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7話 カール様の隣に その2
しおりを挟む「それではな、マドレーヌ。また近い内に会うとしよう」
「はい、カール様。お気をつけて、お帰りくださいませ」
私とシャルは馬車でお帰りになるカール様を玄関先でお見送りしていた。私のお父様も一緒にお見送りをしている。
「リグド伯爵も、またお会いしましょう」
「勿体ないお言葉でございます、カール王子殿下。このリグド・ミュラー、いつでもお待ち申し上げておりますので……以前のように、いつでもお越しくださいませ」
「こちらこそ勿体ないお言葉、感謝する。それではな」
御者の乗る馬車に入り、カール様は護衛のジトル様と一緒に帰って行った。お父様は彼が見えなくなるまで、頭を下げていた。
「お父様からすれば、カール様も息子のような存在……ですか?」
私は先ほどの二人の会話からそのように察知した。立場が大きく違えど、私と幼馴染の存在であるカール王子殿下。当然、幼少の頃を知っているお父様にとっては、カール様を息子のように感じているのかもしれない。
「間違ってはいないな、マドレーヌ。私がカール第一王子のことを息子のように思うなど、失礼なことではあるが……感情とは、そんなに容易い物でもないしな」
お父様は私の質問に肯定しながら、どこか遠くの景色を見つめていた。時刻は夕暮れ時……太陽も沈みかけており、空全体が暗闇に包まれかけていた。
「私としては、マドレーヌ……お前の隣には、カール様が居てほしかった。カール様とであれば、確実にマドレーヌも幸せになるだろうからな……」
「お父様……」
そこに現れたのは矛盾という一言……おそらく、お父様自身も感じているはず。ドルイド公爵との婚約が決定したとき、誰よりも喜んでいたのはお父様だった。あの時のお父様も、私の幸せを願ってくれていたんだと思う。ドルイド公爵との婚約が解消されなければ、私はそのまま彼と結婚していただろうし。
でも、恋愛的な意味を考えた場合、お父様はカール王子殿下と一緒になるのがベストだと考えているのだと思う。私が当時から、カール様のことが好きだったことは、お父様も知っていただろうから。だから、この段階で、さっきの言葉が出来たののでしょうね……。
私は近々、婚約破棄をした相手であるドルイド公爵と会うことになっている。隣にはカール様が居り、そんな彼の婚約相手という建前で……。
でもそれは、その場限りの方便でしかない……。
「いや……」
「マドレーヌ様、どうかいたしましたか?」
「いいえ、なんでもないわ、シャル」
相手は第一王子様……たかが、伯爵令嬢の私が婚約できる立場ではない……。
でも、それでも私は彼に対する想いが成就してほしいと思っていた。嘘とはいえ、ドルイド公爵の前で婚約者の振りをする……こんなチャンスは二度と訪れないだろうから。ここまでカール様に近づいてしまうと、欲求が強くなってしまう……形だけではない、本物が欲しいと……。
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