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第5章 (1)バロンの観察日記
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しおりを挟むそれだけで、充分。
今までの事なんて、どうでも良くなってしまうくらい嬉しかった。
彼女が攫われた事を早く伝えてくれたから……。私は、今こうして無事に帰って来られたんだ。
「……また、会えますよね?
今度はいっぱい、お話したいです!」
「……。貴女には、敵いませんわ」
「え?」
「いえ、なんでも!」
ようやく微笑ってくれたモニカ様が、私に向かって手を差し出した。
その手を笑顔で握り返すと、彼女はグイッと引き寄せて私の耳元で囁く。
「……その時は、ぜひ聞かせて下さいませ。
アカリ様とバロンの進展を、ねっ?」
「!っ……えッ?」
一瞬何を言われたのか分からず茫然とする私に、パチッとウインクするモニカ様。
その直後に意味を理解し、ボッと真っ赤になる私を見て彼女はフフッと笑うと、サッと馬車に乗り込んだ。
嵐のような数日間の終わりを告げる、馬車の音ーー。
走り去る馬車を、私は暫く見つめていた。
……
…………。
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