どうやら異世界転生しても最強魔法剣士になってしまった模様

あっきー

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第2章

幕間.種明かし

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リカルドとバリーは驚愕に震える。


騎士であるはずのバリーに至っては、その顔は最早血の気が引き真っ青だ。


リカルドも異様な目の前の光景に額から汗を滲ませる。


(……上位魔人の負の魔力がこれ程とは……肌を刺す様な異様な魔圧、吐き気を覚える程の禍々しさ……上位ランカーの冒険者達は、この様な存在を相手に戦っているのか……)


彼も騎士として鍛え、ある程度の難事に騎士団として赴き戦った事はある。


だが上位魔人と対峙した事はない。


ましてや更に上位互換となる最上位魔人が、目の前に2人も現れるという異常事態。


己がどれ程ぬるま湯に浸かっていたのかをまざまざと思い知らされ、リカルドは自己嫌悪に陥りそうになり悔しげに俯く。


と、その時。


『顔を上げよ。そして、しっかり見届けるのだ』


リカルドの頭に誰かが語りかけてくる。


バッと弾かれたように俯かせていた顔を上げると、何やら目の前の光景が違う事に気付く。


そこは先程までいた場所とは違う、キサギの背後の白竜ジェノヴァの玉座の側だった。


リカルドの隣には何故かジェノヴァ。


(な、何だ?!)


突然の事にリカルドは呆然とし、同様にバリーも青ざめた顔のままキョロキョロと辺りを見回している。


『案ずるな。我が其方らをこちらへと移動させた』


またもリカルドの頭に誰かが語りかけてくる。


その声に聞き覚えのある2人が、ゆっくりとリカルドの隣に立つジェノヴァへと向く。


『念話で語りかけておる。魔人共には気付かれん』


(姿が見えない筈では?!)


『ザガンの攻撃を受けた後、キサギに後ろに下げられる際に念話で言われた。其方達の姿を我にだけ見えるように許可した故、其方達と共に在れ、とな。どうやら其方達には特別な結界が施されているようだ。不測の事態に備え、その結界内に居れと言われた』


(……あぁ……カミカクシとか言っていた。認識阻害と幻術と結界を重ね掛けした魔法らしい)


『さすが、完璧だな。ならば安心だ。ゆるりと奴らが始末される瞬間を見ようではないか』


(?!……“ここ“で?!)


『……其方の言う“ここ“とは、今居るこの場所という意味だけではないのであろう?』


ジェノヴァが冷めた視線をリカルドへと向ける。


(?!)


『エルバン平原であろう?……そちらに行くわけがなかろうが。ここには既に完璧な結界に加え、防音魔法も幻術魔法までも張り巡らされて居る。移動する必要など皆無だ』


(馬鹿な……)


『陰でコソコソと暗躍する貴様らの愚行に、彼女が危機感を持つのは当然であろう。全ては己の撒いた種。恨むなら己を恨め』


(何故それを?!)


『彼女から齎された情報で全て知っておる。因みにとうに全てバレておるぞ。どうせ彼女達の情報を得る為に、あちらに人を潜ませておるのであろう?……全くコソコソと小賢しい真似をする愚かな者達だな、其方らは』


(バレて……いた……?)


驚愕に震えるリカルドが掠れたような声を洩らす。


『王太子か宰相共の悪知恵が働くであろうと、彼女がそう言っておったわ。貴様らに情報を握られれば、間違いなく旅団は国に消耗品の様に扱われるのは目に見えている。全く……怖い者知らずも大概にしておけよ。彼女は其方らにどうこう出来る存在ではない。ゆめゆめ忘れるな』


冷たく突き放すようにジェノヴァはそう言い放つと、視線をまたキサギの方へと戻した。


リカルドが息も絶え絶えに、ワナワナと体を小刻みに震わせる。


マティアスの執務室で言われたキサギの言葉を、リカルドが脳内で反芻する。


『ただ我々の情報が欲しいが為に、身分のしっかりした大の大人が隠れてコソコソと……そんな小賢しい事をする人間の、どの口が絶対だの信用だのとほざくのか。王侯貴族のそういうところ、本当に反吐が出る』


何度も何度も脳内でリフレインされる彼女の辟易した声に、リカルドは悔しげに顔を俯かせた。


(……先程話していたあの言葉……“四天将“とは?“宵闇の守護闘神“とは何だ?“現人神“とは何なのだ?)


リカルドは先程ジェノヴァとキサギのやり取りの中で浮かんだ疑問を、まるでヤケクソのように掠れた声のまま矢継ぎ早に問う。


『クククッ。本当に人間とは未知に貪欲……彼女の言う通りだな。愚かな種族だ』


(教えてくれ)


『聞いたら何でも答えて貰えると思っておるのか?……愚かな。どれ程ぬくゆくとした環境で育った事やら……少しは己の頭を使い、調べようという気概はないものなのか?そもそも何故、我が其方に教えてやらねばならぬ?』


(……調べてわかる事なのか?)


『ククク、絶対に無理だと断言出来るな。あぁ……間違えてくれるなよ、人間の王子。我は人間という下等種族は好かん。この国も、我が番がたまたま人間という種族で生まれただけ故、守護していただけにすぎん。我が愛する人間は、我が番であるシエラのみ。それ以外はどうでも良い』


(……ハッキリ言ってくれるではないか)


『其方らの種族の愚かな行いを長年見て来ておるのだ。我からすれば、何故其方らが好かれる事が前提なのかが不思議でならぬ。キサギとて同様だろうよ……だが……彼女はそれでも尚、人間を捨てきれぬ……弱きを救う“現人神“の性故に』


ジェノヴァは悲哀の満ちた視線をキサギへと向ける。


彼はキサギに対する情報を理解している為、性という名の使命に囚われ、真の自由などない彼女を哀れに思わずには居られなかった。


(……性……?)


『ククク……今頃エルバン平原では、其方らの子飼いが今か今かと待ち構えておるのであろうな。あぁ……残念だ。出し抜かれた者共の苦悶に歪む顔が見れぬのは……』


(話を逸らしやがって……はぁ……戻った後が恐ろしいよ)


『見たままを報告する事だな。まぁ、どこまで話せるか……肝心要な部分は全て話せぬがな。あぁ、それとこれも伝えておいてくれと言われたのだった』


(?)


『其方らに掛けられた魔法は制約魔法ではない。これから起こる事象で彼女や仲間らに関する事は、自国に足を踏み入れた途端に、全て記憶が消されるそうだ』


(な、何だと?!)


ジェノヴァから齎された情報に驚愕の声をあげる。


それでは報告が出来ないではないか、とリカルドは焦る気持ちを抑える事など出来はしない。


バリーに至っては記憶消去の魔法と聞いて、廃人になったりしないか、人体に何か影響があるのではないかと震えるばかりだ。


『あぁ、案ずるな。人体に影響などない。彼女の持つ力は絶大だ。討伐された事実のみは報告出来る故、その程度瑣末な事だ。ただ、どの様に戦い、どの様な魔法が使われ、どの様に討伐されたか詳細を忘れるだけだ』


(それでは……何の為に俺達がここに居る……)


飄々と答えるジェノヴァに、掠れた悲鳴のような声でリカルドが体をワナワナと震わせる。


『全ては茶番の為。其方は王太子に近い者。それが見届け人となる事で、ある程度のパフォーマンスになる。それに……』


(……それに?)


『脅しにもなるではないか』


(?!)


穏やかではない言葉に、リカルドとバリーは息を呑む。


『彼女は全て知っておる。王太子を始めとした国の上層部が、彼女を掌で転がし、あわよくば上手く使いたいのだろうと。他国の為政者達も似たような事をしているからな。勿論、冒険者として国からクエストが出れば彼女とてある程度は目を瞑るだろうよ。だが今回は、あまり舐めた真似をしてくれるな、という脅しも含まれておる』


(俺という“王族“に発言権があるからか。他の者が今回の立ち会い人となり報告の際に詳細の記憶が無いと言えば、何か裏があるのかと怪しまれ信用が薄くなる。だが俺ならば記憶が無くても信用される。それに付随して、王族など簡単に人質に取れるし、処分するのも簡単だと打撃を食らわせられる)


『分かっておるではないか。お前達が懐に入れようと暗躍する存在は、お前達の手に余る存在。早々に諦めたほうが良いぞ。彼女の好きにさせてやる事が1番効率が良いと、さっさと気付く事だな……あぁ、私との会話は記憶からは抹消されん。王太子にしっかり伝えておけ』


(……何と……)


思わず片手で額を覆い、リカルドが重い溜息を吐きながら項垂れる。


『あぁ、それから。お節介ながら、其方独身であろう?余計な継承争いを避ける為であろうが、気をつけたほうが良いぞ?恐らく宰相辺りが彼女を確実に懐に入れようと、水面下で其方との縁組などを画策しておるだろうよ。彼女をたかが少女と侮り、其方が彼女を上手く抑えられれば万々歳とでも考えておるのであろう。全く、己の力量を知らぬ脳みそが空っぽの王侯貴族は、どこまでも愚かで浅はかとしか言えんな。其方は所詮“利“の為の駒、だな』


リカルドは大きく息を呑み込み、バリーは驚きではくはくと口を動かし声も出せない。


冒険者に政治的接触を図ろうなど、狂気の沙汰。


最悪、地図上から国が消え去るかもしれない愚行だ。


(平和呆けした狸どもが!)


ギリリとリカルドが呆れと苛立ちの感情がごちゃ混ぜのままに、奥歯を噛み鳴らす。


権謀術数渦巻く王侯貴族社会の愚行をキサギからも釘を刺されたばかりだと言うのに、とリカルドが額を覆ったままに首を横に振る。


だが、それよりも……とリカルドは思わず体を震わせた。


(それが表沙汰になった時の神楽旅団の者達の怒りのほうが、俺は恐ろしいよ……)


『ククク……違いない。我は一切預かり知らぬ事とはいえ、ご愁傷様な事だ。まぁせいぜい表沙汰になる前になんとかする事だな』


力なく肩を下げるリカルドに、ジェノヴァは憐れみの視線を向けながら小さく喉を鳴らした。




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