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第1章:NAMELESS編-新宿戦-前編
[第34話:LYCORIS]
しおりを挟む_5年前、そこは"第1次NAMELESS大戦"真っ只中の戦場。
新宿靖国通り…。
(…やべぇな…このままじゃ持たねぇ…。)
緋我 昇は大きく深呼吸しながら、そう考えていた。
頭部の流血を腕で拭うと、直様敵の姿を目で追った。
緋我の目の前には、数20体と言ったところか。
"NAMELESS"の大群が、一斉に緋我に視線を送っている。
その様子に、彼は覚悟を決めたのか
左耳に付けた通信機のボタンを押した。
「…影虎…拳護…後は…頼むっ!!」
緋我は一言だけそう言って通信を切った。
「…させるかよ…。」
「…昇…俺たちは…お前の横から…離れることは…決してないっ!!」
緋我の両隣に現れたのは、傷だらけの迅雷寺 影虎と益富 拳護であった。
たった今、通信で後を託したはずの2人が横に立っている。そのことに緋我は只々驚いていた。
「…お前ら…。」
両脇に構える仲間の姿を見て、緋我は少し安心した表情を見せた。
『…池袋…第4の菊野隊長が…NAMELESSに…。』
『…お台場…巨大NAMELESSに…由梨隊長と…志村隊員が…。
蒼松隊員も…負傷…。』
『……渋谷…茨木隊長が…重傷…。
…玉屋隊員も…負傷…。』
緋我達の通信機には、次々に仲間の戦況が報告されるが…
その殆どは非常に残念な結果ばかり…。
「…影虎…拳護…やるぞ。」
緋我は、同じ通信を聞いていた2人の仲間にそう言った。
その言葉には、もっと多くの吐き出したい感情と彼らの闘志が宿っていた。
後に、"第1次NAMELESS大戦"と呼ばれるこの戦い。
時は平成も終わりを告げる頃。
時代の急速な変化に、環境が追いつけなくなった日本の自然環境が徐々に暴走を始めていた。
その暴走の一環として、その新たな生命体を誕生させてしまった…。
その名も"NAMELESS"。
"NAMELESS"は、"負の自然エネルギー"を源に、ただひたすらに地球侵略の為なのか
人類に対して攻撃を仕掛けてくる。
"NAMELESS"の侵攻を阻止する為、対する"正の自然エネルギー"を扱う"箱装"が開発された。
そして、"箱装"を用いて"NAMELESS"と戦う非公認組織"BOX・FORCE"が設立された。
"BOX・FORCE"の戦闘隊員に選ばれた面々は、武闘術に長けた者、剣術の師範、環境の研究者、軍事経験者など様々。
そんな"BOX・FORCE"の第1部隊"リコリス"に抜擢されたメンバーは、
政府直轄の環境研究組織にて自然エネルギーを中心に研究しているチームのリーダーであった、緋我 昇。25歳。
剣術3大流派の一派"桂流"を受け継ぎ、現代剣士四天王の1人、¥
迅雷寺 影虎。43歳。
かつては関東一の暴走族の総長の名を背負い、今は喫茶店と実家のボクシングジムを営む、益富 拳護。27歳。
戦闘経験、環境知識共に兼ね揃えた第1部隊は、"BOX・FORCE"という特集な部隊組織の中でも、
群を抜いて強くなっていった。
その矢先、いつものように出現したNAMELESS討伐の為出撃した"BOX・FORCE"の目の前に現れたのは…
これまでとは桁違いの数を率いた"NAMELESS"の群れ。
池袋、渋谷、お台場、新宿にそれぞれ大群を率いて出現したことで、戦力を分散されてしまった"BOX・FORCE"は、各部隊が各地へ散ってそれぞれの敵を対処するしかなかった…。
「…第1部隊"リコリス"は…これよりNAMELESS討伐の最終段階に入る…。総員、気を抜くなよっ!!」
緋我の言葉に、迅雷寺と益富は闘志を剥き出しにし、NAMELESSに立ち向かった。
「"桂流、七の舞 粒星獅子"っ!」
「…美しく、炎え裂けっ!"炎舞鳥"っ!!」
「…頼むぜ相棒っ!"氷龍豪雨"っ!!!」
迅雷寺の雷を纏った刀、益富の焔を纏った拳、緋我の氷の弾丸が、NAMELESSに襲いかかった。
NAMELESSの何体かはその攻撃を受けて後退していくが、
それでもまだ半数ほどのNAMELESSは、3人に向かって襲いかかる。
「影虎っ!拳護っ!あれやるぞっ!」
緋我はそう言うと、向かいくる10体ほどのNAMELESSに銃口を向けた。
「…あれだと?あれはまだ未完成だろ…。」
緋我の言葉に、迅雷寺は不安の顔色を見せながらそう言った。
「…今やらなくていつやる…。
俺たちはこの先、いつ死んでもおかしくない。やるぞっ!」
緋我がそう言うと、益富は再び拳に焔を纏って言った。
「…昇ちゃんがそう言うなら、やるしかなくない?影。
それに、もうこれしか俺達には希望はなさそうだよ。」
緋我と益富の闘志をむき出しにして"箱装"を構える姿に、
迅雷寺は呆れつつも納得した表情に変わった。
「…やるからには、フルパワーだ。」
迅雷寺はそう言うと、刀に雷を走らせ構えに入った。
"雷虎徹"は黄金に光り輝きながら、電撃を放ち続けている。
緋我、迅雷寺、益富の3人は、横一列に並び
NAMELESSに対して真正面に向かい立った。
「…"LYCORIS・Rancher"ぁぁぁぁっ!!!!!」
3人が一斉にそう叫んだ。
益富の拳"炎鳥皇"から、巨大な炎の球が放たれ
その周囲を、緋我の"青龍銃"の氷弾が無数に囲う。
その弾丸を、雷を纏った"雷虎徹"で弾き放つと、炎、氷、雷が入り乱れた大きな弾丸が
NAMELESSを襲った。
大きな爆音が鳴り響き、爆煙が辺り一面を覆い尽くす。
「…やったか…?」
そう言う迅雷寺の視線の先で、爆煙が晴れた。
3人は、己の目を疑った。
数十体いたNAMELESSの殆どは消滅していたが、
一体だけ、全くの無傷で残っているNAMELESSがいたのだ。
そのNAMELESSは、大群でいた時とは違い
左腕にキャノン砲、右腕にガトリングガンを装備していた。
これまでのNAMELESSとはその姿かたちは全く異なっていた。
「…なんだよ…あれ…。」
迅雷寺の目は、目の前の現実を受け入れられないのか、
閉じる事なく大きく開いていた。
呆然とNAMELESSを見るしかない3人。
次の瞬間、そのNAMELESSの右腕が3人に向けられた。
「…まずいっ!来るぞっ!」
緋我はそう叫んだ。
NAMELESSは、右腕のガトリングガンの弾丸を3人目掛けて無数に放った。
3人は避けるのに必死であったが、ふと周りを見渡すと、
新宿の街は弾痕によって崩壊していた…。
幸いにも、近隣に一般人はいなかった。この非常事態に都心部の人々は一斉に避難していたのだ。
「…やろぉ…。」
その景色を、唇を噛み締めながら益富は見ていた。
一般人の犠牲がないとはいえ、平和な町並みが一瞬にして壊されている現実に、
悔しさを滲ませていた。
「…怯むなっ!奴を止めるぞっ!」
緋我は、呆気に取られる迅雷寺と益富を鼓舞するように叫んだ。
その叫び声に2人は気を取り戻した。
そして、緋我は"青龍銃"から氷弾をNAMELESSに放った。
NAMELESSは緋我の弾丸を避けながら、その照準を緋我に集中させていた。
「…チャンスっ!」
迅雷寺はそう呟くと、"雷虎徹"を構えて攻撃態勢に入った。
「…影…?」
その姿を横目で捉えた益富は、迅雷寺とNAMELESSの姿を目で追った。
そして、説明のできない嫌な感覚が益富を襲った。
「…"桂流…終の舞"…」
迅雷寺は、NAMELESSの目の前に飛び立った。
「…"雷王"っっっ!!!!」
バリバリバリッ!!!!
と、地響きのする激しい音と共に"雷虎徹"に雷が落ちた。
「…影虎っ…!!!」
緋我は、自分とNAMELESSの間に入った迅雷寺の姿を捉えてそう叫んだ。
迅雷寺は、大きく上に刀を振り上げると
NAMELESSに狙いを定めた。
するとNAMELESSは、そっと左腕を迅雷寺に向ける…。
「…まさかっ!!!!」
NAMELESSの左腕からは、砲弾が放たれた…。
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