元婚約者の悪あがき……私の幼馴染の公爵令息の前では通じない

6話 周囲の反応 その3

「リューガ、ナバット様とレイラ嬢が来ているようね」

「本当だな、ただ、あまり良い状態ではないようだが……」


　周囲の貴族達から歓迎されている様子はない。その状況にリューガも気付いているようだった。まあ、あんな婚約破棄をしたのだから、周りから歓迎されていないのは当然と言えるけれど。

　ナバット様は後先を考えずに行動してしまったのかもしれないわね。


「向こうはこちらに気付いているのかな？　話し掛けられても面倒だし、無視しておこうか」

「そうね、無視しておきましょう」

「ああ、そうしよう」


　私達はナバット様とレイラ嬢に背を向けてパーティーを楽しむことにした。各テーブルにはデザートまでを含めた様々な食べ物が用意されている。どれを選ぶかだけでも楽しそうだし、待機している使用人にお願いすれば、取って来てくれるし。

　それから別のステージ上では様々な催し物が行われていた。今はダンスが行われているわね。事前に聞いた話ではイリュージョンなんかも見られるらしい。サーカスのような雰囲気のパーティーとなっていた。

　社交ダンスも普通に行われているし、かなりの規模である。


「片っ端から楽しむとしようか。せっかくのパーティーなんだし、メアルの気持ちを改善する必要もあるしな」

「ふふ、ありがとう、リューガ。それなら片っ端から楽しんで行きましょ。まずはテーブルに乗っている料理の食べ比べね」

「おいおい、随分と食い意地が張っているじゃないか」

「気が重いときは食べて忘れるでしょう？」

「まあ、わからなくはないが……せっかくスタイルが良いのに太らないか？」


　リューガのデリカシーのない発言が出て来た。プライベートな空間でなら軽く小突いていたかもしれない。まあ、ここは公共の場なのであんまりそういうことは出来ないけれど。私だって太らないようには頑張っている。これでも運動はしているし、まだ若いから代謝だって良いはずだし。

「大丈夫よ、リューガ。太らない程度に食べ比べと行きましょう」

「分かったよ、その食べ比べに付き合うさ」

「ありがとう、リューガ」


　私は彼の腕を取ってリードした。リューガは優しく付いて来てくれる。そんな彼の表情に顔が熱くなってしまったのは、また別の話……。