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第25章(2)アランside
2-2
しおりを挟む母を失った悲しみ、孤独。
父に裏切られて許せない気持ちと、でも、まだ愛して欲しいという期待。
兄に対する、嫉妬や怒り……。
やるせない想いの先をどうしたらいいのか分からなかった幼いオレを、どんな形であれ導き、育ててくれた。
シャルマ様は多くを他人に語る事はしない。
けど、もしかしたら……。自らの孤独を知った上で、例え愛ではなく同情だとしても、オレの事を少しは大切に想っていてくれたのだろうか?
必要として、くれていたのだろうか?
……それならば。
オレはシャルマ様を、独りには出来ないと思ってしまった。
ーーおかしいな。
以前のオレならば、きっとこんな風に思う事はなかった。
シャルマ様の中に隠された孤独にも気付かず、知ったところで"それがなんだ?"と思っただろう。
だが……。
『夢だったんだよな。
こうやって、弟と一緒に遊ぶの』
『俺は、お前が居てくれて嬉しいよ』
『親は親だろ?俺達は俺達だ。
俺は父さんに感謝してるよ。俺に、兄弟を遺してくれた事』
あの瞬間。
産まれてきて良かった、と……心から思えたから。
皮肉だな。
オレに人の心を取り戻させてくれたのが、過去に1番憎んでいた兄上だった。
今のオレを見たら、母さんはどう思うのだろうか?
……。
いや、そんな事は愚問だったな。
私がこれから逝くであろう先は、きっと母とは違う場所だから……。
予想していなかった状況に、そう、思わず感傷に浸ってしまった時だ。
「ーー私と一緒に、だと?
……そんな事、信じられると思うか?」
鼻で笑った声が、緩んでいた空気を再びピリッとしたものに戻す。
シャルマ様は胸ポケットからタバコとライターを取り出し火をつけると、一服して私を睨み付けた。
解り合えるのではないかーー?
そう、感じたのはほんの一瞬。
目の前のシャルマ様は、また以前のこの人に戻っていた。
「ディアス、殺れ」
低い、張りのある、太い声が告げる。
長く積み上げられた"この人"を変える事は、おそらくもう不可能だった。
「邪魔をしないで下さい。アラン様」
命じられたディアスはシュッと一瞬手首を振ると、袖口に仕込んでいたナイフを取り出し、手に持って構える。
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