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第12章(2)ヴァロンside
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しおりを挟む「ハハハッ……!そうか、そうか。
全く、お前は餓鬼の頃から変わらんな。真っ直ぐで、純粋で……。
今も自分の妻の事を、疑いもしないのだろう?」
「……。なに?」
自分の妻。
つまり、それはアカリの事。
俺がアカリを疑う?
そんな事、ある筈のない事。
問い掛けに疑問を感じて聞き返した俺に、シャルマは懐から四つ折りにしてある一枚の紙を取り出すと…。広げて、目の前に差し出した。
「……っ?!」
俺は……。
思わずその紙をシャルマの手から奪い、震える両手で持ちながら見つめた。
まさか、と思う俺の瞳に映る紙。
その紙は、夫婦が離縁する際に互いが署名する書類。
その妻側の記入欄には……。
アカリのサインが書かれていた。
「っ……」
”嘘だ!”
”どんな手を使ったんだ!”
と、叫びたい声が口から出ない。
破り捨てたい筈のこの紙を破る事が出来ないのは……。
俺には、解っていたからだ。
サインされている文字は紛れもなくアカリの直筆で、決して見間違える事のない見慣れたもの。
身体と、心が……強張る。
幼いあの日。
父さんに瞳を逸らされたあの瞬間によく似た、感覚。
凍ったように、動けない俺。
そんな俺の肩をポンッと叩いて、シャルマが言った。
「まあ、詳しい事は本人と話せ。
その方が、お前も納得がいくだろう?」
シャルマはそう言うと、扉を開けて……。
誰かを部屋に招き入れた。
ゆっくりと、部屋に入ってきた人物に視線を向けると……。
俺の、1番愛おしい人が……そこに居た。
……おかしいな。
1番、会いたかった筈なのに……。
この状況下では、1番に……会いたくなかった。
今ここに居る彼女を、俺は信じたくなかった。
……
…………。
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