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12話 王国側の危機 その1 【視点混在】
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【グレス王子殿下視点】
「グレス王子殿下」
「なんだ?」
私が私室でコーヒーブレイクを楽しんでいた時、執事の一人が私に声を掛けて来た。
「はい、アルガス第二王子様が面会を希望されていらっしゃいますが……如何いたしましょうか?」
アルガスか……父上の側室の息子。私とは腹違いの兄弟ということになる。アルガスが次期国王の最有力と唱える者達も居るらしく、忌々しい存在ではあるが……。仕方がない、会わないわけにもいかないからな。
「まあいい、通せ」
「畏まりました」
執事はそう言って、私の部屋の扉を開けた。中に入って来たのは当然、アルガス本人だが……なにやら、様子がおかしいな。
「兄上! 話は聞いているだろうかっ!?」
血相を変えて入って来るアルガス。一体、なんだというのだ?
「どうしたんだ、一体? 王族たる者、常に冷静沈着でなくてはならんぞ」
「も、申し訳ない……!」
まったくこの慌てぶりでは、国王という大役などとてもこなせるとは思えないがな。
「実は、バロウィンが動き出したという情報が入っている!」
「バロウィンだと……?」
プラティーン王国最大勢力の裏組織……それが動き出した、ということは……。
「狙いは父上、か?」
「その可能性が高いと思われるが、父上はフェイクの可能性もある。とにかく、オボンヌ宮殿周辺を初めとして、各地の警備を厳重にしなければ……!」
確かにそうだな。敵の狙いが必ずしも父上だけとは限らん。私やアルガスの可能性もあれば、他の貴族達が標的になるかもしれん。貴族街を含め、各要所の警戒レベルを最大にしておくか。
「各地点への伝達は早急に手配しておこう」
「た、助かる。しかし……」
「どうした?」
「本当に良かったのか、兄上? 彼女を……ミシディアを解雇してしまって……」
アルガスは弱々しくそう言った。この弟は確か、ミシディアのことを好いていなかったか? ミシディアが在籍していた1年近くの間、率先して同行していたように思えるしな。
「アンネ公爵令嬢とリーア伯爵令嬢という、強力な聖女が居ることは伝えているだろう? 何も問題はない」
「それならいいのだが……」
それでも、アルガスの表情は曇ったままだった。既にオボンヌ宮殿全体と貴族街周辺ににも、敵を探知できる結界を展開済みだ。各地点にも結界を展開し、探知能力を現場責任者に譲渡すれば、警戒としては万全になるだろう。
敵の行動を探知できる「結界」、悪意ある敵の侵入を防ぐ「バリア」……この二つの能力を駆使するのが、聖女の主な役割と言えよう……。同じ聖女という役職に就いている以上、ただの平民であるミシディアに、アンネとリーアが負けることなどあるはずがない。
むしろ、ミシディア以上の能力を発揮してくれることだろう、ふははははははっ! バロウィンだかなんだか知らないが……侵入出来るものならば、侵入してみるがいい!
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【ミシディア視点】
「おお、傷が完治しました……ありがとうございます!」
「いえいえ、どういたしまして。元気になって良かったです」
「これで、たったの1000ルピーだなんて……! なんだか悪いですわ……」
最近はお客さんの質も幅広くなっている気がする。噂が広まっているのか、一般人の人々も来ているし。冒険者ギルドに一般人がたくさん来るケースはあんまりないだろうから、めずらしい光景でしょうね。
お客さんの入りは上々だし、商売としては非常に上手く行ってると思うんだけど、気になることが一つだけある。それは「レッドブラック」の二人から、護衛としてしばらく行動を共にさせてほしい、と言われたこと。
私は一瞬、戸惑ってしまった……狙われてるのって、オボンヌ宮殿内の国王陛下じゃないの? それから、念の為に、私自身にもバリア展開をしておくように言われている……。
裏組織「バロウィン」の狙いは国王陛下だけではないかもしれない。そのことをレッドブラックの二人は懸念しているようだった。
「ミシディア、本日の仕事は終わりかしら?」
「はい、ライズさん。終了しました」
「なら、宿まで一緒に行きましょう」
「はい」
ライズさんとカインさんに守られるのは安心するけれど……それとは別に、自分が狙われているかもしれないという事実に不安感を消すことは出来ないでいた……。
「グレス王子殿下」
「なんだ?」
私が私室でコーヒーブレイクを楽しんでいた時、執事の一人が私に声を掛けて来た。
「はい、アルガス第二王子様が面会を希望されていらっしゃいますが……如何いたしましょうか?」
アルガスか……父上の側室の息子。私とは腹違いの兄弟ということになる。アルガスが次期国王の最有力と唱える者達も居るらしく、忌々しい存在ではあるが……。仕方がない、会わないわけにもいかないからな。
「まあいい、通せ」
「畏まりました」
執事はそう言って、私の部屋の扉を開けた。中に入って来たのは当然、アルガス本人だが……なにやら、様子がおかしいな。
「兄上! 話は聞いているだろうかっ!?」
血相を変えて入って来るアルガス。一体、なんだというのだ?
「どうしたんだ、一体? 王族たる者、常に冷静沈着でなくてはならんぞ」
「も、申し訳ない……!」
まったくこの慌てぶりでは、国王という大役などとてもこなせるとは思えないがな。
「実は、バロウィンが動き出したという情報が入っている!」
「バロウィンだと……?」
プラティーン王国最大勢力の裏組織……それが動き出した、ということは……。
「狙いは父上、か?」
「その可能性が高いと思われるが、父上はフェイクの可能性もある。とにかく、オボンヌ宮殿周辺を初めとして、各地の警備を厳重にしなければ……!」
確かにそうだな。敵の狙いが必ずしも父上だけとは限らん。私やアルガスの可能性もあれば、他の貴族達が標的になるかもしれん。貴族街を含め、各要所の警戒レベルを最大にしておくか。
「各地点への伝達は早急に手配しておこう」
「た、助かる。しかし……」
「どうした?」
「本当に良かったのか、兄上? 彼女を……ミシディアを解雇してしまって……」
アルガスは弱々しくそう言った。この弟は確か、ミシディアのことを好いていなかったか? ミシディアが在籍していた1年近くの間、率先して同行していたように思えるしな。
「アンネ公爵令嬢とリーア伯爵令嬢という、強力な聖女が居ることは伝えているだろう? 何も問題はない」
「それならいいのだが……」
それでも、アルガスの表情は曇ったままだった。既にオボンヌ宮殿全体と貴族街周辺ににも、敵を探知できる結界を展開済みだ。各地点にも結界を展開し、探知能力を現場責任者に譲渡すれば、警戒としては万全になるだろう。
敵の行動を探知できる「結界」、悪意ある敵の侵入を防ぐ「バリア」……この二つの能力を駆使するのが、聖女の主な役割と言えよう……。同じ聖女という役職に就いている以上、ただの平民であるミシディアに、アンネとリーアが負けることなどあるはずがない。
むしろ、ミシディア以上の能力を発揮してくれることだろう、ふははははははっ! バロウィンだかなんだか知らないが……侵入出来るものならば、侵入してみるがいい!
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【ミシディア視点】
「おお、傷が完治しました……ありがとうございます!」
「いえいえ、どういたしまして。元気になって良かったです」
「これで、たったの1000ルピーだなんて……! なんだか悪いですわ……」
最近はお客さんの質も幅広くなっている気がする。噂が広まっているのか、一般人の人々も来ているし。冒険者ギルドに一般人がたくさん来るケースはあんまりないだろうから、めずらしい光景でしょうね。
お客さんの入りは上々だし、商売としては非常に上手く行ってると思うんだけど、気になることが一つだけある。それは「レッドブラック」の二人から、護衛としてしばらく行動を共にさせてほしい、と言われたこと。
私は一瞬、戸惑ってしまった……狙われてるのって、オボンヌ宮殿内の国王陛下じゃないの? それから、念の為に、私自身にもバリア展開をしておくように言われている……。
裏組織「バロウィン」の狙いは国王陛下だけではないかもしれない。そのことをレッドブラックの二人は懸念しているようだった。
「ミシディア、本日の仕事は終わりかしら?」
「はい、ライズさん。終了しました」
「なら、宿まで一緒に行きましょう」
「はい」
ライズさんとカインさんに守られるのは安心するけれど……それとは別に、自分が狙われているかもしれないという事実に不安感を消すことは出来ないでいた……。
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