上 下
55 / 163
第4章(3)アカリside

3-4

しおりを挟む

ヒナタとヒカル、私とヴァロンの可愛い子供。
もし私が約束を破れば、あの子達の未来もどうなるか分からない。

引き離されて、取り上げられて……。
シャルマ様に都合の良い道具のように扱われる可能性もある。
いや最悪。邪魔な存在だと判断されたら、きっと簡単に命を奪われてしまう。


この三年間、私を支えてくれた子供達。
ヴァロンと同じくらい大切な私の宝物。

ヴァロンも子供達も、どちらも天秤になんて掛けられないくらい私には大切な存在だ。


……でも。
どちらかを選ぶ道しかないのなら、今の私には選択肢は一つしかない。

そう思いながらも、心揺れていると……。


「まま~!
あい、これあげゆ~」

「も~ヒカル!おくちのまわり、ふいて!」

私の好きなウサギの形をしたリンゴを持ったヒカルが駆けてきて、その後から追って来たヒナタが世話を焼く。

その可愛い微笑ましい姿を目の前にして、私は思わずベンチから降りて子供達を抱き締めた。


自分は酷い母親だと思った。

選択肢は一つしかない。
この子達を守る事が当たり前の筈なのに……。
ヴァロンにもう会えないのだと思ったら、一瞬心が揺れた。

子供達を手放せる筈なんてないと思いながらも、私の中の”女”の部分が愛しい人を求めて揺れる。

そんな自分を恥じて、腕の中で「ママ?」と私を呼ぶヒナタとヒカルの顔が見れない。
暫く抱き締めたままでいると、背後のベンチからミネアさんも立ち上がる気配を感じた。


「可愛いお子さんね。わたくしも早く欲しいわ、マオ様との子供。
……では、ご機嫌よう」

弾んだ綺麗な声と、軽やかに歩き去って行くヒールの音が私の胸にズキズキと刻むように突き刺さる。

……。

やっと再び巡り逢えた、愛おしい人。

けれど。
その人はもう、私の”夫”ではなかった。

待ちに待った再会は、残酷な現実と一緒に私達に訪れたのでした。

……
…………。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

史上最悪の王妃は2度目の人生を与えられました

oro
恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:514

悲し寂しい時に

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

その関係はこれからのもの

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:4

後宮で侍女になった私は精霊に好かれている

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:90

1999年 魔都 魔王による世界統一

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

-アプリ- 最後の1人

ホラー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:2

泡沫の香り

H2O
青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...