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第1章
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しおりを挟む「おう。……てか、もう入ってんじゃん」
僕が返事をしてベッドから上半身を起こす頃には、日和はすでに部屋に入り「ふふっ」と笑いながら扉を閉めていた。
その可愛い笑顔に、僕もつられて笑う。
肩まで伸びた、少しフワッとした黒髪。まつ毛も長いし、二重だし、目もパッチリしている。
高校の頃は可愛いって感じだったけど、今年から社会人になって大人っぽさが加わり、妹は綺麗になった。
「ね?今度の日曜なんだけどさ、久々に友達とコスプレするんだぁ。
……また、写真撮ってくれる?」
自分の顔の前で手を合わせながら、日和は少し首を傾げて僕にお願いする。
いつも変わらず接してくれる、数少ない存在。可愛い大切な妹。
返事なんて、最初から決まってる。
「いいよ」
「えへへ、やったぁ!」
返事をすると日和は嬉しそう微笑みながら近づいて来て、僕の長い前髪にそっと触れた。
「日向の写真ほんっと綺麗だもんね!
……でもさ、日向はどうして自分は写らないの?前髪も長いし、けっこうカッコ良い顔してると思うのにもったいな~い」
「一緒にコスプレしよ~よ」って、もう今まで何度誘われたか分からない。
でも、この答えももう決まってる。
「僕はいいの。撮る方が好きなんだよ。
……でも、確かに前髪は少し伸びすぎかもな。日曜日までには切っておくよ。良い写真撮る為に邪魔にならないようにね」
僕がそう言うと、日和は「そっか」と笑った。
「じゃあ、また日曜日の詳しい予定決まったら言うね!おやすみ~」
「ああ、おやすみ」
ヒラヒラと手を振りながら去って行く妹を見送り、バタンッと部屋の扉が閉まるのを見て、僕は再びベッドに横になった。
楽しみな予定が、また一つ増えた。
そう思うと、顔は自然と綻んでいた。
こんな風に楽しいとか、幸せだとか感じる事は、僕の人生であと何回あるのだろうか?
……そんな事を思いながら、スマホからTwitterを開く。
この、毎日の当たり前の行動が、僕のこれからを変えてくれる事になるなんて……誰が予想出来ただろう?
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