100 / 185
第25章(3)ディアスside
3-2
しおりを挟む
***
マオ様が毒薬を飲まされて倒れた数日後。
私は運命を変えてくれる女性に会った。
……いや。
"再会した"という方が、正しいのだろう。
「!!ッーー……貴女、はっ……。まさか、っ……生きておられたのですかっ?」
夢の配達人の元最高責任者であるギャラン様に呼び出され、訪れた隠れ家。一緒に居たその方を見て、私は信じられなかった。
艶やかな長い黒髪。
漆黒に輝く、宝石のような黒い瞳。
私の目の前に居た女性は、リオン様の想い人であり、ヴァロン様の母である、アンナ様だった。
更に驚くべきは、その姿。
何故ならその姿は、最後に見たあの日と……。三十年前のあの日と、全く姿が変わって居なかったからだ。
聞きたい事は色々あった。
けれど、突然すぎて……。言葉が上手く出て来ない。
すると、そんな私を見て口を開いたのはアンナ様。
「……単刀直入に言います。
私に、力を貸して頂けませんか?」
「!……え?」
「お願いしますっ……!」
「っ、……」
私にそう言い、頭を下げるアンナ様。
その様子にますます驚く。
だって、私が知っているこの人は……。
リオン様に媚びるようなのに息子であるヴァロン様には厳しくて、そして昔私や他人には挨拶すら口にせず、いつも睨むような視線を向けていた。
人とのコミュニケーションが明らかに欠落していて、まともに話せる人ではなかった筈だ。
その人が、しっかりと話し、私の目を見て、頼み事をしている。
そればかりか……。
「貴女は今、spellbindに縛られているでしょう?」
「!っ……」
「私が、その呪縛を解きます」
「っな、……」
「私に手を貸して下さる。
そうお約束頂けるのなら、呪縛を解き、そして貴女の知りたい全てをお話する事を……私も約束します」
アンナ様が私に、強い鋭い眼差しを向けた。
その瞳に見つめられて、私は良い意味で、どうでも良くなった。
何故この人が、私にspellbindがかかっている事が分かったのか。
何故この人に、spellbindを解く能力があるのか……。
嘘偽りない、と私に向ける眼差しが告げていたのだ。
この方は"我々がお仕えする一族の方なのだ"と。
気付けば私は、アンナ様に「かしこまりました」と跪跪いていた。
マオ様が毒薬を飲まされて倒れた数日後。
私は運命を変えてくれる女性に会った。
……いや。
"再会した"という方が、正しいのだろう。
「!!ッーー……貴女、はっ……。まさか、っ……生きておられたのですかっ?」
夢の配達人の元最高責任者であるギャラン様に呼び出され、訪れた隠れ家。一緒に居たその方を見て、私は信じられなかった。
艶やかな長い黒髪。
漆黒に輝く、宝石のような黒い瞳。
私の目の前に居た女性は、リオン様の想い人であり、ヴァロン様の母である、アンナ様だった。
更に驚くべきは、その姿。
何故ならその姿は、最後に見たあの日と……。三十年前のあの日と、全く姿が変わって居なかったからだ。
聞きたい事は色々あった。
けれど、突然すぎて……。言葉が上手く出て来ない。
すると、そんな私を見て口を開いたのはアンナ様。
「……単刀直入に言います。
私に、力を貸して頂けませんか?」
「!……え?」
「お願いしますっ……!」
「っ、……」
私にそう言い、頭を下げるアンナ様。
その様子にますます驚く。
だって、私が知っているこの人は……。
リオン様に媚びるようなのに息子であるヴァロン様には厳しくて、そして昔私や他人には挨拶すら口にせず、いつも睨むような視線を向けていた。
人とのコミュニケーションが明らかに欠落していて、まともに話せる人ではなかった筈だ。
その人が、しっかりと話し、私の目を見て、頼み事をしている。
そればかりか……。
「貴女は今、spellbindに縛られているでしょう?」
「!っ……」
「私が、その呪縛を解きます」
「っな、……」
「私に手を貸して下さる。
そうお約束頂けるのなら、呪縛を解き、そして貴女の知りたい全てをお話する事を……私も約束します」
アンナ様が私に、強い鋭い眼差しを向けた。
その瞳に見つめられて、私は良い意味で、どうでも良くなった。
何故この人が、私にspellbindがかかっている事が分かったのか。
何故この人に、spellbindを解く能力があるのか……。
嘘偽りない、と私に向ける眼差しが告げていたのだ。
この方は"我々がお仕えする一族の方なのだ"と。
気付けば私は、アンナ様に「かしこまりました」と跪跪いていた。
0
あなたにおすすめの小説
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる