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第7章(3)ユイside

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「ボクも、ヴァロン様の事をずっと凄い人だと思ってました。
……でも。
あの方の過去を知って思ったんです。
誰だって初めから強い訳でも、綺麗な訳じゃない。たくさん傷付いて、醜い思いや苦しい事を知って……研ぎ澄まされていくんだって」

そう声をかけてくれたレイさんに、地面の砂を固く握り締めるようにしていた手を握られた瞬間。

私は何故だか、彼から瞳を逸らせなくなっていた。


「ユイさんは知ってるじゃないですか。自分の弱さも、醜さも……。
確かに傷付くのは、とても痛くて辛い。
でもそれは、心があるから感じられる。
弱さだって、ユイさんの強さの一部なんですよ?」

彼の一言一言が、今まで勘違いして、勝手に思い上がっていた私に気付かせてくれる。

独りで塞ぎ込んでいた暗闇に、光をくれる。


「っ……弱さも、強さの一部?」

「そうです!
それに、本当に醜い人はこんなに苦しんだりしません。
貴女は誰よりも優しくて、心の綺麗な人ですよ!」

私に向けられる真っ直ぐで頼もしい声が素直に嬉しくて、今までずっと独りぼっちだと思っていた心に響く。


「一人で悩んで答えが見付からないなら、今度はボク等と一緒に頑張りましょうよ!
ねっ?ユイさん!」

彷徨っていた私に手を差し伸べてくれて、もう一度立ち上がる勇気をくれた。


弱さを知って、認めて、強くなる。
醜い心を知って、傷付いて、初めて人は本当に優しく綺麗になれる。


私は馬鹿だった。
何も知らない世間知らずのくせに、立派な両親の子供として自分も自然とそんな人物になれると思っていたの。

何の努力もしないで、一度躓いたら目を逸らして……。
悪い事は人のせいにして、”私は二人の両親の子供なのよ!”って……。
言葉に出来ない想いで、知らず知らずに自分の心を縛り付けていた。


ようやく目が覚めて、いつだったか先生が話してくれた私の名前の由来を思い出す。

人との関わりを自ら断っていたリディア母さんが、最期に大切だと気付いた”人との繋がり”。

”大切な人と人が結び付くように”ーーユイーー。


立派になるよりも、可愛い女の子になるよりも……。
それが、まず私が1番やるべき事。
1番大切にしなくてはいけない事だった。
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