101 / 185
第25章(3)ディアスside
3-3
しおりを挟む……。
アンナ様は約束通り私の呪縛を解き、私の知りたかった全てを話してくれた。
自分がシャルマ様と兄妹である事。
故に希血を受け継いでおり、父や周りにシャルマ様よりも愛された事から怒りを買い、邸から追放された事。
目の前で父を殺されたショックで記憶を失い、気付いた時には娼婦の館。生きていく為に、その場所で生きる術しか見出せなかった事。
そして、何故私に力を貸して欲しいのか、と。
リオン様と最後に過ごされた夜に、何を聞いたのか……。
「貴女も知っての通り、私の能力は同じ一族の兄には通じません。
……だから。私の代わりに、討ってほしいのです」
貴女が罪にならぬよう、後の始末は私がする。
だから、力を貸してーー。
……アンナ様は全てを話し終わった後に、もう一度私に深く頭を下げた。
断る理由など、ない筈だった。
ようやく長年縛られていた呪縛から解き放たれ、自由になれるのだから……、……。
そうすれば、シオンとも……。息子と一緒に、普通に暮らす事が出来る。
こんな風貌だからずっと"父"だと偽り、理由を理解してくれた優しい院長先生の小さな孤児院に預けて、これまで育てて来た。
それは三度目の妊娠、三十代最後の年に身籠った命。
一度目の妊娠は、シャルマ様の女としての勤めをするようになって1年程過ぎた頃だった。
二度目は、二十代半ば頃だっただろうか……。
一度目に僅かな希望を抱き、父親であるシャルマ様に懐妊を告げたが……、……。
『……そうか。コレでなんとかしろ』
ーーーそれで始末しろーーー
札束を投げながらそう言われた時、私には永遠に訪れない"幸せ"だと思った。
だから二度目はもう告げる事もなく、誰に知られる事もなく始末した。
けれど……。
『ディアス?……もしかして、妊娠してる?』
それは二人目の子供を諦めた際。医師からもう妊娠は難しいと診断されていたから、油断していた三度目の妊娠。
今までない体調不良から、1番知られたくないあの方に……。リオン様に悟られてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる