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第1章(3)アカリside

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……え?
……え?……えっ?……。

パシャンッと、湯船が揺れた気配に……。
ゆっくりと背後を振り返ると……。


「気に入った?露天風呂」

同じ湯船に浸かって、優しく微笑むヴァロンと目が合った。

……。

一瞬、真っ白になる頭の中。
一呼吸置いた、次の瞬間。


「っ~~!!きゃあぁぁ~~~ッ!!」

私は叫び声を上げて、バシャバシャとヴァロンに向かってお湯をかけた。


「!っ……え?ちょ、ちょっ……アカリッ?」

「っ……エッチ!エッチ!エッチ~ッ!
ヴァロンのエッチ~~ッ!!」

突然の事態にすっかり混乱した私は恥ずかしさが溢れて、必死に自分の身体を抱き締める様にして隠した。

夫婦でも、身体の関係があっても恥ずかしいものは恥ずかしい。
しかも、まだ夕方でもないこんな明るい場所。
バッと背を向けて、緊張と羞恥で震える身体を落ち着け様としていると……。


「……悪い、ふざけ過ぎたな。……。
これ以上絶対に近付かねぇから、もう少しこのまま居させて?」

ヴァロンのその言葉の後に、パシャンッと、湯船が揺れる。

チラッと顔だけ振り返ると、彼も私に背を向けて湯船に浸かっていた。

……。

変装を解いたヴァロンの白金色の髪がお湯に濡れて、毛先から滴る雫が首筋につたり落ちる。
肩と背中の逞しい筋肉。

ホントに綺麗で色っぽくて、惹きつけられてしまう。


「……ごめん、なさい」

少し冷静になった私は小さく呟いて、ゆっくりとヴァロンに近付いて……。手を伸ばして肩にそっと触れた。


「は、恥ずかしかった……だけ、なの。
嫌なんかじゃ、ない。……から」

そう言うと、ヴァロンは控え目に顔だけ振り返って私を見てくれた。
瞳が重なって、ドキンッと心臓が跳ねる。
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