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第8章 (2)たくさんのありがとう
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しおりを挟む「へぇ、美味しそうですね。
頂いてもよろしいですか?」
「どうぞ!私、初めて作ったんですの!」
耳に届く、バロンとモニカの会話。
それは挨拶以外で、久々に聞く彼の声だった。
バロンが、近くにいる。
五感の全てが聴覚に集まったみたいに、私は自然と彼の声を聴いていた。
「どう?バロン?」
「とっても美味しいです。
初めて作ったとは思えませんね」
モニカの作ったお菓子を食べて、嬉しそうに褒めるバロンの声。
っ……胸が痛い。
聞きたくない。
彼が別の女性の事を褒める言葉なんて聞きたくなくて、私はすぐにこの場から逃げ出したくなった。
ーーでも。
「……こちらも頂いても、よろしいですか?」
震える脚で後ろに下がろうとした私を、頭上から響いた優しいバロンの声が止めた。
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