47 / 213
第12章(1)ギャランside
1-2
しおりを挟む
***
あれはもう、40年程前。
そう、30歳になりたての頃ーー。
「ッーー……。
あー……完全に、しくった……」
ある田舎町の小さな診療所のベッドの上で目を覚ましたワシは、すぐに何故自分がその場にいるのか察して己の失敗を嘆いた。
思わず自らの顔を覆った両手を退けて、天井を見上げていた目線を少しずつ下げていくと、固定されて包帯をグルグルと撒かれた右脚が映る。
それは、仕事中の事故じゃった。
何でも屋としての任務を完了し、「さて引き上げるか」とアジトに戻ろうとした矢先。任務場所だった背後の土砂崩れに巻き込まれ、ワシはそのまま気を失っていたのだ。
ーーマズい。
自分が何日眠っていたのか、全く分からない。任務が完了した、という報告を親分にしていなければ、他のメンバーが自分の今の状況を知っているのかさえ分からない。
この頃のワシはある何でも屋に属していて、親分《ボス》を中心に約30名ほどの仲間がいた。
任務はそのメンバーでそれぞれが役割を果たしていて、きっとみんな自分の任務が完了したという報告を待っているに違いなかった。
物心ついた時には両親と呼べる者がいなかったワシにとって、何でも屋のみんなは初めて家族のような”仲間”と呼べる存在。
『オマエ、なかなか良い腕と逃げ足を持ってるな!オレの元に来い!しっかり鍛えてやる!』
12歳の時。盗みを働いたワシを捕まえた親分が、そう言って笑った。
褒めてもらえた。親に捨てられ、ゴミクズのように生きていたワシがやっと得た居場所じゃった。
帰りたいーー。
みんなに迷惑をかけないよう、早く集合場所に戻らなくてはーー。
そう思って上半身をベッドから起こそうとした時……。
「あーーーっ!!」
「っ?!」
狭い病室に響く女の……いや、子供の声?
何事かと声の方に顔を向けると、その声の主はダッとワシの方に駆け寄って来て、ずいっと顔を寄せて来た。
あれはもう、40年程前。
そう、30歳になりたての頃ーー。
「ッーー……。
あー……完全に、しくった……」
ある田舎町の小さな診療所のベッドの上で目を覚ましたワシは、すぐに何故自分がその場にいるのか察して己の失敗を嘆いた。
思わず自らの顔を覆った両手を退けて、天井を見上げていた目線を少しずつ下げていくと、固定されて包帯をグルグルと撒かれた右脚が映る。
それは、仕事中の事故じゃった。
何でも屋としての任務を完了し、「さて引き上げるか」とアジトに戻ろうとした矢先。任務場所だった背後の土砂崩れに巻き込まれ、ワシはそのまま気を失っていたのだ。
ーーマズい。
自分が何日眠っていたのか、全く分からない。任務が完了した、という報告を親分にしていなければ、他のメンバーが自分の今の状況を知っているのかさえ分からない。
この頃のワシはある何でも屋に属していて、親分《ボス》を中心に約30名ほどの仲間がいた。
任務はそのメンバーでそれぞれが役割を果たしていて、きっとみんな自分の任務が完了したという報告を待っているに違いなかった。
物心ついた時には両親と呼べる者がいなかったワシにとって、何でも屋のみんなは初めて家族のような”仲間”と呼べる存在。
『オマエ、なかなか良い腕と逃げ足を持ってるな!オレの元に来い!しっかり鍛えてやる!』
12歳の時。盗みを働いたワシを捕まえた親分が、そう言って笑った。
褒めてもらえた。親に捨てられ、ゴミクズのように生きていたワシがやっと得た居場所じゃった。
帰りたいーー。
みんなに迷惑をかけないよう、早く集合場所に戻らなくてはーー。
そう思って上半身をベッドから起こそうとした時……。
「あーーーっ!!」
「っ?!」
狭い病室に響く女の……いや、子供の声?
何事かと声の方に顔を向けると、その声の主はダッとワシの方に駆け寄って来て、ずいっと顔を寄せて来た。
0
あなたにおすすめの小説
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
盲目公爵の過保護な溺愛
クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中
恋愛
伯爵家の長女として生まれたミレーヌ。平凡な容姿に生まれた彼女は、美しい妹エミリアと常に比べられ、実の両親から冷遇されて育った。
パーティーでは家族の輪に入れて貰えず、いてもいなくてもいい存在。
そんな現実から逃れようと逃げ出した先で、ミレーヌは美しい容姿をした目の不自由な男性と出会うが──
【完結/番外追加】サリシャの光 〜憧れの先へ〜
ねるねわかば
恋愛
彼女は進む。過去に囚われた者たちを残して──
大商会の娘サーシャ。
子どもの頃から家業に関わる彼女は、従妹のメリンダと共に商会の看板娘として注目を集めていた。
華々しい活躍の裏で、着実に努力を重ねて夢へと向かうサーシャ。しかし時には心ないことを言う者もいた。
そんな彼女が初めて抱いた淡い恋。
けれどその想いは、メリンダの涙と少年の軽率な一言であっさり踏みにじられてしまう。
サーシャはメリンダたちとは距離をおき、商会の仕事からも離れる。
新たな場所で任される仕事、そして新たな出会い。どこにあっても、彼女が夢を諦めることはない。
一方、光に囚われた者たちは後悔と執着を募らせていき──
夢を諦めない少女が、もがきながら光を紡いでいく軌跡。
※前作「ルースの祈り」と同じ世界観で登場人物も一部かぶりますが、単体でお読みいただけます。
※作中の仕事や制作物、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる