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10話 ライバル露店商 その3
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「やあ、調子はどうかな?」
「あ、エルドさん」
エミリアっていう高飛車? な回復魔導士に宣戦布告された次の日、エルドが私の店を訪れてくれた。単独冒険者にして相当な手練れとの評判の人だったりするのよね、この人。ほらほら、何人か大通りを歩いている人が振り返っているわ。
「ポーションの売れ行きは好調です。まあ、今は午前中しか営業していませんけど」
「そうか……まあ、ポーション製造は精神力を使いそうだからな。君のポーションは体力の30%ほどの回復と、ある程度の怪我の治療を可能にしているから凄いと思うよ」
「へえ、そうだったんですかぁ」
「なんだ、知らなかったのか?」
「い、いや……まあ、はい……」
カシムのパーティに居た頃は、前衛は誰もそんなとこ気にしてなかったし……ただ強引に私が製造したポーションを奪っては使って、奪っては使っての繰り返し……。それに、私の仕事はポーション製造だけじゃなく、家事全般も入ってたから、ポーションの効果についての検証は行っていなかったわ。
ただ勿論、自分で生み出した物だから、回復する物だという確信はあったけれど。
「アキサエルの噂は私の耳にも届いているよ。後方支援の女性……おそらくは君のことだろうが、よく一人で買い物に走っていた姿などが見られていたらしいな」
「あ……それは私ですね。あははは……」
「カシム・クインシーはおそらく、そんな君の働きなど歯牙にも掛けていなかったんじゃないのか?」
「それは……間違ってないですね。ポーション製造から料理、家事は全部私がやってましたから」
実際の戦闘はカシム達がやっていたわけだから、役割分担は出来ていると言える。でも、文句とかも平気で言われてたし、そういうところは改善してほしかったわね。
「それから……追放理由についてなんだが」
「はい……噂で流れてましたか? やっぱり……」
「ああ、そうだな……」
エルドは言いにくそうにしていた。確かに、女性に不用意に聞く内容でもないしね。こうして言葉に出さないエルドに対して、女性への配慮が感じられた。エルドに対しての好感度がどんどんと上がって行く瞬間でもあった。
「あ、そういえば、聞いてくださいよエルドさん! せっかくポーション販売が波に乗って来たって言うのに、ライバル店が出来てしまって!」
「ライバル店?」
「そうなんです、斜め向かいのあの露店商です」
私はとにかく、暗い雰囲気になるのが嫌だったので話題を変えることにした。エミリアの回復のお店「エンゲージ」を指差してみる。今はお客さんは居ないようだったけれど。
「エンゲージ……回復魔法の店か。なるほど、棲み分けは出来ているとは思うが、ここまで近いとライバル店になるかもしれないな」
「そうなんです、朝から見てましたけど、それなりにお客さんは居るようでして……」
エミリアのお店は、その場で回復魔法を行使し、傷や病気を癒すのがメイン。この手の治療は教会がメインに行っているけれど、露店商で行うのは異例かもしれない。価格帯も安いみたいだし、教会とは違って、簡単に移動できるのがメリットよね。
そんな風に私は彼女のお店を分析していた。私の店のデメリットとしては、ポーションしか販売していないこと……冒険者は当然、他の回復薬も必要になるわけで。ポーション以外の物が必要な場合は、他の薬屋に足を運ぶことになる。
スキルが強化されて、他のポーションも作り出せるようになればいいんだけど……。
と、そんなことを考えていると、私とエルドの前に見覚えのある人影が姿を現した。
「よう、リーシャじゃねぇか、この大通りで露店商やっているって噂は本当だったのかよ?」
「げっ、カシム……」
一番会いたくない男に遭遇してしまったわね……ニヤニヤと上から目線で私のことを見ているし。私は眉間にしわを寄せて、早く帰ってくれないかと本気で願っていた。
「あ、エルドさん」
エミリアっていう高飛車? な回復魔導士に宣戦布告された次の日、エルドが私の店を訪れてくれた。単独冒険者にして相当な手練れとの評判の人だったりするのよね、この人。ほらほら、何人か大通りを歩いている人が振り返っているわ。
「ポーションの売れ行きは好調です。まあ、今は午前中しか営業していませんけど」
「そうか……まあ、ポーション製造は精神力を使いそうだからな。君のポーションは体力の30%ほどの回復と、ある程度の怪我の治療を可能にしているから凄いと思うよ」
「へえ、そうだったんですかぁ」
「なんだ、知らなかったのか?」
「い、いや……まあ、はい……」
カシムのパーティに居た頃は、前衛は誰もそんなとこ気にしてなかったし……ただ強引に私が製造したポーションを奪っては使って、奪っては使っての繰り返し……。それに、私の仕事はポーション製造だけじゃなく、家事全般も入ってたから、ポーションの効果についての検証は行っていなかったわ。
ただ勿論、自分で生み出した物だから、回復する物だという確信はあったけれど。
「アキサエルの噂は私の耳にも届いているよ。後方支援の女性……おそらくは君のことだろうが、よく一人で買い物に走っていた姿などが見られていたらしいな」
「あ……それは私ですね。あははは……」
「カシム・クインシーはおそらく、そんな君の働きなど歯牙にも掛けていなかったんじゃないのか?」
「それは……間違ってないですね。ポーション製造から料理、家事は全部私がやってましたから」
実際の戦闘はカシム達がやっていたわけだから、役割分担は出来ていると言える。でも、文句とかも平気で言われてたし、そういうところは改善してほしかったわね。
「それから……追放理由についてなんだが」
「はい……噂で流れてましたか? やっぱり……」
「ああ、そうだな……」
エルドは言いにくそうにしていた。確かに、女性に不用意に聞く内容でもないしね。こうして言葉に出さないエルドに対して、女性への配慮が感じられた。エルドに対しての好感度がどんどんと上がって行く瞬間でもあった。
「あ、そういえば、聞いてくださいよエルドさん! せっかくポーション販売が波に乗って来たって言うのに、ライバル店が出来てしまって!」
「ライバル店?」
「そうなんです、斜め向かいのあの露店商です」
私はとにかく、暗い雰囲気になるのが嫌だったので話題を変えることにした。エミリアの回復のお店「エンゲージ」を指差してみる。今はお客さんは居ないようだったけれど。
「エンゲージ……回復魔法の店か。なるほど、棲み分けは出来ているとは思うが、ここまで近いとライバル店になるかもしれないな」
「そうなんです、朝から見てましたけど、それなりにお客さんは居るようでして……」
エミリアのお店は、その場で回復魔法を行使し、傷や病気を癒すのがメイン。この手の治療は教会がメインに行っているけれど、露店商で行うのは異例かもしれない。価格帯も安いみたいだし、教会とは違って、簡単に移動できるのがメリットよね。
そんな風に私は彼女のお店を分析していた。私の店のデメリットとしては、ポーションしか販売していないこと……冒険者は当然、他の回復薬も必要になるわけで。ポーション以外の物が必要な場合は、他の薬屋に足を運ぶことになる。
スキルが強化されて、他のポーションも作り出せるようになればいいんだけど……。
と、そんなことを考えていると、私とエルドの前に見覚えのある人影が姿を現した。
「よう、リーシャじゃねぇか、この大通りで露店商やっているって噂は本当だったのかよ?」
「げっ、カシム……」
一番会いたくない男に遭遇してしまったわね……ニヤニヤと上から目線で私のことを見ているし。私は眉間にしわを寄せて、早く帰ってくれないかと本気で願っていた。
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