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13話 ダブルパンチ

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 私達3人は遊戯施設を後にし、貴族街の端へと移動した。なるべく人気のない場所に。遊戯施設であれ以上話していると目立ってしまうし、流石にクローヴィスが可哀想だと思えたから。


 ただし、人気のないところに移動してからは、容赦なく攻撃を開始した。


「アルカと婚約してるくせに、なぜ私の交友関係に手を出してくるの? 明らかにおかしいでしょ? アルカに悪いとか、そういう感情はあなたにはないのかしら?」

「そ、それはもちろんあるさ……! でも、アルカよりも前に君とは婚約していたのだから……」

「アルカより前に婚約していたから、何なの?」

「レレイには、ずっと僕のことを引きづっていて欲しいな……と思ってしまって……」


 私はクローヴィスの言葉に失笑してしまった。私は彼の中で、ずっと都合の良い女だったのだから。一般人であれば、この手のタイプの人間が多そうだけれど、まさか貴族の立場でこんな男が居るとは思わなかったわ。貴族は無駄にプライドが高いから、弱音を見せたくない人間が多いはずなんだけれど。

 ここまでハッキリと言えるなんて……我が幼馴染ながら、最低な人間のようね。


「いい加減にしてよね……!」

「いい加減にしてもらいましょうか、クローヴィス殿」

「えっ……?」


 私と同時に怒りの言葉を発する人物が居た。ラインハルト様だ。彼からは、今までの穏やかな表情が完全に消えていた。


「本当に情けない……伯爵令息とは思えない振る舞いの数々。幼馴染であり婚約者でもあった人物を、まるで道具か何かのように思っている言動。そして、自分は成長する気はないが相手には必要以上に求めてしまう性格……どれをとっても最低の部類です。その全てを兼ね備えている人間は、なかなか居ないと言えるでしょう」

「ラインハルト様……? ぼ、僕はただ……! レレイに戻って来てほしくて……!」

「彼女はあなたとやり直す気など、微塵もないように感じますが?」

「そ、そんな……!? 僕がこんなに頼んでいるのに……! レレイ!」


 クローヴィスは目に涙を浮かべて私を見ている。しかし、そんな懇願をされても私が言えることは1つしかない。私は首を左右に振りながら答えた。


「無理に決まっているでしょう、クローヴィス? お願いだから分かって……今のあなたがするべきことは、成長でしょう? アルカを大切にしてあげて……お願いだから。私のことをまだ愛しているというなら、それだけは守って欲しいわ」

「レレイ……」


 クローヴィスは完全に自分を否定されたショックからか、その場に崩れ落ちてしまった。私とラインハルト様のダブルパンチ……その威力は非常に高く、彼は完全にノックダウンしたようだ。
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