夢の言葉と約束の翼(上)【続編⑤】

☆リサーナ☆

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第4章(4)マオside

4-2

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バクバクと鳴り響く鼓動と共に、男の子の言葉が僕の中で何度も木霊する。


”まさか、こんな簡単な絵本も読めないの?”。


図星だった。

言われて当然の事なのに……。
情けなくて落ち込んだ僕は、逃げるように本屋を出て早足で歩いた。


その間にも、すれ違う人の視線や話し声、周りの雑音が響く度に心拍数が上がる。
心臓が痛いくらいに鳴り響いて、苦しい。

分かってる。
誰も僕を見ている訳でも、噂している訳でもない。

でも。
何だか怖くて、不安で……。
まるで真っ暗闇に迷い込んだような、どうしようもない孤独に追い込まれて身体が震えた。


自分は一体、何者なんだろう?

この三年間いつまで経っても出ない答えが、僕の居場所を定めさせてはくれない。


人混みから逃げるように、俯きながら歩いて歩いて……。
気付いたら、辿り着いていた街外れ。

そこは中心部の栄えた場所よりは人が少なくて、僕は誰も座っていないベンチを見付けると少しホッとして腰を降ろした。


ゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着けると、胸ポケットに入れていた伊達メガネを手に取って見つめる。


「……。
これ、何とかならないかな……」

状態を改めて確認するが、先程壊れてしまった伊達メガネはレンズが割れており、フレームも曲がっていて自分の力で直す事は不可能だった。
やっぱり駄目か、と溜め息を吐いて俯く。

伊達メガネ。
それは僕とって、強く在る為のお守りのような存在だった。
素顔や素性。自信のない自分を隠してくれるようで、安心出来るお守り。
掛けていると少しだけ、心細い気持ちを紛らわす事が出来た。

そんな物に頼っていてはいけないと分かりながらも、僕には手放せない物。


”我が一族で在りたかったらその容姿を消せ!
その醜い姿を決して見せるな!”

でも。
祖父からそう言われて、本来の髪色も瞳の色も否定された僕はすでに嘘の塊。
髪を染め、常にカラーアイレンズを入れて毎日生活をしている。
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