夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
138 / 185
最終章(2)ヴァロン&アカリside

2-1

しおりを挟む
【ヴァロンside】

「……今日は、よろしく頼むな?」

アカリの祖父、アルバート様の別荘の中庭。婚礼用の袴に着替えた俺は、そこに植えられた何本かの"ある木"に話し掛けながらそっと幹に手を触れた。


今日はアカリの25歳の誕生日であり、俺達の結婚式。
一年前の今日。俺達は色んな出来事を乗り越えてもう一度一緒に居られるようになった。が、俺の祖父シャルマが亡くなった事ですぐに結婚式を……と言う訳にはいかなかった。
もうアカリを不安にさせないように、これまで"父親"という存在がいなくて寂しい思いをさせたヒナタとヒカルの為にすぐに籍は入れたが、これと言ったお祝いはずっとなくて……。アカリは「ヴァロンと居られたらいいの!」って言ってくれたけど、これまでのお詫びやお礼も兼ねて、俺はどうしても結婚式をやりたかったんだ。
それに感謝をしているのは、アカリにだけじゃない。今日招いた、全ての人に感謝している。

アルバート様。
アカリの事、会社の事で大変だったのに……。俺が必ず戻ってくると信じて、アカリを励まし支え続けてくれた。


ヒナタとヒカル。
会いたくて会いたくて仕方なかったクセに、愛おしくて愛おしいくて仕方ないクセにどう接して良いのか分からなかった俺を、すぐに「パパ」って呼んでくれて、抱き着いてきてくれた。
俺が父親だと子供達に隠さずに話してくれていたアカリに感謝したのは勿論だが、本当に真っ直ぐで優しい子達に育ってくれた。

アラン。
記憶を失くして不甲斐ない兄である俺を支えてくれて、その間アカリ達の事もたくさん助けてくれた。おまけに、俺の記憶が戻った事も喜んでくれて、俺とアカリが一緒になる事も……自らすすめてくれた。
シャルマ様が亡くなった際。火災に巻き込まれて病院に運ばれた、と連絡を受けた時はアランあいつを失ってしまうんじゃないか?ってめちゃくちゃ怖かった……。
本当に、無事で良かった。俺の大切な弟。

……それから、…………。


「ーー今日は、とてもいい天気ですね」

「!っ……」

すっかり自分の世界に入り込んでいた俺は、その声にハッとする。
目を開けて視線を向けると、そこに居たのは俺の唯一無二の親友だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...