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1話 幼馴染からの婚約破棄
しおりを挟む「リドル……一体、どういうこと?」
「申し訳ないがメイサ。私とは別れて欲しい。婚約破棄というやつだな」
「そ、そんな……! どうして急にそんなことを……!?」
私はリドルが言った言葉の意味を理解出来なかった。いや、理解したくなかったというのが本音だろうか。彼は私の婚約者のリドル・ガレッジ侯爵。20歳という若さで侯爵の地位に就いた人物だ。そして……私の幼馴染でもある。
「リドル……何かの冗談よね? 貴方がそんなことを言いだすなんて」
私とリドルの婚約は1年程、続いている。その中で彼の本性を知ったことは何度かあった。浮気癖が強いとかそういったことだ。まあ、この辺りの噂は以前から聞いていたけれど。それでも私は幼馴染である彼との婚約を喜んだのだ。
でも……。
「幼馴染なんていう言葉で締めないで欲しいな。幼馴染がどうかしたのか? 単に昔から知っている者同士なだけだろ? 現に君は私の知らないことも多かったはずだ」
「そ、そうね……それは確かに」
「幼馴染なんていうのはそんなものさ。家族でも何でもないんだ」
「それはそうかもしれないけれど……」
リドルの言葉が信じられない。婚約破棄を言い渡しているというのに、謝罪する気が一切ない気がするのだ。
「でも、どうして……!? どうして婚約破棄なの!?」
「教える義理はないが、公爵令嬢のフィーナ・アランカステル嬢と婚約することにしたからだよ」
「フィーナ・アランカステル嬢……?」
伯爵令嬢でしかない私よりも、かなり地位の高い令嬢だ。そんな人との婚約を考えている?
「伯爵令嬢でしかない君よりも、彼女と婚約する方が何かと利点が大きいからね」
「利点って……」
「アランカステル家が行っている事業に出資することで、我が領地の利益が莫大になるんだよ。それに、彼女は美人だしな」
確かにフィーナ嬢は美人だけれど……少なくとも私よりも。
「というわけで、私はフィーナと婚約するんだ。だから、君……じゃなかった、お前とはもう婚約破棄だ。出て行って貰えるか?」
「リドル……」
明らかに彼の態度が変わったような気がする。信じられない……これは。
「これからは、リドルなんて呼び捨ては止めてくれよ? 私は侯爵でお前は伯爵令嬢でしかないんだからな。せめて、リドル様と呼んでくれ」
「……」
今まで呼び方で注意されたことは一度もなかったのに……この変貌ぶりは異常と言えるかもしれない。こんなことがあって良いのだろうか? これがリドルの本性なんだろうか……本当に信じられないけれど。
その後、私は彼の付き人に連れて行かれる形で、屋敷の入り口まで運ばれた。なんだか全てが終わった気がする……こんなに簡単に婚約破棄が成立してしまうなんて。
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