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1話 慰謝料を要求されました
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「なんだと、ジェシカ……? どういうつもりだ?」
ラーゼフォン王国の大公であるブラックル・ウォルト様……私の婚約者になる。私はそんな彼に婚約破棄をして欲しいと言っていた。
「ですから、私と婚約破棄をして欲しいのです」
「自分が何を言っているのか分かっているのか?」
「はい、もちろんです。ブラックル様は第一夫人のセレナ様が隣国へ遠征に行っているのを機に私と婚約しましたが、その後の浮気は目に余ります。本来は、浮気……つまり愛人のような女性を儲けることは、私やセレナ様の同意が必要なはずです」
「まったく……面倒な女だな、お前は」
ブラックル様は全く悪びれる様子を見せていない。まさか、こんな人だったなんて婚約前には分からなかった。私はセレナ様に第二夫人になることを許されているけれど、彼が現在浮気をしている相手は違う。その浮気を止めるつもりがないなら、婚約破棄に該当する案件だった。
「婚約破棄か……まあ、してやっても良いが、慰謝料の方はたんまりといただくからな? 覚悟しておけ。レイクス侯爵家でも支払うのが困難な程の額を請求してやる」
「……」
レイクス侯爵家は私の家系になる。私はそこの娘だから侯爵令嬢という立場になるのだけれど。私はブラックル様の言葉に溜息が出てしまった……。
「ブラックル様……ご自分が何を言っているのか、理解しているのですか?」
「当たり前だ。お前から慰謝料をいただく……非常に簡単な話だろう?」
この人は何を言っているのだろうか……。
「元々はブラックル様の浮気が原因でしょう? その上での婚約破棄ですので、私が慰謝料を支払う必要性は無いように思います」
状況を考えれば、慰謝料を支払って欲しいくらいだ。私はブラックル様を睨みながら、ハッキリと答えた。
「私が誰だか分かって言っているのか? 私は現国王であるドルアーガ・ラーゼフォン国王陛下の弟になるのだぞ?」
「はい、存じております」
国王陛下の弟であるからこそ、大公殿下という地位を受け取ることが出来ているわけだ。公爵よりも上に位置する貴族階級の最上位だ。元は王族だったわけだから、貴族階級というのもおかしいけれど。
ただ、今回の件とは関係がないようにしか思えなかった。
「私が慰謝料を支払う必要がない事実とは、関係がないように思われますが……」
「ほほう、随分と強気じゃないか……ジェシカ。いいだろう、私を敵に回せばどうなるか……その目でしっかりと見定めるが良い」
ブラックル様はそこまで言うと、足早に部屋から出て行った。話はまだ途中だったのだけれど、慰謝料請求を確実なものにする為に動き出したのかもしれない。
ブラックル様はもしかして、自分が大公という立場だからと言って、何でも出来ると思っているのかしら? 王族の配下になっている事実は変わらないのに。それに、彼はどうやら私の横の繋がりをあんまり知らないようだ。
慰謝料の請求なんて絶対にさせない……私は心の中でそう誓うのだった。
ラーゼフォン王国の大公であるブラックル・ウォルト様……私の婚約者になる。私はそんな彼に婚約破棄をして欲しいと言っていた。
「ですから、私と婚約破棄をして欲しいのです」
「自分が何を言っているのか分かっているのか?」
「はい、もちろんです。ブラックル様は第一夫人のセレナ様が隣国へ遠征に行っているのを機に私と婚約しましたが、その後の浮気は目に余ります。本来は、浮気……つまり愛人のような女性を儲けることは、私やセレナ様の同意が必要なはずです」
「まったく……面倒な女だな、お前は」
ブラックル様は全く悪びれる様子を見せていない。まさか、こんな人だったなんて婚約前には分からなかった。私はセレナ様に第二夫人になることを許されているけれど、彼が現在浮気をしている相手は違う。その浮気を止めるつもりがないなら、婚約破棄に該当する案件だった。
「婚約破棄か……まあ、してやっても良いが、慰謝料の方はたんまりといただくからな? 覚悟しておけ。レイクス侯爵家でも支払うのが困難な程の額を請求してやる」
「……」
レイクス侯爵家は私の家系になる。私はそこの娘だから侯爵令嬢という立場になるのだけれど。私はブラックル様の言葉に溜息が出てしまった……。
「ブラックル様……ご自分が何を言っているのか、理解しているのですか?」
「当たり前だ。お前から慰謝料をいただく……非常に簡単な話だろう?」
この人は何を言っているのだろうか……。
「元々はブラックル様の浮気が原因でしょう? その上での婚約破棄ですので、私が慰謝料を支払う必要性は無いように思います」
状況を考えれば、慰謝料を支払って欲しいくらいだ。私はブラックル様を睨みながら、ハッキリと答えた。
「私が誰だか分かって言っているのか? 私は現国王であるドルアーガ・ラーゼフォン国王陛下の弟になるのだぞ?」
「はい、存じております」
国王陛下の弟であるからこそ、大公殿下という地位を受け取ることが出来ているわけだ。公爵よりも上に位置する貴族階級の最上位だ。元は王族だったわけだから、貴族階級というのもおかしいけれど。
ただ、今回の件とは関係がないようにしか思えなかった。
「私が慰謝料を支払う必要がない事実とは、関係がないように思われますが……」
「ほほう、随分と強気じゃないか……ジェシカ。いいだろう、私を敵に回せばどうなるか……その目でしっかりと見定めるが良い」
ブラックル様はそこまで言うと、足早に部屋から出て行った。話はまだ途中だったのだけれど、慰謝料請求を確実なものにする為に動き出したのかもしれない。
ブラックル様はもしかして、自分が大公という立場だからと言って、何でも出来ると思っているのかしら? 王族の配下になっている事実は変わらないのに。それに、彼はどうやら私の横の繋がりをあんまり知らないようだ。
慰謝料の請求なんて絶対にさせない……私は心の中でそう誓うのだった。
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