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