元婚約者は騙されていたようだけれど、自業自得なので知りません

ルイス

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2話 もう一人の幼馴染 その1

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 リドルとの婚約破棄はトントン拍子に進んだ。まさか悪い意味でスムーズに行くとは思っていなかったけれど。お父様達の反論もリドルはほとんど耳を貸さなかった形だ。

 まさに侯爵の権力にモノを言わせた力技だったわね……まったく。


「済まなかった、メイサ。希望に添う形にはならなかったよ……」

「本当にごめんなさいね……」


 お父様、お母様は力なく話していた。とんでもない話だ、二人は精一杯やってくれたと思う。

「お父様、お母様。私は気にしていませんので、大丈夫です。それどころか、私の為に反論していただいてありがとうございました」

「メイサ……済まない」


 婚約破棄を取り消すことは出来なかった。これ以上、反論してしまうと、何らかの反撃が来るかもしれない。私にとっては十分だった。


「私のことは気にしないでください。お父様、お母様、ありがとうございました」


 私は満面の笑みを浮かべて二人にお礼を言った。

 私は既にリドルの本性を知っている……婚約破棄が無くなるのは正直、良いことではなかった。彼とは二度と会いたいと思わなかったから……。


--------------------


 それからしばらくの時間が経過した。お父様達のその後の要求によって、慰謝料請求だけは通った。リドルはかなり渋ったらしいけれど、これは凄いことだと思う。いえ、婚約破棄をしたら慰謝料を支払うのは当然なんだけれどね……。

 お父様とお母様は本当に私の為に頑張ってくれたと思う。私は結局、トラウマになろそうだったので、リドル様には会わなかったから……。


「お父様達には悪いことをしてしまったわ、本当に……はあ」

「そんなことはありません、メイサ様。慰謝料請求には相手方は応じたと聞いておりますが?」

「凄いじゃないですか! そんな身勝手なことをするリドル様から、慰謝料を徴収するなんて」

「まあ、そうなんだけれどね……そんなことをさせてしまう、不肖な娘なのが情けないわ」


 私はメイドのネネと話をしていた。彼女は私と同じ18歳のメイドだ。彼女はこの屋敷に入って8年が経過しているので、幼馴染という関係性である。はあ……リドルと同じ意味合いの幼馴染だとは思えないわ。私のことを築かってくれるし。

 幼馴染……私はそんな存在に少し、夢見ていたのかもしれないわね。

「メイサ、入るぞ」

「ボルク兄さま……どうかなさいましたか?」


 ノック音と共に入って来たのは、私の兄であるボルク・ノートンだった。ノートン伯爵家の次期当主になる。


「兄さん、どうかしたの?」

「実は連絡があってな……至急、メイサに話があるんだ」

「連絡? 誰から?」

「お前の幼馴染のクラウド・マーベラス公爵だよ。今から来るらしいぞ」

「え、ええ~~~!? クラウドが……!?」


 私は驚きの余り、雄叫びを上げてしまった。クラウドはリドルと同じ私の幼馴染になるけれど……まさか、このタイミングで来るなんて。偶然、じゃないわよね……。
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