幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
17 / 60

17話 アーチェの意思 その1

しおりを挟む
 ニーナの話とお父様の言葉……それらを鑑みて、私はこのままじゃいけない気がしてきた。

 私の拒絶めいた言葉には驚いているようだ。


「アーチェ……一体、何を言っているんですか? 私達は昔から幼馴染として生活してきたじゃないですか。さっきも言ったけれど、色々と楽しい思い出だってあるし……いきなり、悲しいこと言わないで欲しいです……」

 ニーナは悲しそうな表情を見せているけれど……何かがおかしい。

「ウォーレスもそう思いますよね?」

「あ、ああ……! 勿論だよ! 私だってアーチェとはもう一度、婚約したいと思っているんだし……!」

「……」


 お父様も弟のフォルセは、敢えてなのか何も言わない……もしかしたら、私が現時点でどのように考えているのかの表明を待っているのかもしれない。ここは正念場ね……。

 冷静になって見てみると……ウォーレスは完全にニーナに操られているように見える。ニーナの言葉には善悪の区別をすることなく同意する傾向にあるようだ。

 それで、ニーナはというと……。


「ニーナ……私は幼馴染という関係に固執し過ぎていたと思うわ。今更になって気付くいうのは遅すぎるけれど、私の成長の糧として受け入れて欲しいの。親友なら……頷いてくれるわよね?」

「ちょ、ちょっと待ってくださいアーチェ。幼馴染の関係性に固執するのがどうして悪いんですか? 以前はあなたとウォーレスが婚約していましたし、現在は私が婚約しています。幼馴染同士……伯爵家同士の関係が強まるのは貴族社会にとって喜ばしいことでしょう?」

「それは……」


 ニーナの言っていることは、深く考えなければ正しいようにも思える。私とウォーレスとニーナ……3人が一緒になって各々の伯爵家の力を強めると考えれば悪くないのかもしれない。でも、ニーナは肝心なことを言っていない。おそらくは論点をずらして、私を納得させようとしているのだろうけど……。

 お父様やフォルセのブレない意思に後押しされて、私は成長出来ていると実感できる。

「アーチェ姉さま、ご自分の考えを述べる時期かと思われます。現在の思いをしっかりと……」

「そうね……ありがとうフォルセ」

「しっかりと自分の思いを伝える時だ、アーチェ」

「はい、お父様……」

 お父様はともかくとして、弟であるフォルセに学ばされるのは、ちょっとだけ反省した方が良いかもしれないけれど……まあ、その辺りは今は考えないようにしておこう。私は良い家族を持ったということで。


「ニーナ、論点のすり替えが過ぎるわ。先ほども言ったけれど、私は考えを変えたの……もう、幼馴染という関係性には固執しない。そもそも、ニーナの方が好きだと言っていたウォーレスだし、それが原因で婚約解消になった。その時点で通常の幼馴染という関係は崩れ去っていたのよ。今までの私が固執していただけで……」

「ちょっと待ってください、アーチェ……。私はウォーレスがフリーになった時に婚約をしただけで……直接的には関係ありませんよ?」

「それ何回も言っているけれど、私のことを親友と言うなら、婚約解消の直後にウォーレスと婚約なんてしないでしょう? まず、責任逃れをしている時点でおかしいし……」

 ニーナの言っていることは事実ではあるけれど、私の心情を考えてくれているのであれば、婚約を断るか、最低でも事前の相談はするはずだ。その辺りの考えに至らなかったなんて……私は本当に幼馴染という呪縛に取りつかれて、物事の視野が極端に狭くなっていたのだと思う。

 はあ……お父様やフォルセ達には本当に迷惑を掛けてしまったわ。


「アーチェ……本当に言っているの、それ?」

「ニーナ……ええ、本当よ。私はウォーレスとニーナとは今後、しばらく会うつもりはないわ。いいえ、出来れば他人の関係になって欲しいわね。あなた達は私の知らないところで幸せになってね、陰ながら応援はしているわ」

「……」


 ニーナはめずらしく、敬語ではなくなっていた。表情としては普通だったけれど、彼女の心の中は相当に焦っているのかもしれない。これで納得してくれれば良いんだけれど……。
しおりを挟む
感想 481

あなたにおすすめの小説

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

地味でつまらない私は、殿下の婚約者として相応しくなかったのではありませんか?

木山楽斗
恋愛
「君のような地味でつまらない女は僕には相応しくない」 侯爵令嬢イルセアは、婚約者である第三王子からある日そう言われて婚約破棄された。 彼は貴族には華やかさが重要であると考えており、イルセアとは正反対の派手な令嬢を婚約者として迎えることを、独断で決めたのである。 そんな彼の行動を愚かと思いながらも、イルセアは変わる必要があるとも考えていた。 第三王子の批判は真っ当なものではないと理解しながらも、一理あるものだと彼女は感じていたのである。 そこでイルセアは、兄の婚約者の手を借りて派手過ぎない程に自らを着飾った。 そして彼女は、婚約破棄されたことによって自身に降りかかってきた悪評などを覆すためにも、とある舞踏会に臨んだのだ。 その舞踏会において、イルセアは第三王子と再会することになった。 彼はイルセアのことを誰であるか知らずに、初対面として声をかけてきたのである。 意気揚々と口説いてくる第三王子に対して、イルセアは言葉を返した。 「地味でつまらない私は、殿下の婚約者として相応しくなかったのではありませんか?」と。

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

夏芽みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

処理中です...