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1話 アーリアの婚約破棄 その1

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「さて、アーリア。用件はわかっているな?」

「こ、婚約破棄と聞きましたけれど……?」


 私ことアーリア・サローナ23歳は伯爵令嬢だ。最近になってようやく、侯爵令息のジルド・スヴェン様と婚約が決まった。23歳での初婚約というのは、貴族全体から見れば遅い方に該当すると思う。

 その、まあ色々あって、私は婚期を逃した形になっていた。平民で考えたら、23歳なんてまだまだ若いレベルだとは思うけど、貴族はそうもいかないみたい。


 で、同じく婚期が遅れていたジルド様……今年で27歳だっけ? 目の前のイケメンのお方と付き合うことができたんだけれど……現在は不穏な空気が漂ってしまっている。場所は私の屋敷の近くだ。


「その通りだ。私と別れてもらおうか」

「ど、どうしてですか……!?」


 話は事前に、彼の護衛から聞いていたけれど、改めて本人から言われるとびっくりしてしまう。政略結婚だけれど、決して相性が悪かったとは思えないんだけど……どちらも婚期が遅れている者同士なんだし。


「私は侯爵令嬢のミーティアと婚約をする予定だ。お前よりも7つも年下の美少女だ」


 うわ……婚期を逃している27歳が美少女とかいうと引いてしまうわ……。ていうか、ミーティア様はいいのかしら? 16歳と27歳だとそれなりの年齢差よね? 貴族間で年齢差はないも同然かもしれないけれど、ミーティアには選ぶ権利があると思う。


「それに……お前は貴族にしては、少々ガサツだ……私の隣には相応しくない……」


 ジルド様はうんざりしたような様子で私を見ていた。多分、そっちが本音なんでしょうね……確かに私はガサツ……ていうか、明るいっていうのは自覚しているけれど。こうやって、婚約者に面と向かって言われると傷ついてしまうわ……。


「ま、そういうことだ。お前は伯爵令嬢でしかないのだし、後から面倒を起こすなよ? わかったな?」

「ちょ……そんな一方的に……!!」


 私はジルド様を引き留めようとしたけれど、彼の足取りが変化することはなかった──。こうして、私は一方的な婚約破棄を言い渡されてしまったのだ……。


「えっ……なんなの、これ……婚約破棄って、こんなに簡単に決まって良いものなの……!?」


 私はあまりの理不尽振りに怒りが抑えきれない……でも、相手は侯爵令息だし。簡単に仕返しなんて出来るとは思えない……私はどうしたらいいのかわからなくなってしまっていた。


「お嬢様……僭越ながら、聞かせていただきました……」

「えっ? ミルザ……?」

「はい、ミルザにございます」


 怒りをどの方向に持って行けばいいのかわからない段階……その状態で現れたのは、私の屋敷の執事、ミルザ・アイロークだった──。
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