幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
19 / 60

19話 過去

(ニーナ視点)


「ニーナ、過去の話なんてどうでも良いわ。話を先に進めましょう」

「あら、アーチェ。よっぽど思い出したくない過去なのでしょうか? まあ、そうでしょうね」

「ニーナ……!」

 私の挑発にアーチェは明らかに取り出している……うふふ、楽しいわ。非常に滑稽とはこういうことを言うのかしら。ウォーレスはあまり現状を理解していないようだけれど、アーチェが私達に固執するようになったのは、やはりジョンの死が原因だったようね。

 あの事故は7年前くらいだったかしら? 正確な年数は不明だけれど。


「市民街の寂れた教会……」


 ノーム伯爵は小声で何かを言っていた。もしかしたら、気付いているのかもしれないわね。それなりに、大規模な倒壊事故だったから。当時、その寂れた教会はジョンとアーチェの遊び場になっていた。

 貴族がそんな場所に行くのはあまり誉められたことではない……ましてや、一般の子供と遊ぶなんて。ノーム伯爵がどのような考えを持っているのかは不明だけれど、当時の貴族の間ではそういった風習があった。

 その寂れた教会周辺は、差別の温床である最下層の住民が住んでいるスラム街でもあったから。余計に貴族を近づけるわけにはいかなかったのだろう。

「ノーム伯爵、スラム街にある寂れた教会のお話はご存知なのではないですか?」

「ええ、もちろん知っています。もう何年前になるかは覚えていませんが、屋根が倒壊し、死傷者が出たとか」

「そうですね……その死傷者というのが、アーチェの幼馴染の一人のジョンという少年でした。当時、アーチェはノーム伯爵に内緒でその教会に行っていたようですよ」

「なんと……そのようなことが……」


 ノーム伯爵はその事実をやはり知らなかったようね。かなり驚いているわ。同じく、アーチェの弟のフォルセも驚いているようね。このままでは、アーチェは私の元に戻ってこない……なんとかして、この家族の絆を破壊しなければ。

 もう一度、私に執着するように仕向けてあげる。うふふふ、そして私の手足として、一生こき使ってあげるんだから。


「ニーナ……あなたは一体、何が目的なの?」

「目的? 私の目的は一つしかありませんよ。先ほどから申し上げている通りです」


 察しの悪いアーチェは大嫌いだ。でも、そんなところが可愛くもある。変に成長されては、利用価値が消滅してしまうわね……なんとか、この子の考えを以前のように戻さないと。

 おそらくはこの過去話が最後のチャンスだ。私の方にも手札は残っていないのだし……。


「寂れた教会での話か……懐かしいな」


 そんな時、室内に入って来た人物が居た。この聞き覚えのある声は……。

「ね、ネプト国王陛下……!?」

「そんなに叫ばないでくれ、ニーナ嬢。耳が痛くなりそうだ」


 まさか国王陛下が、ただの伯爵家の屋敷に来ているなんて信じられなかった。パーティーの時にアーチェの傍に居たけれど、あれはあくまでも特別な場だったわけだし。

 確かネプト国王陛下もアーチェと幼馴染の関係にある……当時は王子殿下だったけれど。あの寂れた教会での件に詳しいのだとしたら、ジョンのことも知っているのかしら? 少しだけ雲行きが怪しくなってきたわ……。
感想 481

あなたにおすすめの小説

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。 しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。 夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。 危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。 「……いつも会いに来られなくてすまないな」 そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。 彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。 「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」 そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。 すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。 その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。

木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。 彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。 スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。 婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。 父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるイルリアは、婚約者から婚約破棄された。 彼は、イルリアの妹が婚約破棄されたことに対してひどく心を痛めており、そんな彼女を救いたいと言っているのだ。 混乱するイルリアだったが、婚約者は妹と仲良くしている。 そんな二人に押し切られて、イルリアは引き下がらざるを得なかった。 当然イルリアは、婚約者と妹に対して腹を立てていた。 そんな彼女に声をかけてきたのは、公爵令息であるマグナードだった。 彼の助力を得ながら、イルリアは婚約者と妹に対する抗議を始めるのだった。 ※誤字脱字などの報告、本当にありがとうございます。いつも助かっています。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望