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5話 細やかな望み
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私達はパーティー会場から抜け、隅の方へと移動した。誰にも聞かれない位置へ。
「実は……お父様は私が婚約破棄されたことを知ると物凄く怒ったのよ。私に」
「怒った? クロース殿が? なぜ、シャーリーが大変な目に遭って怒るんだ? アクウィル殿に怒ったわけではないのだろう?」
「そうね、ベルン伯爵家の名前に泥を塗ったとか何とか言っていたわ」
「そんな無茶苦茶な……」
こうしてリオンに説明すると、本当におかしなことだと分かってしまう。お父様のお役に立てなかったことを、悔いていたけれど、かなり理不尽なことではないかしら? お父様の態度はアクウィル様の無慈悲な婚約破棄と変わらないような。
「こうして話していると……確かに無茶苦茶ね……改めて思えて来たわ」
「そうだな。明らかに理不尽な振る舞いだぞ、クロース殿は。自分の娘が大変な目に遭っているのに、婚約破棄された事実を取り出して叱責するなんて、本来ではあり得ない。そんな父親は失格だろう」
リオンは物凄くハッキリと言っている。でも、彼の判断は一般的にはおそらく正しい。貴族なのだから、少しは政治的な交渉道具として見るのは分かるけれど、あそこまであからさまな態度を取るのはどうかしていると言えるだろうか。
「リオンは私の味方になってくれるの?」
「当たり前だろ? 心配するなシャーリー。クロース殿がそんな態度を取ったとしても、私は絶対に君を裏切ったりしないからな」
「ありがとう、リオン」
リオンの言葉は私にとても勇気をくれた。味方になってくれる人が1人いるだけでも、全然世界が違って見えるものなのね……。私は彼の言葉が本当に嬉しかった。なんていうか……彼に惹かれそうだわ。
ああ……でも駄目ね。いきなりそんなことを言ったら軽い女に見られそうだし。
「さて、シャーリーはこれからどうしたいんだ?」
「そうね、私は……」
これから何をしたいんだろうか? 特にやりたいことは浮かんで来なかった。ただ、リオンとはこのまま話していたい。
「私はリオンと話がしたいわ。今日は一緒に居てもいいかしら?」
「そんなことならお安い御用さ。また、連絡を取ってくれれば別の日もなるべく空けておくよ」
「ありがとう、リオン」
何か大きな進展があるわけではないけれど、彼という味方の存在を確認することが出来た。あとはなるべくリオンと一緒に居る時間を作りたい……それが私の細やかな望みだ。
「実は……お父様は私が婚約破棄されたことを知ると物凄く怒ったのよ。私に」
「怒った? クロース殿が? なぜ、シャーリーが大変な目に遭って怒るんだ? アクウィル殿に怒ったわけではないのだろう?」
「そうね、ベルン伯爵家の名前に泥を塗ったとか何とか言っていたわ」
「そんな無茶苦茶な……」
こうしてリオンに説明すると、本当におかしなことだと分かってしまう。お父様のお役に立てなかったことを、悔いていたけれど、かなり理不尽なことではないかしら? お父様の態度はアクウィル様の無慈悲な婚約破棄と変わらないような。
「こうして話していると……確かに無茶苦茶ね……改めて思えて来たわ」
「そうだな。明らかに理不尽な振る舞いだぞ、クロース殿は。自分の娘が大変な目に遭っているのに、婚約破棄された事実を取り出して叱責するなんて、本来ではあり得ない。そんな父親は失格だろう」
リオンは物凄くハッキリと言っている。でも、彼の判断は一般的にはおそらく正しい。貴族なのだから、少しは政治的な交渉道具として見るのは分かるけれど、あそこまであからさまな態度を取るのはどうかしていると言えるだろうか。
「リオンは私の味方になってくれるの?」
「当たり前だろ? 心配するなシャーリー。クロース殿がそんな態度を取ったとしても、私は絶対に君を裏切ったりしないからな」
「ありがとう、リオン」
リオンの言葉は私にとても勇気をくれた。味方になってくれる人が1人いるだけでも、全然世界が違って見えるものなのね……。私は彼の言葉が本当に嬉しかった。なんていうか……彼に惹かれそうだわ。
ああ……でも駄目ね。いきなりそんなことを言ったら軽い女に見られそうだし。
「さて、シャーリーはこれからどうしたいんだ?」
「そうね、私は……」
これから何をしたいんだろうか? 特にやりたいことは浮かんで来なかった。ただ、リオンとはこのまま話していたい。
「私はリオンと話がしたいわ。今日は一緒に居てもいいかしら?」
「そんなことならお安い御用さ。また、連絡を取ってくれれば別の日もなるべく空けておくよ」
「ありがとう、リオン」
何か大きな進展があるわけではないけれど、彼という味方の存在を確認することが出来た。あとはなるべくリオンと一緒に居る時間を作りたい……それが私の細やかな望みだ。
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