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第7章(2)ディアスside
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【洋食店】
マオ様が召し上がりたいと言ったのは、ふわとろ玉子が乗ったケチャップオムライスだった。
正面の席に座り、運ばれてきたオムライスをじっと見つめるマオ様を私も見つめる。
本当に不思議な事だ。
オムライスにだって色んな種類がある。
デミグラスソースやホワイトソース、更に中のご飯がピラフのようだったりバターライスだったり……。
食に興味など全く示さなかった方が、まさか食べたい物をここまで具体的にあげるなんて。
「さ、マオ様。
温かいうちにお召し上がり下さい」
「うん。頂きます」
様々な事に驚かされながらも私がすすめると、マオ様はスプーンを片手にし、ふわとろの卵を崩してケチャップライスと絡めながら一口。
ゆっくり噛んで、静かに飲み込み、首を少し傾げたと思ったら……。また一口。
「いかがですか?」と尋ねようとした時、フッと微笑んだマオ様が呟くように言った。
「……やっぱり、違うなぁ」
「!……え?」
「似てるんだけどね。……違うんだ」
”違う”の意味が分からず黙ったまま呆けていた私に、マオ様が話を続ける。
なんでも先程話に出てきた子猫を引き取ってくれた方にオムライスをご馳走になり、それがとても美味しかったとの事。
それ以来また食べたいと思い、屋敷の使用人達にもどんな感じか説明して作ってもらったが、どうも何が違うらしい。
「……きっと、その方だけが知る隠し味があるのかも知れませんね。
家庭の味と言いますか、その人が作る独特の工夫といいますか」
私の言葉に、マオ様は「そっか」と残念そうにしながら再びオムライスをゆっくりと口に運ぶ。
主人が望んでいる品を用意出来なかった事に悔しいような申し訳ない気持ちが広がるが、それをキッカケにこうしてまともに食事をして下さる姿を目にする事が出来た事は素直に喜ばしかった。
マオ様が召し上がりたいと言ったのは、ふわとろ玉子が乗ったケチャップオムライスだった。
正面の席に座り、運ばれてきたオムライスをじっと見つめるマオ様を私も見つめる。
本当に不思議な事だ。
オムライスにだって色んな種類がある。
デミグラスソースやホワイトソース、更に中のご飯がピラフのようだったりバターライスだったり……。
食に興味など全く示さなかった方が、まさか食べたい物をここまで具体的にあげるなんて。
「さ、マオ様。
温かいうちにお召し上がり下さい」
「うん。頂きます」
様々な事に驚かされながらも私がすすめると、マオ様はスプーンを片手にし、ふわとろの卵を崩してケチャップライスと絡めながら一口。
ゆっくり噛んで、静かに飲み込み、首を少し傾げたと思ったら……。また一口。
「いかがですか?」と尋ねようとした時、フッと微笑んだマオ様が呟くように言った。
「……やっぱり、違うなぁ」
「!……え?」
「似てるんだけどね。……違うんだ」
”違う”の意味が分からず黙ったまま呆けていた私に、マオ様が話を続ける。
なんでも先程話に出てきた子猫を引き取ってくれた方にオムライスをご馳走になり、それがとても美味しかったとの事。
それ以来また食べたいと思い、屋敷の使用人達にもどんな感じか説明して作ってもらったが、どうも何が違うらしい。
「……きっと、その方だけが知る隠し味があるのかも知れませんね。
家庭の味と言いますか、その人が作る独特の工夫といいますか」
私の言葉に、マオ様は「そっか」と残念そうにしながら再びオムライスをゆっくりと口に運ぶ。
主人が望んでいる品を用意出来なかった事に悔しいような申し訳ない気持ちが広がるが、それをキッカケにこうしてまともに食事をして下さる姿を目にする事が出来た事は素直に喜ばしかった。
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