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第8章(3)マオside
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しおりを挟む遊び場へ駆けて行ったヒナタちゃんとヒカル君に視線を向けるアカリさんをチラッと見た後、僕は彼女が朗読していた絵本を手に取った。
海賊ジャスパーの冒険。
子供向けの10ページ程の絵本。
パラッとページをめくって見つめながら、先程アカリさんが読んでくれた内容を思い出す。
現実ならばあり得ない、と思わせてくれる不思議なお話。
でも、そんな話だからワクワクする。
だって、絵本だもん。
読んでいる時くらい、夢をみたい。
こんな事があるんだよ。って、嘘でも思いたい。
「そんなに気に入りましたか?その本」
「えっ?……あ、いや……っ」
いつの間にか僕の方を見ていたアカリさんの笑顔にドキッとして、慌てて絵本を閉じて俯いた。
『なんだこれは!
絵本が好きなんて、大の男がみっともない!
こんな物ばかり読んどるから、いつまで経っても成長せんのだ!』
古本屋で買い集めて来た絵本を、祖父にはそう言って全部捨てられてしまった。
自分の年齢で絵本が好きなんて、おかしい事なのだ。
そう思って口籠る僕に、彼女は声を弾ませて言った。
「いいですよね~絵本!
子供達の為に買ってるなんて口実で、実は私が好きなのかも知れません」
「!……えっ?」
「私、小さい頃あんまり絵本を持ってなくて……。
その反動ですかね?今、子供達に読み聞かせながら……実は自分がワクワクしてるんです」
驚いて顔を上げた僕に、アカリさんは少し照れ臭そうに微笑む。
その時トクンッて、鼓動が優しい音を立てるのが分かった。
彼女のその言葉が嬉しいのに、何故だか涙が溢れそうになった。
同時に、大丈夫だって、思ったんだ。
「……絵本も、好きです。
……。けど、アカリさんの声も……綺麗です」
「……え?」
「だから……。
もう一度、っ……もっと、聴きたいです。
読んで、もらえませんか?」
アカリさんの瞳を真っ直ぐ見て、素直な気持ちを伝えた。
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