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第26章(1)アンナside

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リオが遺したもう一人の息子、アラン。
彼の笑顔を見て確信した。

ああ、もう大丈夫。
憎しみの連鎖は断ち切られ、この子はヴァロンとこの先の人生を仲良く歩む事が出来るのだ、と……。
私とシャルマが出来なった人生を、きっと築いてくれる。

安心して、スッと気持ちを切り替えて立ち上がると、中断してしまっていた作業を再開しようと振り向いた。
すると目の合ったディアスが悟ったように頷いて、私の手助けをしてくれる。部屋の片隅にあらかじめ用意されていたポリタンクを持ち、蓋を開けると中に入っていた液体を部屋中に撒き散らす。

「!っ……何をッ、しているのですか?」

「……終わらせるのよ」

「えっ?」

「今日で全てを、終わらせるの」

アランの問い掛けに答えながら、私は昔の事を思い出す。
もう決して戻る事が出来ない、あの日々の事を……。

……
…………。
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