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第9章(1)アカリside
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しおりを挟む私の瞳に映るのは……。
アラン様と同じ黒に近い灰色の髪と瞳に、黒縁の眼鏡を掛けた、長身の男性。
……でも。
アラン様とは全く違う穏やかな雰囲気を纏った、男性。
「……。ヴァ、ロン?」
「っ……アカ、リ」
確かめるように名前を呼ぶと、彼は控え目に私の名前を呼び返してくれた。
どんなに姿を変えていても間違える筈のない、愛おしい人。
「っ……ヴァロン!」
迷いなんてない。
その場を駆け出して、目の前のヴァロンに飛び付いた。
会いたかった。
その気持ちを表すようにギュッとしがみ付く私を、包むように抱き返しながら、彼がそっと後頭部を優しく撫でてくれる。
暖かい腕の中、優しい大きな手。さっきまでの恐怖が嘘みたいに薄れて、安心感が広がっていく。
「暫く、二人きりにしてやる」
アラン様のそんな言葉が聞こえたと思うと、バタンッと扉が閉まる音がした。
……。
静かな部屋。
ヴァロンと二人きりの空間に、身体の震えも次第に治まっていった。
「っ……アカリ、良かった。
どこも、怪我とかしてないかっ?」
……。怖い思いさせて、ごめんな」
ヴァロンに囁くように小さな声で尋ねられて、私は腕の中で必死に頷いたり、首を横に振っていた。
助けに、来てくれたんだ。
もう何も怖くない。ヴァロンが居てくれたら、それだけで私の中に勇気が湧いてくる。
「平気。
私の方こそ、ごめんなさいっ……」
いつも守られてばかりで、ヴァロンにも、きっとみんなにも心配をかけた。
言いたい事や話したい事がたくさんあるけど、ヴァロンの顔を見たら胸がいっぱいで……。何から口にしていいのか分からない。
とりあえず、早くここを出て一緒に港街に戻りたいと思った。
”もう大丈夫、一緒に帰ろう。”
そう、彼が言ってくれると思ってた。
……けど。
ヴァロンは私の両肩を掴んで少し身体を離すと、視線を合わせず俯いて言った。
「……もう少しだけ、辛抱しててくれ。
必ずお前を、港街へ帰すから……」
「!……え?」
予想外の言葉に、私は耳を疑った。
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