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第14章(1)アカリside

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***

お祖父様にたくさん遊んでもらってはしゃいだ子供達は、お風呂に入って夕飯を食べるとすぐに夢の中へ入ってしまった。

一方の私はなかなか寝付けなくて、上着を羽織ると部屋を出て、家の裏にある墓地へと足を進めた。
ここには、ご先祖様、そして私のお父さんとお母さんも眠っている。


ヒナタとヒカルと嬉しそうに遊ぶお祖父様は元気そうに見えたけど、やはり以前よりも痩せて小さくなった気がした。
そして、おそらく誰よりもお祖父様が気を許しているローザが、別荘の使用人長の任を離れてここに居るという事は……秘書さんが私に話してくれた事が、間違いではないという事。お祖父様が無理をしないように、彼女が側に付いていてくれているのだ。

「……私には、何が出来る?」

お祖父様とその会社の危機をみんなが救おうとしているのに、お祖父様の唯一の孫娘である私が何もしないで生きている。

私は、このままで……いいの?

そう心の中で問い掛けながらも、答えは出ない。
私の心の中には、こんな時でもヴァロンの事が浮かんできてしまう。


会いたいよーー。

会いたくて会いたくて、募る想いが薄れる事は決してない。潤む瞳で夜空を見上げて、その想いを堪えていると……。

「こんな夜更けに何をしている。敷地内とはいえ、女の子1人で……危ないだろう?」

「!……お祖父、様ッ……」

背後から声を掛けられて振り返ると、そこには優しく微笑む祖父が立っていた。
ハッとした時には遅くて、頰を伝った涙を私は隠す事が出来なかった。

泣いているところを、見られてしまったーー。

慌てて両手で涙を拭いながら暗闇が隠してくれている事を願ったが、おそらくバレてしまっているだろう。
どう誤魔化そうか、と必死に頭の中で考えていると、お墓の前に腰を下ろしたお祖父様が口を開いた。

「私と妻は、お見合い結婚だった」

「!……え?」

「私は仕事や自分の時間が楽しくてな。恋愛に興味がなくて、ましてや……今まで会った事もない女性と結婚し、生活を共にするなんて考えられなかった」

突然で驚いたが、まるで物語を語るように、お祖父様は昔の事を思い出しながら話してくれた。
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