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5話 ヴェイン・ハーバスト公爵 その2
しおりを挟む「うふふ、ヴェイン様は馬術が得意なのですか?」
「おやおや、これは意外でしたでしょうか?」
「いえ……私も馬は好きですので……非常に分かります」
「ははは、それは嬉しいことですね」
「うふふ」
私は姉さまによって、ヴェイン様と二人きりにされたけれど、意外と楽しく話すことが出来ていた。ヴェイン様は馬術が趣味+得意ということらしい。私も同じ趣味を持っているので、それだけで共通点が出来た感じだ。
「グラスが空いておりますね。入れて差し上げます」
「あ、そ、そんな……すみません……」
「いえいえ……このくらいのことは、男側の嗜みとご理解ください」
私のグラスが空っぽになったタイミングで、無理のない範囲でヴェイン様は飲み物を入れてくださる。入れる時でも、私が拒絶していないかをちゃんと見ているところが凄い。紳士であれば当然なのだろうか……? ここまで気を遣ってくれるお方に会ったのは、初めてかもしれない。
「リリナ嬢はこういう気遣いは苦手ですか?」
「い、いえ……そんなことありません」
「正直に言っていただきたいのですが……私の階級などは一切、気にしないでいただきたい」
ヴェイン様はいつの間にか、私のことを「リリナ嬢」と呼んでいた。とても自然な切り替えだ。これも彼なりの作戦なのだろうか……? マズイ、私はこの方を好きになってしまうかもしれない。
「いえ、本音を申し上げても苦手ではございません。むしろ、嬉しい限りでございますわ」
「左様でございますか、ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいですよ」
「いえいえ……」
ヴェイン様と話すのは普通に楽しい。趣味が馬術以外にも読書など、色々あるのだけれど、ほとんどの趣味が私と共通するものだった。ここまで近しい趣味の持ち主に出会えるというのは、運命的なものを感じるけれど……。
もしかするとマリナ姉さまが裏で動いていたのだろうか? それともお母様が……? いえ、両方ともの可能性が考えられた。いえ、疑うのは良くないわよね。私にとってはとても嬉しいことなのだし。
私はその後もヴェイン様との会話を楽しむことにした。
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