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39話 見えてくるモノ その2
しおりを挟む「私はスザンヌ様……」
「ええ、アーチェ。なにかしら?」
ネプト様の側室になることで見えてくるモノ……それは決して幸せな生活だけではないだろう。病める時も健やかなる時も愛する人と共に、という状況はネプト様だけに限る話ではない。そういう誰と一緒になっても当てはまる部分の話ではなくて……私がネプト様を敢えて選ぶ理由だ。
「ネプト様を愛しています……初恋のお相手ですので。ネプト様からの告白がなければ、あるいはそういう想いは封印していたのかもしれませんが」
ウォーレスとニーナに断罪をしたあの日、ネプト様は私を側室として迎え入れたいと言って来た。タイミングを考えればおかしなタイミングだけれど、彼なりの考えがあったのかもしれない。
「そう……それではあなたは、ネプトの告白を受け入れ、王家に入る覚悟があるということね?」
「左様でございます、スザンヌ様。私は現段階で、ネプト様のお話をお受けしようと考えております」
「分かったわ、アーチェ。あなたのその言葉が聞けただけでも、ここへ来た甲斐があったわね」
「ありがとうございます、スザンヌ様」
「お礼は必要ないわ。ただし、まだ確定というわけではないでしょうから、ご家族ともしっかりと話し合うようにね。後悔のない選択を……」
「はい、畏まりました」
スザンヌ様は私のことをとても心配してくれているのだろうか。彼女の心の中もおそらく、とても複雑なのだと思う。私とスザンヌ様の話はそこまでで終了となった。またこういった話し合いの場が設けられるかもしれないけれど、それは私が答えを出した後になるだろう。
私は答えを出す期日までに行わなければならないことが、たくさんあるからだ。
-------------------------
「アーチェ姉さま、少し宜しいでしょうか?」
「フォルセ、どうかしたの?」
スザンヌ様がお帰りになってしばらくした時、私の部屋に弟のフォルセがやって来た。タイミング的にも内容はすぐに分かるけれど、念のために聞いてみる。
「用件は何かしら?」
「姉さま……このように言うと失礼かもしれませんが、私はネプト国王陛下の考えが分かりません。なぜ、あのタイミングで姉さまに告白をしたのか……。いえ、それ以前に自分がジョンであることを明かした理由も不明です」
「それは……」
「私にはアーチェ姉さまへの告白を成功させやすくする為に、自らがジョンであったと明かしたとしか考えられないのですが」
「それはそうかもしれないけれど……」
フォルセの言っていることは確かに一理ある。別にネプト様を疑うわけではないけれど、確かに私への告白を成功させやすくする狙いはあったのかもしれない。でも、ニーナ達との話を上手く断罪に進める為には真実を語る必要があったわけだし、ネプト様がジョンであったことを明かしたのは偶然の産物だと思う。
「フォルセは私がネプト様の側室になるのに反対なの?」
「はい、姉さま。私は反対です……姉さまにはもっと、穏やかで健やかな日々を送れる権利があると思いますので」
フォルセの視線は真剣で真っすぐだ……まさに正論を突きつけられているような気がする。私はどうしたら良いのだろうか……? 一度、フォルセと共にネプト様に会ってみるのも良いかもしれない。あの寂れた教会で……。
国王陛下に予定の調整をしてもらうのは、とても失礼かもしれないけれど、今回の件については仕方ないだろう。
ネプト様もおそらく、納得してくれるでしょうし。
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