幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
1 / 60

1話 婚約者と婚約解消いたしました

「アーチェ、ニーナと君は本当に正反対の性格をしているね」

「ウォーレス? いきなりどうしたの?」


 婚約者であるウォーレス・ミリエーター伯爵令息は、急に私に話しかけて来た。いきなりのことだったので、私は少し戸惑っていた。ニーナがどうしたというのだろうか?

 ちなみにニーナというのは、私達の幼馴染だ。私達3人は幼馴染という関係でもあった。


「アーチェは明るくで活発なのが長所だけど、お淑やかさが足りていない。その点、ニーナはお淑やかで静かだ。貴族令嬢としては、ニーナを好きになる者は多いだろうね」

「なによそれ……まあ、分からなくはないけれど」


 ニーナ・オルスタイン伯爵令嬢は確かにお淑やかな美人。舞踏会でも毎回、他の貴族からダンスに誘われる程に人気がある。私もウォーレスと婚約する前まではダンスに誘われる時はあったけれど、ニーナ程ではなかったわね。


「ウォーレスは何が言いたいわけ?」

「私は婚約する相手を間違えたのかもしれないと思ってさ」

「なんですって……?」


 少しだけ聞き捨てならない言葉が、私の耳に届いて来た。冗談なのだとしても、かなり性質の悪い冗談だ。


「ウォーレス、聞き間違いではないわよね? 私との婚約が間違っていた、とも聞き取れるんだけれど……」

「そう言ったつもりだけど? 私はニーナと婚約をしておくべきだったと思うよ。君は明るくて美人ではあるけれど、私の趣味ではなかった……」

「ちょっと、何よいまさら……!」

 ウォーレスと婚約して3か月くらいが経過している。その間にも彼との仲は深まっていたと認識していたけれど、それはどうやら勘違いだったようだ。それにしても信じられない……ウォーレスがこんなことを言うなんて。

「そんなにニーナのことが好きなら、婚約解消でもしてみる?」

 半ば冗談と言うか、皮肉も交えて言った言葉だったけれど……ウォーレスは強く頷いていた。えっ、どういうこと……?

「ああ、それが良いと思うんだ。まさか、アーチェの方から言ってくれるとは思わなかったよ。非常に残念だけれど、婚約解消をしようか」

「……嘘でしょ?」

「嘘なんかじゃないさ、第一、君が今言ったんじゃないか」


 それは確かにそうだけれど、まさかこんなに簡単に承諾されるとは思っていなかった。ウォーレスの中では、私への愛情なんてとっくに消えていたのかしら……? もしもウォーレスが私と婚約解消をした場合、その後のことは簡単に予想が出来た。まだ、婚約者の居ないニーナに求婚するに決まっている。

「本当に残念だけれど……アーチェが婚約解消を望むなら、仕方がないね。私は君の想いを尊重することにするよ」

「ウォーレス……」

 話はどんどんと先に進んでいき、私とウォーレスの婚約解消は最早、避けられないところまで来てしまった。これは、ウォーレスが婚約解消を強く望んでいたことを意味する。

 こうして私は、幼馴染のウォーレスから捨てられることになってしまった。幼馴染なんて言えば聞こえは良いけれど、実際は他人同士と変わらない絆だったわけね。

 私の冗談を含めた言葉で婚約解消が成立してしまうなんて……とても想像出来なかったから。
感想 481

あなたにおすすめの小説

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢ミリーシャは、自身が誰からも必要とされていないことを悟った。 故に彼女は、家から出て行くことを決めた。新天地にて、ミリーシャは改めて人生をやり直そうと考えたのである。 しかし彼女の周囲の人々が、それを許さなかった。ミリーシャは気付いていなかったのだ。自身の存在の大きさを。

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

もう、今更です

もちもちほっぺ
恋愛
伯爵令嬢セリーヌ・ド・リヴィエールは、公爵家長男アラン・ド・モントレイユと婚約していたが、成長するにつれて彼の態度は冷たくなり、次第に孤独を感じるようになる。学園生活ではアランが王子フェリクスに付き従い、王子の「真実の愛」とされるリリア・エヴァレットを囲む騒動が広がり、セリーヌはさらに心を痛める。 やがて、リヴィエール伯爵家はアランの態度に業を煮やし、婚約解消を申し出る。

婚約破棄された公爵令嬢は、もう助けません

エスビ
恋愛
「君との婚約は破棄する。――君は、もう必要ない」 王太子から一方的に突きつけられた婚約破棄。 その理由は、新たに寵愛する令嬢の存在と、「君は優秀すぎて扱いづらい」という身勝手な評価だった。 だが、公爵令嬢である彼女は泣かない。 怒りに任せて復讐もしない。 ただ静かに、こう告げる。 「承知しました。――もう、誰の答えも借りませんわ」 王国のために尽くし、判断を肩代わりし、失敗すら引き受けてきた日々。 だが婚約破棄を機に、彼女は“助けること”をやめる。 答えを与えない。 手を差し伸べない。 代わりに、考える機会と責任だけを返す。 戸惑い、転び、失敗しながらも、王国は少しずつ変わっていく。 依存をやめ、比較をやめ、他人の成功を羨まなくなったとき―― そこに生まれたのは、静かで確かな自立だった。 派手な断罪も、劇的な復讐もない。 けれどこれは、 「奪われたものを取り戻す物語」ではなく、 「もう取り戻す必要がなくなった物語」。 婚約破棄ざまぁの、その先へ。 知性と覚悟で未来を選び取る、静かな逆転譚。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。 彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。 しかし妾の子である妹を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。 だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。 父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。 そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。 程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。 彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。 戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。 彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるイルリアは、婚約者から婚約破棄された。 彼は、イルリアの妹が婚約破棄されたことに対してひどく心を痛めており、そんな彼女を救いたいと言っているのだ。 混乱するイルリアだったが、婚約者は妹と仲良くしている。 そんな二人に押し切られて、イルリアは引き下がらざるを得なかった。 当然イルリアは、婚約者と妹に対して腹を立てていた。 そんな彼女に声をかけてきたのは、公爵令息であるマグナードだった。 彼の助力を得ながら、イルリアは婚約者と妹に対する抗議を始めるのだった。 ※誤字脱字などの報告、本当にありがとうございます。いつも助かっています。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)