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18話 アーチェの意思 その2
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「わかってくれたでしょう、ニーナ? 私の想いを、汲んでくれるわよね? 大切な幼馴染なんだから」
私はこの時、幼馴染と言う言葉を皮肉に使っていた。いつもはお淑やかな雰囲気を漂わせているニーナだけど、明らかに表情が変わっている。私の判断に怒っているのかしら?
「大切な幼馴染……アーチェ、どの口がそんなことを言うんです?」
「ニーナ?」
口調は戻っていたけれど、何かがおかしい……気のせいか目が据わっているようだし。
「アーチェ、大切な幼馴染なら私とウォーレスのことを許してくれるでしょう? それが普通だと思いますし、あなたはこれまでも、許してくれたじゃありませんか」
「それはそうかもしれないけれど、今は昔の話をしても意味がないわよ? 私は考えを変えたと言っているでしょう」
「考えを変えてもらっては困ります……私達ともう会わないなんて、ウォーレスだって困ってしまうでしょう?」
ニーナは一体、何が言いたいんだろうか……私の考えに納得してくれる様子もないし……。それどころか、ウォーレスにまで話をを振っている。
「そうだな、ニーナ。私としてもやはり、アーチェに会えなくなるのは寂しい」
「ウォーレス……?」
元婚約者からの言葉……どの口が言っているのかしら。
「ウォーレスも何を言っているの? おかしいわよ? 私とあなたの関係は特に、他人同士になるべき関係でしょう? 婚約解消をしたのだから……前のパーティーでもいきなり告白をしてきて、意味が分からなかったわ」
「ニーナを選んだのは事実だけど、君との婚約を解消したかったわけじゃないさ。残念だと言っていただろう?」
「……」
確かに婚約解消の前の会話で、残念だとは言っていたけれど……本当に残念なら、あんなに早く婚約解消はしないと思う。
「あなたとは話にならないわね、ウォーレス」
「アーチェ、いい加減やり直すことに同意してくれよ……お願いだから」
「同意なんてするわけないでしょう……? はあ……」
駄目だ、本当に話にならない……ニーナも納得していないようだけれど、ウォーレスもまだやり直したいとか言ってくるし。これは、強制的にお帰り願った方が良いかもしれないわね。おそらく、無言を貫いているお父様やフォルセも同意してくれるはずだし。
「アーチェ、あなた……ジョンが亡くなった時は、慰めてあげましたよね?」
「ちょ、ちょっと……ニーナ!」
「ジョン?」
急にニーナは話しの流れを変えて来た。お父様は怪訝そうに「ジョン」という言葉を反復している。
「アーチェ、あなたはまだ、市民街の寂れた教会には行っているのですか?」
「ちょ、ちょっと止めてよニーナ……! 今は関係ないでしょう?」
「姉さま……?」
マズイ……本当に今は関係ないのに、ニーナは私のことを揺さぶろうとしているのか。
お父様もフォルセも怪訝そうに私を見ていた。そうあれは、貴族街ではなく市民街での思い出……。当時、私にはジョンという知り合いが居た。身分は一般人であり、当時はお忍びで遊びに行っていたのだけれど。
そうか……思い返せば、あれが私を作り出した原点だったのかもしれない。
私はこの時、幼馴染と言う言葉を皮肉に使っていた。いつもはお淑やかな雰囲気を漂わせているニーナだけど、明らかに表情が変わっている。私の判断に怒っているのかしら?
「大切な幼馴染……アーチェ、どの口がそんなことを言うんです?」
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「アーチェ、大切な幼馴染なら私とウォーレスのことを許してくれるでしょう? それが普通だと思いますし、あなたはこれまでも、許してくれたじゃありませんか」
「それはそうかもしれないけれど、今は昔の話をしても意味がないわよ? 私は考えを変えたと言っているでしょう」
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ニーナは一体、何が言いたいんだろうか……私の考えに納得してくれる様子もないし……。それどころか、ウォーレスにまで話をを振っている。
「そうだな、ニーナ。私としてもやはり、アーチェに会えなくなるのは寂しい」
「ウォーレス……?」
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「ウォーレスも何を言っているの? おかしいわよ? 私とあなたの関係は特に、他人同士になるべき関係でしょう? 婚約解消をしたのだから……前のパーティーでもいきなり告白をしてきて、意味が分からなかったわ」
「ニーナを選んだのは事実だけど、君との婚約を解消したかったわけじゃないさ。残念だと言っていただろう?」
「……」
確かに婚約解消の前の会話で、残念だとは言っていたけれど……本当に残念なら、あんなに早く婚約解消はしないと思う。
「あなたとは話にならないわね、ウォーレス」
「アーチェ、いい加減やり直すことに同意してくれよ……お願いだから」
「同意なんてするわけないでしょう……? はあ……」
駄目だ、本当に話にならない……ニーナも納得していないようだけれど、ウォーレスもまだやり直したいとか言ってくるし。これは、強制的にお帰り願った方が良いかもしれないわね。おそらく、無言を貫いているお父様やフォルセも同意してくれるはずだし。
「アーチェ、あなた……ジョンが亡くなった時は、慰めてあげましたよね?」
「ちょ、ちょっと……ニーナ!」
「ジョン?」
急にニーナは話しの流れを変えて来た。お父様は怪訝そうに「ジョン」という言葉を反復している。
「アーチェ、あなたはまだ、市民街の寂れた教会には行っているのですか?」
「ちょ、ちょっと止めてよニーナ……! 今は関係ないでしょう?」
「姉さま……?」
マズイ……本当に今は関係ないのに、ニーナは私のことを揺さぶろうとしているのか。
お父様もフォルセも怪訝そうに私を見ていた。そうあれは、貴族街ではなく市民街での思い出……。当時、私にはジョンという知り合いが居た。身分は一般人であり、当時はお忍びで遊びに行っていたのだけれど。
そうか……思い返せば、あれが私を作り出した原点だったのかもしれない。
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