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21話 ネプトとアーチェ その2
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「ネプト国王陛下……どういうことでしょうか? お伺いしてもよろしいですか?」
私は意味が分かっていない……でも、もしかすると、私にとって嬉しい言葉が返ってくるかもしれない。そんな期待を持ちながら、私はネプト国王陛下に話しかけた。
「そうだな……簡単に言ってしまえば、ジョンという人物は存在しない」
「は、はい……それは分かっております……」
あの時の屋根の崩落で死亡してしまったのだから……それは間違いない。
「存在しないというのは、死んでいるからという意味ではないぞ? ジョンは私の変装だったからな」
「えっ……?」
「そういう意味で存在しないということだ」
「ネプト様が……ジョン……?」
あり得ない……いえ、あり得ないという程ではないのかもしれないけれど。スラム街や寂れた教会は、当時の貴族や王族の中では用もなく近づいてはならない、差別の掃き溜めと場所として認知されていたはずだし……。
「私も当時は小さかったが、国家の今後……見聞を広める意味合いで、あの場所を何度か訪れていたのだ。もちろん、変装はしていたがな」
「そ、そうだったのですか……?」
「ああ」
そっか……お互い、お忍びで出会ったということか。まあ、すごい偶然だけれど、それならその後に初めてネプト様と知り合った時に、彼が私のことを知っているかのようだったことと辻褄が合う。
「スラム街の差別問題は、王国の今後の為に改善が急務だったのだ。その時に君と知り合い……私の方は調査の末に、君がお忍び出来ていることが分かったわけだが。」
「そ、そうだったのですね……」
正体はバレていたのね……そう考えると、なんだか恥ずかしいわ。
「そ、そんな……! では、なぜジョンという少年が死亡したという事実が出て来るのですか!? 矛盾しています!」
ニーナはネプト国王陛下がジョンだと非常に困るのか、とても焦っているようだった。彼女にしてはめずらしいわね……そんなに困るのかしら。
「そんなに困りますかね? 父上」
「そうだな……非常に驚いたのは事実だが。ニーナ嬢にとっては困るのだろうな」
お父様やフォルセも皮肉を交えて話している。ただ、ジョンは死亡してるはず……それなのに、ネプト国王陛下がその当人だった場合、矛盾しているのは確かだ。
「ネプト様……どういうことなのでしょうか?」
「うむ、そのことに関しては謝罪しなければならない。あの屋根の崩落……私は巻き込まれたのは事実だ。ただ、致命傷を負ったわけではなかった」
巻き込まれたのは事実だったのね……じゃあ、なぜ死亡したという事実になっているのかしら? ネプト国王陛下の話はまだ続きそうだった。
私は意味が分かっていない……でも、もしかすると、私にとって嬉しい言葉が返ってくるかもしれない。そんな期待を持ちながら、私はネプト国王陛下に話しかけた。
「そうだな……簡単に言ってしまえば、ジョンという人物は存在しない」
「は、はい……それは分かっております……」
あの時の屋根の崩落で死亡してしまったのだから……それは間違いない。
「存在しないというのは、死んでいるからという意味ではないぞ? ジョンは私の変装だったからな」
「えっ……?」
「そういう意味で存在しないということだ」
「ネプト様が……ジョン……?」
あり得ない……いえ、あり得ないという程ではないのかもしれないけれど。スラム街や寂れた教会は、当時の貴族や王族の中では用もなく近づいてはならない、差別の掃き溜めと場所として認知されていたはずだし……。
「私も当時は小さかったが、国家の今後……見聞を広める意味合いで、あの場所を何度か訪れていたのだ。もちろん、変装はしていたがな」
「そ、そうだったのですか……?」
「ああ」
そっか……お互い、お忍びで出会ったということか。まあ、すごい偶然だけれど、それならその後に初めてネプト様と知り合った時に、彼が私のことを知っているかのようだったことと辻褄が合う。
「スラム街の差別問題は、王国の今後の為に改善が急務だったのだ。その時に君と知り合い……私の方は調査の末に、君がお忍び出来ていることが分かったわけだが。」
「そ、そうだったのですね……」
正体はバレていたのね……そう考えると、なんだか恥ずかしいわ。
「そ、そんな……! では、なぜジョンという少年が死亡したという事実が出て来るのですか!? 矛盾しています!」
ニーナはネプト国王陛下がジョンだと非常に困るのか、とても焦っているようだった。彼女にしてはめずらしいわね……そんなに困るのかしら。
「そんなに困りますかね? 父上」
「そうだな……非常に驚いたのは事実だが。ニーナ嬢にとっては困るのだろうな」
お父様やフォルセも皮肉を交えて話している。ただ、ジョンは死亡してるはず……それなのに、ネプト国王陛下がその当人だった場合、矛盾しているのは確かだ。
「ネプト様……どういうことなのでしょうか?」
「うむ、そのことに関しては謝罪しなければならない。あの屋根の崩落……私は巻き込まれたのは事実だ。ただ、致命傷を負ったわけではなかった」
巻き込まれたのは事実だったのね……じゃあ、なぜ死亡したという事実になっているのかしら? ネプト国王陛下の話はまだ続きそうだった。
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