2 / 7
2話 もう一人の幼馴染 その1
しおりを挟むリドルとの婚約破棄はトントン拍子に進んだ。まさか悪い意味でスムーズに行くとは思っていなかったけれど。お父様達の反論もリドルはほとんど耳を貸さなかった形だ。
まさに侯爵の権力にモノを言わせた力技だったわね……まったく。
「済まなかった、メイサ。希望に添う形にはならなかったよ……」
「本当にごめんなさいね……」
お父様、お母様は力なく話していた。とんでもない話だ、二人は精一杯やってくれたと思う。
「お父様、お母様。私は気にしていませんので、大丈夫です。それどころか、私の為に反論していただいてありがとうございました」
「メイサ……済まない」
婚約破棄を取り消すことは出来なかった。これ以上、反論してしまうと、何らかの反撃が来るかもしれない。私にとっては十分だった。
「私のことは気にしないでください。お父様、お母様、ありがとうございました」
私は満面の笑みを浮かべて二人にお礼を言った。
私は既にリドルの本性を知っている……婚約破棄が無くなるのは正直、良いことではなかった。彼とは二度と会いたいと思わなかったから……。
--------------------
それからしばらくの時間が経過した。お父様達のその後の要求によって、慰謝料請求だけは通った。リドルはかなり渋ったらしいけれど、これは凄いことだと思う。いえ、婚約破棄をしたら慰謝料を支払うのは当然なんだけれどね……。
お父様とお母様は本当に私の為に頑張ってくれたと思う。私は結局、トラウマになろそうだったので、リドル様には会わなかったから……。
「お父様達には悪いことをしてしまったわ、本当に……はあ」
「そんなことはありません、メイサ様。慰謝料請求には相手方は応じたと聞いておりますが?」
「凄いじゃないですか! そんな身勝手なことをするリドル様から、慰謝料を徴収するなんて」
「まあ、そうなんだけれどね……そんなことをさせてしまう、不肖な娘なのが情けないわ」
私はメイドのネネと話をしていた。彼女は私と同じ18歳のメイドだ。彼女はこの屋敷に入って8年が経過しているので、幼馴染という関係性である。はあ……リドルと同じ意味合いの幼馴染だとは思えないわ。私のことを築かってくれるし。
幼馴染……私はそんな存在に少し、夢見ていたのかもしれないわね。
「メイサ、入るぞ」
「ボルク兄さま……どうかなさいましたか?」
ノック音と共に入って来たのは、私の兄であるボルク・ノートンだった。ノートン伯爵家の次期当主になる。
「兄さん、どうかしたの?」
「実は連絡があってな……至急、メイサに話があるんだ」
「連絡? 誰から?」
「お前の幼馴染のクラウド・マーベラス公爵だよ。今から来るらしいぞ」
「え、ええ~~~!? クラウドが……!?」
私は驚きの余り、雄叫びを上げてしまった。クラウドはリドルと同じ私の幼馴染になるけれど……まさか、このタイミングで来るなんて。偶然、じゃないわよね……。
0
あなたにおすすめの小説
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
殿下はご存じないのでしょうか?
7
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」
学園の卒業パーティーに、突如婚約破棄を言い渡されてしまった公爵令嬢、イディア・ディエンバラ。
婚約破棄の理由を聞くと、他に愛する女性ができたという。
その女性がどなたか尋ねると、第二殿下はある女性に愛の告白をする。
殿下はご存じないのでしょうか?
その方は――。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
婚約破棄は喜んで
nanahi
恋愛
「お前はもう美しくない。婚約破棄だ」
他の女を愛するあなたは私にそう言い放った。あなたの国を守るため、聖なる力を搾り取られ、みじめに痩せ細った私に。
え!いいんですか?喜んで私は去ります。子爵令嬢さん、厄災の件、あとはよろしく。
【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます
衿乃 光希
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。
婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。
シェリーヌは16年過ごした国を出る。
生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。
第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。
第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。恋愛小説大賞は51位で終了しました。皆さま、投票ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる